ビジネスホテル選びのこだわりは人それぞれ。しかし価格の安さだけで選ぶと後悔する場合も(写真:ymgerman/iStock)

出張の多いビジネスパーソンの中には、ビジネスホテルの定宿を決めているという人は多いかもしれない。マイルやポイントが貯まる、サービスの質がよくて気に入っている、などいろいろな理由があるだろう。

地雷がいっぱいのビジネスホテル選びの落とし穴

旅行予約サービス「楽天トラベル」が発表した「2018年 人気のビジネスホテルチェーンランキング」によると、

1位 ベッセルホテル
2位 リッチモンドホテル
3位 ドーミーイン
4位 ダイワロイネットホテル
5位 ビスタホテルグループ

だったそうだ(ビジネスチェーンホテルを対象にクチコミの総合評価の平均点数が高い順にランキングした結果)。楽天トラベルが予約代行しているホテルに限られるという条件付きだが、筆者も上位3チェーンはたびたびお世話になっている。


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しかし、繁忙期や急な出張では、空室があるホテルの中から選ばざるをえないことも多い。1番のポイントになるのは、宿泊料金ではないだろうか。

独立系ホテルのポイントカード運営会社Aカードホテルシステムが調査した『出張ビジネスマンのホテル利用実態』によれば、1泊当たり宿泊料の平均は6900円程度という。インバウンド特需で高騰の時代もあったが、2014年からの宿泊料金の数字を見ると、だいたい7000円前後というところに落ち着いているようだ。

なお、ホテルの予約手段は、楽天トラベルやじゃらんなどの一般予約サイトから行っている率が最も高い。宿泊エリアを絞り込んだうえで、検索結果の中から予算に見合った宿を探すというおなじみの手順だ。しかし、ここですぐに予約を、と決めるのはまだ早いかしれない。

今どきのビジネスホテルチェーンは、公式サイトからの予約が一番安い「べストレート(最安値)」ですよとうたっているからだ(同一ホテル、同一日、同タイプの部屋など条件が同じ場合)。

主なところでは、アパ(APA)ホテル、コンフォートホテル、スーパーホテル、東横イン、先出のベッセルホテルなどは「他の予約サイトのほうに安い料金があった場合は、ご予約後24時間以内に当該ホテルに直接ご連絡ください。内容確認のうえ、その料金を提供させていただきます」と、家電量販店並みの宣言をしている。

ただし、会員登録が条件だ。会員となり、公式サイトから予約すれば10%のポイント還元をうたっているホテルも多い(アパホテル、ドーミーイン、リッチモンドホテルなど)。ポイント還元率だけで単純に比較すれば、じゃらんネットや、Yahoo!トラベル、楽天トラベルなどは1%程度なので、その10倍ということになる。

ホテルのポイントは宿泊料金の値引きやキャッシュバックなどに使えることが多く、ホテル側としてはお客を囲い込めるのがメリットだ。

ベストレートは本当にいちばん安いのか

しかし、このべストレート(最安値)、本当にどこよりもオトクなのだろうか。

実際にはそうとも言い切れない。ネット予約サイト上で早期割引、WEB限定割引、バーゲン価格などのプラン名を見たら、その料金と公式HPの宿泊料金を比較してみよう。前者のほうが安いケースも散見されたからだ(なお、ホテルチェーンの中には、これらの予約サイトの割引は除くと注釈がついている場合もある)。

ただし、公式サイトを見ないと気づかないユニークなオリジナルプランも中にはある。冷えたビールとおつまみ付きプラン、朝食だけでなく夕食付きプランなど、単純な宿泊料だけでなくサービスを抱きあわせたコスパで勝負している。

今CMが大量に流れている、某ホテル料金比較サイトも、これらプランのすべてを反映しているわけではない。手間をかける時間があれば、ぜひネット予約サイト・ホテル公式サイトの両方を比較してほしい。

とはいえ、安さだけで選んで思わぬ失敗をしたこともある。

地方都市だったのだが、手ごろな宿が見つからず、名前を聞いたことがないホテルを予約サイトでとったことがある。しかし、ちょっと気になる記載があった。「チェックインは17時から」というのだ。通常なら14時または15時にはチェックイン可能なのに、ずいぶん遅いなとは思ったが、仕方がない。まあ、チェックイン前でも荷物くらいは預けられるだろうと気軽に考えていたのだが。

いざ当日、ホテルに向かってみると、どんどん怪しげなエリアに向かう。

この時点で嫌な予感がしたのだが、到着したのは雑居ビルに挟まれた小さな入り口。そして、人が2、3人も入ればいっぱいの狭いロビー。どうも、ホテルホテルでも、元は違う業態、はっきりいうと、元ラブホテルだったらしい(実際、部屋に入ると、巨大なダブルベッドが鎮座していた)。

さらに、16時ごろに着いたのだが、フロントには誰もいない、というかカーテンが下りて閉まっている。確かに17時以降とは書いてあったが、普通のホテルを期待して行った筆者はギョッとしてしまった。

他の地方都市でも、繁忙期にビジネスホテルに泊まるつもりで予約して、行ったら元ラブホテルという経験をしたことが何度かある。地元の人ならそのホテルの立地から想像できるのだろうが、出張で来ただけで土地勘のない人間ではそのカンは働きようがない。

チェックイン時間が妙に遅い、23時には正面入り口は施錠しますなど、普通のホテルらしからぬ記述がある場合は、「普段使っているビジネスホテルとは何か違う可能性がある」と注意した方がいいかもしれない。

