ロシア式ウィスキングを本気で習う!サウナーが猛特訓した1日

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「サウナの気持ち良さって本当にヤバいよ…」「もっと早く知りたかった…」という会話をあちこちで耳にするようになった今日この頃。「友人に連れられて行ったらハマった」「週3回はサウナに行かないと生きている心地がしない」など、気づけば会う人、会う人が熱に浮かされたようにサウナのことを話している。

な、なんなんだ、この現象は?

気になってしょうがないライブドアニュース編集者。話を聞こうと、サウナ好きが作るメディア「サウナイキタイ」に連絡をとったところ、「サウナが気持ち良いのは僕らにとってはもう当たり前で…それよりロシアのウラジオストクで受けた”ウィスキング”がヤバかったんです(体験記事)。あれを日本の皆さんにも味わってもらいたいんです!」とキラキラした目で熱弁。
 
「そりゃもう気を失いそうなくらい神秘的な体験でした」「サウナ好きなら絶対に受けて後悔はない」「ロシアからウィスキングのプロに来てもらいましょうよ!」とトントン拍子に話は進み、一緒にウィスキングの体験イベントを開催することに。

 
このレポートでは、同じくイベントに協力してくれた、超絶サウナラバーである「Sauna Camp.」の大西洋さんを書き手に、9月末に開催した、おそらく日本初の「ロシア式ウィスキング体験イベント」の様子を全5回でお伝えしています。

イベントレポート最終回は、施設で働く熱波師や、サウナをこよなく愛する人々が、ロシア式ウィスキングの習得に挑戦した様子をお届け。
 
「せっかくアンドレイに来日してもらったのだから、その技術を学んで日本でも広めたい!」
 
そんな思いを胸に、やる気マンマンの参加者の皆さんが集まってくれたものの、実技講習では珍プレーも続出!そちらにも要注目だ!

 
熱血講師アンドレイ、説明用スライドなんと50枚を持参
☆おさらい☆
アンドレイってだあれ?
ロシアのウラジオストクから来日したウィスキングマスター。ウィスキング修行歴5年。「ウラジオストクで活躍するプロのウィスキングマスターは15人くらいかな」。
 
ロシアからやってきたシャイボーイのアンドレイ、心根はアツかった…!

実は我々主催者、やきもきしていたのです。

「ウィスキング技術」を習得するための講座をイベントスケジュールに組み込んだものの、アンドレイ、なかなか資料を送ってこなかったんだよな。

それが来日直前になって送られてきたパワーポイントの分量は、なんと50枚!説明用の文書は、ワード8枚にびっしり。
すごい量だ!一文字も読めないけど!
この資料の多さからも分かります。一見、ヴィヒタでテキトーにたたいているだけにも見えるウィスキング。しかし、実際には長い歴史の中で生まれたたくさんの技術があり、一朝一夕で学べるものではない。全ての動きに意味があると言われる、奥深いサービスなのです。
☆おさらい☆
ウィスキングってなあに?
ウィスキングとは白樺などの枝葉を束ねたもの(ヴィヒタ)で身体を叩いてもらうサービス。血行促進や肌の引き締めなどに効果があるといわれている。
 
「プロのウィスキングマスターになるには、技術はもちろん、バーニャ(ロシア式サウナ)の基礎知識にも精通していなきゃだめなんだ!ヴィヒタの扱いに関する知識も必須だし、自分の手に合ったサイズの束を作れなきゃいけない。その上、種類や特性に応じた使い分けをするんだ。一人前になるには、何年もの修行が必要だよ」とアンドレイ。

な、なんだよ…!うわごとのように「Wi-Fiプリーズ」「スシとメイドカフェに行きたい」を繰り返していたあの男とは別人じゃないか!(※レポート1参照
 
「今回は基礎知識の勉強と、たたき方を何パターンか実際に体験してもらおうと思うよ。本当は何年もかけて覚えることだから、基本的なモノだけね」
 
アンドレイよ、俺たちは甘く見てたぜ…今日は先生と呼ばせてくれ!
 
バーニャの基礎知識を知らなきゃハナシにならない
バーニャの基礎知識を教授するアンドレイ先生。
 
この日の参加者は8人。平日開催にもかかわらず、熱波師、超絶サウナ愛好家など勉強熱心なアツい奴らが集まった…!

「実技に入る前に、まずはバーニャの基礎知識を知ってほしい」とアンドレイ。その内容から特に大事そうだった部分をピックアップしてここに残しておくぞ!
 
