ネパールの首都カトマンズで手のひらに載せられた冬虫夏草(2007年5月29日撮影、資料写真)。(c)AFP=時事/AFPBB News

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【AFP=時事】中国などアジアの伝統医学で万能薬として珍重され、金よりも高い価格で取引されることもある冬虫夏草(オフィオコルディケプス・シネンシス Ophiocordyceps sinensis)の採集が難しくなってきているのは、過剰な採集だけでなく気候変動の影響もあるとする論文が22日、「米科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of Sciences、PNAS)」(電子版)に掲載された。

 ヤシャグンバとも呼ばれる冬虫夏草の効能は科学的に証明されていないものの、人々は勃起不全(ED)やがんに効くと信じて冬虫夏草を煎じて飲んだり、スープや煮物などに加えたりして摂取してきた。アジアでは「ヒマラヤのバイアグラ」とも呼ばれ、中国やネパールでは極めて希少な冬虫夏草の採集をめぐって人々が争い、死者が出ることもある。

 米スタンフォード大学(Stanford University)の研究者らがまとめた論文は、冬虫夏草について「世界で最も貴重な生物学的商品の一つ」であり、数十万人規模の人たちの生計が冬虫夏草の採集に依存していると指摘。この数十年で冬虫夏草の人気が著しく高まったことから価格が高騰し、北京では金の3倍もの値段が付くこともあるという。

 冬虫夏草の減少の要因として多くの人は採集のし過ぎを挙げるが、スタンフォード大のチームは他の要因を探ろうと試みた。チームは冬虫夏草の採集者や取引業者など50人近くから聞き取り調査を行った。また過去に行われたネパール、ブータン、インド、中国での聞き取り調査結果を含む既存の科学文献を調査し、これらの国々の気象パターンや地理的要因、環境条件を分析して冬虫夏草の産地マップを作成した。

 これら4か国の20年分のデータを調べた結果、冬虫夏草の生育地のほぼ全域で生産量の減少が確認できたという。論文は「採集者たちは冬虫夏草の生産量減少の原因は採集のし過ぎによるものだと話しているが、植生や生産モデルから、気候変動の影響もあると考えられる」と結論付けた。

 冬虫夏草は昆虫の幼虫に寄生し、その栄養分を吸収して成長する。標高3500メートル以上の高地で、冬季の気温が氷点下になるが永久凍土ではない場所にしかみられない。

 しかし、1979年から2013年にかけて生育地の広範囲で冬季の気温上昇がみられ、特に上昇幅が3.5〜4.0度にもなったブータンで冬虫夏草の生育に大きな影響が出ており、冬虫夏草の採集で生計をたてている地域では代替収入源を探す必要があると論文は指摘している。
【翻訳編集】AFPBB News