クライマックスシリーズ」 西武―ソフトバンク第5戦  試合終了後に西武・辻監督(右)と握手を交わしたソフトバンク・工藤監督=メットライフドーム(写真:共同通信社)

皆さんこんにちは、プロ野球解説者の礒部公一です。

プロ野球もクライマックスシリーズが終了し、セ・リーグは広島カープ、パ・リーグはソフトバンクがそれぞれ勝ち上がり、日本シリーズへの出場権を獲得しました。

広島カープはシーズンでも独走でリーグ優勝を果たし順当に勝ち上がりましたが、西武ライオンズはクライマックスシリーズ・ファイナルステージでソフトバンクに破れ、リーグ優勝は果たしたものの非常に残念な結果になってしまいました。


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今のプロ野球界は、シーズンを3位までに通過すれば日本シリーズ出場を賭けたクライマックスシリーズを戦うことができ、今回もパ・リーグのように2位通過したソフトバンクが勝ち上がる下克上も起こりうることです。

プロ野球人気の向上や観客動員の増加、それに消化試合の減少を狙った方法として、このクライマックスシリーズがあるわけです。

世間一般でよく「せっかくリーグ優勝を果たしたのに、日本シリーズに出られないからかわいそう」などの声も聞かれますが、プレーしている選手や球団は決められたルールで戦っているので、もちろん最後まで戦いたい気持ちはあるものの、そこは案外に割り切り、目の前の勝負だけを見据えてやっているものです。

このシステムについては球界内でも賛否両論あります。私としては日本野球機構(NPB)で決められたから仕方がない、という以上に、注目度の高い試合が10月以降も続くので、プロ野球をより長くお客様に楽しんでいただけるという意味でも、良いことだと思っています。

そのクライマックスシリーズを振り返ってみましょう。

カギを握るのは投手力の重要さ

まずはセ・リーグから。

ファーストステージで2位ヤクルトスワローズと3位巨人が戦い、巨人が2連勝で勝ち上がりました。

こういった短期決戦において、改めて勝負のカギを握ると感じたのは“投手力の重要さ”です。

ヤクルトは自慢の打線が2試合で1得点と機能せず敗退してしまいましたが、その理由として巨人の投手陣が一枚上手だった、ということが大きく作用したように見受けられました。

初戦は巨人先発の今村投手が5回途中まで1失点と試合を作り、以降はリリーフ陣で無失点とヤクルト打線を抑え込み、逃げ切り勝ち。

2戦目は巨人・菅野投手がクライマックスシリーズでは初となるノーヒットノーランを達成し快勝。

2試合とも、山田選手、バレンティン選手、雄平選手らヤクルトの中軸に仕事をさせず、巨人がファイナルステージへ進出を果たしました。

先に4勝したチームが勝ち上れるファイナルステージでは広島カープと巨人の対戦になりましたが、広島カープが3連勝(広島には1勝のアドバンテージあり)と、リーグ戦同様の圧倒的な勝ち方で日本シリーズ出場を決めました。

ファーストステージを勝ち上がり、勢いのある巨人が善戦してくれると少し予想していたのですが、ファーストステージから一転、頑張った投手陣が初戦に広島・丸選手、鈴木選手にホームランを浴びるなど、6失点と試合を作れず、打線も広島・大瀬良投手に押さえ込まれ完敗し、結果的には巨人の3連敗となりました。

広島カープは、ファイナルステージまでに少し試合日程が空き、試合勘が鈍るかと思いましたが、さすがに去年、DeNAに負けた悔しさがあったのでしょう。

しっかりと調整をし、リーグ戦同様の戦いができたように思います。本当にカープの強さはテッパンでした。

ソフトバンク打線の粘りと投手の安定感

パ・リーグです。

ファーストステージは2位ソフトバンクと3位日本ハムの戦いになりましたが、結果的にはソフトバンクが2勝1敗でファイナルステージに進出。その中で感じたのは、ソフトバンクの打線の粘りと、投手陣の安定感でした。

初戦から初回に日本ハムに先制される嫌な展開でしたが、その裏すぐに打線がつながり柳田選手のタイムリーや、デスパイネ選手のホームランで一挙5点を奪う逆転勝ちで、その後の試合の流れをつかみましたね。

ファイナルステージは開幕から首位を一度も譲らず優勝した西武ライオンズとソフトバンクホークスの戦いになりました。

初戦に菊池投手がここ数年苦手にしてきたソフトバンク打線をしっかり抑え、打線もシーズン同様に爆発すれば西武ライオンズが勝ち抜けると期待をしていました。

しかし、ファーストステージを勝ち上がり、勢いのあるソフトバンク打線が16安打10得点と、西武のお株を奪うような猛攻で初戦を獲り、流れをつかみます。

西武も2戦目に自慢の打線が爆発し、一矢は報いましたが、3戦目以降は3連敗を喫し、リーグ戦では独走優勝したチームが日本シリーズに出られないという、残念な結果になってしまいました。