アンドレイ先生のバーニャ講座
 
Q. サウナとバーニャ(ロシア式サウナ)ってどう違うの?
 
A. 一番の違いは湿度。サウナが主に「乾式」なのに対し、バーニャは「湿式」。バーニャは湿度が高くサウナよりも発汗が抑えられるので、脱水状態になる心配が少なく、ウィスキングに向いています。身体に深く熱が浸透してより温まると言われています。また、サウナの多くが電気で温めるのに対し、バーニャは基本的に薪で温めます。
 
Q. ウィスキングの効能を教えてください。
 
A. 身体が丈夫になると言われています。葉に含まれる殺菌作用によって、身体から毒素を出す効果が期待できます。また、ヴィヒタの香りによるリラックス効果もポイントです。厳しい冬に身体を芯から温めてくれるウィスキングは、ロシアで大変人気があります。
 
Q. ウィスキングのお作法ってありますか?
 
A. ウィスキングを受ける際は満腹、空腹どちらもおすすめしません。また、アルコール摂取も避けた方が良いでしょう。肌を守ってくれる脂を落としてしまうので、石鹸やシャンプーは事前に使わない方がベタ―。また、ヴィヒタの葉に含まれる薬用成分を落としてしまうので、終わった後も使わない方が良いです。そして、バーニャではあまりおしゃべりしない方が望ましいです。自分のリラックスに集中し、エネルギーを他に使わない方が良いとされています。
 
Q. ウィスキングはどのくらいの時間をかけて行われるの?
 
A. 1回の施術につき大体10分くらい。流れとしては、最初に60〜70℃くらいのバーニャに5分ほど入ります。出たら15分ほど休憩して、温かいハチミツ入りのお茶を飲みます。この準備を終えてからウィスキングを受けます。施術が終了したら水を被ってクールダウンし、再度お茶を飲んで休憩します。これを2〜3回ほど行いますが、後半は時間を短くします。
 
真剣にメモを取る参加者の皆さん。おじさんばかりで少々むさくるしいが、ウィスキングのプロの話を直接聞ける機会とあって、熱心に耳を傾けている。
 
実習では珍プレー続出!?
「実際に人がいないとイメージしにくい」という要望に応え、「サウナイキタイ」のメンバーがお客さん役に。彼もまさかこのあと何時間もこの姿勢のままたたかれ続けるとは思っていなかったはず…。
いよいよ実技講習がスタート。まずはアンドレイが一連の動きを見せていきます。簡単に流れをご紹介していきましょう。
〜ウィスキングの流れ〜
1.ロウリュをしたらヴィヒタを円を描くように振り、上に溜まった熱い蒸気を浴びせる。ヴィヒタの広い面を下にして、クロスさせるように振るのがコツ。

2.始めのうちはヴィヒタに硬さが残っているので、優しくたたいていく。たっぷり蒸気を含むと柔らかくなるので、後半は強めにたたいていく。

3.ヴィヒタを使って、足全体を包む、胸や腰に押し当てる、頭から足先まで優しくなでつけるなど、マッサージを行う。

4.あおむけとうつぶせの両方で行う。
流麗な動きでウィスキングを披露するアンドレイ先生。スムーズ過ぎて簡単そうに見える。参加者はこの後「見るのとやるのは大違い」という事実に直面する。
 
参加者もひとりずつ実践。強さやたたく面や角度をチェックしながら指導するアンドレイ。「往復でたたくときはヴィヒタの表と裏で交互にたたく」なんてさらっと説明するけれど、やってみると非常に難しい。「ヴィヒタを上に掲げてザッと振るのは、熱い蒸気を含ませる意味がある」など、見ているだけでは分からないポイントを説明しながら指導していきます。
 
本筋とはあまり関係ないが、この館内着とヴィヒタの組み合わせは、どう見てもちょっといかがわしい。だんだんおはらいをして悪霊を追い出している人たちに見えてくる。
 
若手では追い出せなかったようなので、村の長老が登場…ではなく、足をヴィヒタでマッサージする練習中。どっちが師範か分からない写真になってしまった。
 
ヴィヒタを振ったときのこの貫禄。見た目は完全にプロです。
 
こちらは芸人であり熱波師でもあるマグ万平さん。「ヴィヒタがうっかりお尻に刺さる」というギャグがアンドレイのツボに入ったらしく。毎回リクエストしていた。我々がアンドレイが爆笑した姿を見たのは、来日期間でこのときのみ。さすが芸人さんと、お尻の持つパワーはすごい…。  
 
いよいよサウナ室で実習!
覚えたてのウィスキングを参加者同士で施術し合う。サウナ室の中での施術は想像以上にハードだ!
サウナ室に入ると、当然ながら熱気が充満している。普段であれば、リラックスしてのんびり過ごすところだが、施術者はその中で動かなければならない。アンドレイが「身体が勝手に動くくらい練習しないとダメ」と言っていた意味が分かる。頭で考えてやっているようでは、身体が先に参ってしまう。
 
「強過ぎる!もっと優しく。赤ちゃんを相手にしていると思ってもいいくらいです」とアドバイスするアンドレイ。ウィスキングマスターは、相手の反応や要望を見抜き、身体がどのくらい温まっているかを常に見極めながら施術するという。奥が深い。
 
水風呂の中でととのいながら、アンドレイに疑問点を聞く参加者の皆さん。やってみて初めて気付くことも多いようでした。
 
ウィスキング講座、どうでしたか?
 
