救急隊員とともに結婚式場へ(画像は『ER24 EMS(Pty)Ltd. 2018年10月18日付Twitter「Dad’s front row bed at wedding.」』のスクリーンショット)

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「寝たきりとなった最愛の父に、どうしても自分の結婚式に出席してほしい」―そんな息子の願いが叶った。救急車が隊員付きで父を結婚式場へと送り、さらには挙式中ずっと付き添ってくれたのだ。この救急隊の温かい対応が大きな話題となり、南アフリカ現地『News24』をはじめ複数のメディアが伝えている。

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南アフリカ・セッジフィールド(Sedgefield)に住むフリッキー・グロベラーさん(62歳)は、今年初めに運動ニューロン疾患と診断された。運動ニューロン疾患(MND)とは運動神経の障害で、筋萎縮と筋力低下がみられ、最終的に呼吸筋が動かなくなり死に至るケースが多い。診断当初は車椅子で移動していたフリッキーさんだったが、容態はみるみる悪化、今ではベッドに横たわりまったく動くことができなくなっていた。

フリッキーさんの末の息子ヤンドレさん(31)は実家から490キロほど離れたケープタウンで働いていたが、父を助けるため5か月前に仕事を辞め、両親のそばで暮らすことにした。父を最も慕っていたヤンドレさんにとって、徐々に弱っていくその姿を目にすることは非常に辛く、また「あとどれくらい父と一緒に過ごせるのか?」という焦りもあり、ガールフレンドのニコールさんとの結婚を早めることを決めた。

フリッキーさんの病状が日ごとに悪化していく中で、ヤンドレさんの結婚という出来事は沈みがちだった家族に一時の明るさを取り戻させた。しかしここで問題となったのは、どこで結婚式を挙げるか、どうすればフリッキーさんが結婚式に出席できるかということだった。その後、結婚式場はセッジフィールド市内にあるリゾートホテルに決まり、ヤンドレさんをはじめ家族は式場まで自分たちの車でフリッキーさんを運ぼうかと考えたが、フリッキーさんがこれに乗り気になることはなかった。一時はフリッキーさんの部屋で結婚式を挙げることも考えたが、妻となるニコールさんが「この日は私たちのためだから」とこれに反対。そこで、結婚式場まで救急車を借りることができるかと複数の会社に電話で問い合わせてみたが、いずれも予算をはるかに超える高額なものでヤンドレさんは絶望の淵にいた。

そんな中、今年9月にER(救急隊)24南部ケープ支店長のヨハン・プリンスルーさんに一本の電話が入った。「救急車を丸一日借りることができるか」という内容で、電話の主はフリッキーさんの妻マリアさんであった。ER24は南アフリカ最大手の救急医療サービスで、民間の会社であるため救急車を借りるとなると他社同様非常に高額になる。しかし事情を知ったプリンスルーさんは、フリッキーさん家族のもとに出向き、何とか力になりたいと救急車を一日無料で提供することを決めた。さらに自宅から式場、そして自宅へ戻るまで救急隊付きでケアをすることも約束した。この申し出に家族は感激の涙を流し、特に誰よりも最愛の父の出席を願っていたヤンドレさんは号泣したという。

そして10月6日の挙式当日、ER24の救急隊員アンドリュー・ボータさんとダリル・シスターさんは救急車を綺麗にクリーニングし、通常使う白いシーツから、ヤンドレさんたちの結婚式のテーマカラーに合わせたグレーのシーツを用意した。

フリッキーさんは、ピンクのシャツにピンクのバラをさして準備万端で自宅から教会へ移動。教会で行われた挙式にはストレッチャーで出席し、フリッキーさんのそばには2人の救急隊が常に寄り添っていた。式の途中では、指輪を運ぶ人がいなかったため、フリッキーさんの胸のあたりにクッションを載せ、そこに指輪を置くという粋な計らいも行われた。

救急隊員のボータさんは「家族や招待客だけでなく、私たちにとっても非常に感動的な一日でした。今回の件に携わることができて光栄でした」と語っている。

最愛の父に結婚式に出席してほしいという願いがかなったヤンドレさんは、「6か月間も家から出ることがなかった父でしたが、今日は終始笑顔でした。当初はダンスすることも座ることもできないため、父にとっては居心地が悪いだろうなと心配もしましたが、結果は素晴らしいものになりました。ER24の隊員のみなさんが常にそばにいてくれたので、父も安心だったと思います。結婚式に父を呼べたことは人生で最高の出来事です」とER24への感謝の言葉を述べている。

画像は『ER24 EMS(Pty)Ltd. 2018年10月18日付Twitter「Dad’s front row bed at wedding.」』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 FLYNN)