日本シリーズ出場を決めたソフトバンクは、クライマックスシリーズを毎年戦っているような常連チーム。今回は打線が活発で打ち勝った試合が多いように思われますが、投手陣を含めた“チーム力”が非常に充実しており、実力も経験も持ち合わせた選手の集まりで、試合巧者であるということは言うまでもなく、常勝軍団と言うにふさわしいチームだと実感します。つまり、勝ち方を知っていた、というべきでしょうか。

クライマックスシリーズが終了し、日本シリーズが今月27日から行われますが、短期決戦では何が起こるかわかりません。

試合の流れをつかむうえで、やはり重要なのは“どれだけ失点をしないか”、“どれだけミスを抑えることができるか”、という投手力と守備力がやはり大事になってくると思います。

“打線は水もの”とよく言われますが、打てなくても0点に抑えれば、負けることはありませんから。

日本シリーズで戦う広島カープもソフトバンクも、先述の通り本当に強いチーム。どちらが日本一になるか、興味深くみていきたいと思います。

最下位のイーグルスは来季どう再起するのか

さて、私の古巣・楽天について。シーズンが終わり、地元仙台で秋季練習がスタートしています。

平石新監督のもとスタッフも大幅に変わり、来季に向けての準備が始まっていますが、今年の悔しさを忘れてはいけないと思います。

今年、最下位という事実をしっかり受け入れ、どこを修正すれば来季Aクラス入り、さらにその上の優勝に近づけるかしっかりと検証して、課題をひとつひとつクリアしていかなければなりません。

来年の開幕までにやり残したことがないくらい徹底的に身体を追い込む“練習”(アナログに思えるかもしれませんが、実はいちばん有効で重要です)と、“頭のトレーニング”(バッテリーでいえば配球など相手の研究、打者は相手投手の研究や試合展開での状況判断力強化)を並行して取り組んでほしいと思います。

若手主体の秋季練習になるとは思いますが、ベテランも含めてチームのレベルアップを図ることです。

来季、“強い楽天”を期待しています!

最後に、恒例となりました私の半生の振り返りを。

前回は「12球団の存続と合併反対を打ち立て、ファンを含めたプロ野球選手会が立ち上がった」というところまででした。

合併問題が表面化してからは、選手会事務局の方や当時プロ野球選手会会長であった古田敦也氏と、今後の方向性について密に連絡を取り合い、良い方法を模索する日々が始まりました。

シーズン中なので毎日試合はあったのですが、頭の中は野球の結果よりもこの問題のほうが、正直、大きな比重を占めていたことは否めません。

近鉄のホームであった大阪ドームでの試合前には、選手全員で合併反対の署名運動を行ったり、休日には選手会でのミーティングや、会社のオーナーなど重役と話し合う労使交渉等に出席しました。これらはプロ野球選手として通常ならしなくてもいいような活動でした。

今考えると当時はそれどころではなかったためか、そう思ってはいませんでしたが非常に多忙だったなと思います。

このように、プロ野球選手会とファンで力を合わせ、当初のわれわれ側の目標通り「合併の1年間の凍結と12球団の存続」を願い、さまざまな行動を起こしましたが、経営者側の回答は「NO」の一点張りのまま変わらず、状況の好転への期待は絶望的に思えました。

近鉄とオリックスの合併問題が表面化していましたが、その影では一部球団オーナーによる1リーグ制(8〜10球団)への流れも進んでいました。

選手・ファンと決定的な亀裂を生んだオーナーの言葉

7月の上旬、当時選手会会長の古田氏がオーナー陣との直接の交渉に臨もうとしましたが、某オーナーが「無礼なことを言うな! たかが選手が!」と発言され、交渉自体を真っ向拒否されてしまいました。

それにしても、こんな恐ろしい場にたった1人、挑もうとしてくださった古田氏と、そして活動を支え続けてくださった選手会事務局の気持ちを思うと、今でも胸が熱くなり、感謝してもしきれない思いでいっぱいになります。

しかしこのオーナー陣からの拒否により、皮肉にも選手会とプロ野球ファンはますます合併問題への反発を強めることになったのも事実です。

これを受けさらに選手会が2リーグ12球団維持と、翌2005年からの新規球団参入を求めて、社会をも巻き込んだ行動をいろいろと起こしました。しかし、事態は変わらず平行線のまま、時間だけが経過していきました。

そしてとうとう9月中旬。選手会として、日本プロ野球史上初の行動を起こすことを決めるのです。

続きはまた、次回にしましょう。