参加者を代表して、先ほども登場したマグ万平さんにウィスキング講座の感想を伺いたいと思います。
 
―おつかれさまです!ウィスキング講座、いかがでしたか?
 
マグ万平「あの…今じゃなきゃダメでしょうか…」
 
―ぜひ感想をお願いします!
 
マグ万平「鬼だ…」
 
マグ万平「いや〜すごかったですね。今、受け手役をやってたんですよ。ウィスキングしてくれてる人、おじさんじゃないですか。なのに、ちょっと好きになりそうでしたもん、おじさんのこと。最高に気持ち良過ぎて、惚れそうになった。ウィスキングってヤバいですね」
 
―施術する側はどうでしたか?
 
マグ万平 「アンドレイ先生には相手を赤ちゃんだと思えって言われたんですが、僕は中条あやみちゃんにウィスキングするイメージでやってみました。優しく、でもしっかり温まるように徐々にハードに。そしたら先生に褒めてもらえましたね。中条あやみちゃん、たぶん好きじゃないですか、コントラスト強めの施術とか」
 
―なるほど、中条あやみさん自身の好みはちょっと分かりかねますが、うまくいって何よりです。万平さんはサウナ施設で熱波師をされていますが、日本のサウナでもウィスキングサービスをできると思いますか?
 
マグ万平「これは技術的にも習得には時間がかかるし、設備的にも日本のサウナで今すぐってのは難しい面もあると思うんですが、ぜひ定着させたいですね。例えば24時間やってる施設で深夜だけの特別サービスとして試すとか、いろいろ方法はあると思います。やってるのを見て興味を持つお客さんも多いと思いますね」
 
―そのためにはまず今日の内容を身体に覚えさせて、実践練習あるのみですね!
 
マグ万平「アンドレイ先生の講義めちゃめちゃ面白かったんで、少しずつ練習して自分のものにしていきたいです!ありがとうございました!」
 
最後は参加者全員で水風呂記念写真!日本でロシア式ウィスキングをプロから学んだのは、もしかしたらこのメンバーが最初かもしれません。「素振りでも練習になるから家で練習しておくように」とアンドレイ先生。参加者の皆さんは、今頃家でヴィヒタを振っているでしょう。おつかれさまでした!
※撮影のため施設から特別に許可を頂き、水着で入浴させていただきました。
 
アンドレイ、3日間本当にありがとう!
イベントが終わってもしばらく日本に滞在。「富士急ハイランドへ遊びに行くのが楽しみ」と語っていたアンドレイ先生(24歳)。
アンドレイ、本当におつかれさまでした!3日間のイベントで、ウィスキングの魅力を日本の人々に文字通りたたき込んでくれました。
 
「大変だったけど、日本のみんなが本当に喜んでくれてうれしかったよ。ウラジオストクに遊びに来たら、バーニャでウィスキングを受けてね!きっと感動するよ」
 
今回の企画でウィスキングを受けてみたくなってウズウズしているあなた、成田から約3時間で行けるヨーロッパ、ロシアのウラジオストクを次の旅先にしてみては?きっとすばらしい体験が待っていますよ!
 
ガイド役のアリョウナさんもありがとう!
 
今回の滞在中、アンドレイさんの通訳を担当してくれたアリョウナさん。現在日本の大学院に留学中ですが、ウラジオストク旅行の相談サービスも行っています。ウラジオストクのバーニャを巡る旅に興味がある方は、彼女のインスタグラムアカウントから相談してみてはいかがでしょうか。
 
施設紹介
湘南ひらつか太古の湯 グリーンサウナ
 
関東で唯一、アウフグース後に熱波師がヴィヒタで身体を叩いてくれるサービスを行っているサウナ。この「ヴィヒタロウリュ」を目当てに遠方から訪れるファンも多い。現在は土日限定で、露天スペースにてテント型のロシア式サウナを体験できる。テントには白樺のほか、メープルやユーカリ、オークなど数種類のヴィヒタが用意されており、セルフウィスキングを楽しむことも可能。地下1300mから湧き出す弱アルカリ性の天然温泉も名物で、美人の湯として女性にも人気を博している。

神奈川県平塚市錦町1-18
0463-22-1772
年中無休・24時間営業
(春・秋1回ずつ、館内メンテナンスのため臨時休業あり)
 
おまけ ロシア語単語集
 
バーニャ:
ロシアではサウナを“バーニャ”と呼ぶ。サウナとバーニャは明確に異なる定義があるが、本稿では「サウナ」と表記している。

パレーニエ:
白樺などの葉で身体を叩くこと。ウィスキングと同じ意味。

パリーシュク:
パレーニエを行う人。プロフェッショナルが存在する。

ヴェーニク:
白樺などの葉を束ねたもの。日本では“ヴィヒタ”という名称で浸透し始めている。
写真/阿部ケンヤ
文/大西洋(Sauna Camp.)
デザイン/桜庭侑紀、上條慶(イベントロゴ)
企画/サウナイキタイ、武藤寛奈