「ルームサービスのような朝食」というサプライズも

しかし、悪いことばかりとも限らない。さっきのダブルベッドが鎮座していたホテルでは、踏切の側だったにも関わらず、なるほど防音が完璧で快適に眠れた。部屋も広いうえに、バストイレはむろん別々。風呂がジェットバス付きだったこともある。枕元にしか照明のスイッチがないのは閉口したが。


あるホテルで遭遇した、ルームサービス風の朝食。コーヒーは粉でなくドリップパック付きとこだわりも。(写真:筆者提供)

これら業態替えホテルには、他でも遭遇した。びっくり体験も数多い。行ってみたら元ラブホテルだった別のケースでは、朝食付きプランのはずだがレストラン設備はなく、この先どうなるのかと思ったら、パンにオムレツ、コーヒーがルームサービス並みに部屋に運ばれてきたことも。

あるときは車で移動するのでインター近くをと安いホテルを予約したら、なんと周囲が現役のラブホテルだらけで弱り切った。当然、近くにコンビニもなく、そのための宿泊客サービスなのか、無人のフロントにおにぎりやらカップ麺やら菓子パンやらが無造作に置いてあり、「ご自由にどうぞ」と書いてあったことも思い出す。

安ければやはり当たり外れはある。いずにせよ「こんなはずでは」とならないよう、観察力はつけたほうが無難だ。

ちなみに要注意といえば、インバウンド客が押し寄せる大阪では、安さ重視でホテルを選ぶとその集団に巻き込まれることも。うっかりチェックイン時間が重なると、なかなか手続きの番が回ってこないし、エスカレーターもいっぱいで乗れない。わざわざ観光に来ていただいて本当にありがたいのだが……。立地がよくて価格が安いと感じるホテルは、外国人にとっても手ごろなのだと心得よう。

おしゃれすぎるインテリアで室内迷子

限られたスペースに効率よく設備をきっちり納めているビジネスホテルは、狭い住環境が当たり前の日本らしい産物とも言える。設備のレイアウトにもかなり“特徴”が出る。

たとえば、室内に入ってすぐのドア横スペース。ここはクローゼットになっていることが多いのだが、あるホテルでは丸ごと鏡台(ドレッサー)コーナーになっていた。明るい蛍光灯もつくし、コンセントもあってドライヤーも使える。女性客はもちろん、身だしなみに時間をかけたい男性にもうれしい設備かもしれない。

かと思えば、先日宿泊した部屋では、がっかりな体験をした。室内は明るいベージュ系インテリアで統一され、シンプルでスタイリッシュな印象。

ところが、冷蔵庫が見当たらない。普通はデスクの下に配置されているものだが、ただ椅子があるだけ。まさか、「冷蔵庫がないホテル?」と探したところ、なんとドア横のスペースで発見できた。

広くはないビジネスホテルの部屋とはいえ、ベッドに寝そべり、テレビを見ながらビールでも、という際にいちいち冷蔵庫をあけにドア横まで行くとなると、細かいようだが、筆者にはちょっと不便に感じてしまった。

さらに、その冷蔵庫の上に木製の棚があるのだが、湯沸かしポットがぽつんと置かれてあるだけで、コップ類が見当たらない。戻って見てもデスクの上にもない。そんなことがあるだろうかとあれこれ探し、もしやと気づいた。一見、ただの棚板にしか見えない部分に触れてみると、そこが引き出しになっており、中にコーヒーカップやコップ類が隠れていたのだ。表面に取っ手もなく引き出しに見えない造りがおしゃれすぎて、まるで気づかなかった。

それなりに名のあるホテルチェーンで外国人客も泊まっていたのだが、彼らがこの引き出しに気づいてくれたかどうか。「日本のホテルにはグラスもカップも用意がなかった」と、愚痴られないといいのだが。

最近のビジネスホテルはコンセントの数も増え、PC作業やスマホの充電に困らなくなってきたが、やはりまだ設備が古く、足りないところもある。いざという時のために3口タップをかばんに入れておいたほうがいいだろう。

ここまでビジネスホテルの価格や室内について紹介してきたが、最後に「地元の小売店」の活用について触れておきたい。

ドラッグストアや現地スーパーを活用しよう

ホテルのそばにコンビニがあるかどうかを重視する人はいるだろうが、ドラッグストアに行こうと思ったことはあるだろうか。もし近くにあるなら、ぜひそちらものぞいたほうがいい。ペットボトル飲料やカップ麺がコンビニより安く買える場合があるからだ。店によってはビールやつまみも買える。

地図を見て、もしホテルの近くにスーパーがあれば、ぜひそちらへも足を延ばそう。部屋飲みのつまみになる惣菜類が豊富なうえ、現地では当たり前のローカルフードに遭遇できるかもしれない。

筆者は地方に行くとよく現地の小売店をのぞくのだが、高知県でカツオの刺身を買ったり、茨城県では納豆巻を買ってつまみにしたこともある。ご当地の名産品だというだけで、たとえスーパーのお惣菜でもなんだかおいしく感じるものだ。

関西のスーパーに行くとやはり豚より牛肉のコーナーが広いとか、北陸のスーパーの鮮魚コーナーには地元港で揚がった魚が直送で出ていたとか、ささやかな発見もできる。現地の銘菓が安く買える場合もあるので、コスパ重視の人にもおすすめだ。