2月に開業したドンキとユニーの共同店舗(横浜市)。ピアゴ時代より売上高は拡大した(記者撮影)

「ミラクルスキームだ」。ディスカウントストア大手のドンキホーテホールディングス(以下、ドンキ)の幹部は、興奮冷めやらぬ様子で語った。

ドンキは10月11日、東海を地盤に総合スーパー(GMS)の「アピタ」や「ピアゴ」を展開するユニーの買収を発表した。同社の親会社であるユニー・ファミリーマートホールディングス(以下、ユニー・ファミマ)から昨年11月、ユニー株の40%を取得したが、残りの60%を買い入れて完全子会社化する。

5年以内に共同店舗を100店展開へ

買収は8月下旬にドンキからユニー・ファミマに申し出た。ユニー株60%の取得費用は282億円。ドンキはユニーが抱える長期借入金約1800億円(2018年2月時点)も引き継ぐ。


MEGAドン・キホーテUNYの店内にはドンキのノウハウが随所に生かされている(記者撮影)

ユニーは「食品に対する依存度が高く、ドラッグストアなどとの競争が激しくなってきた」(ユニー・ファミマの郄柳浩二社長)。一方ドンキは、天井まで商品を積み上げる独特の店舗づくりを強みに、化粧品や家電など利益率の高い非食品で売り上げの6割超を稼ぐ。そのノウハウを生かし、ユニーの約190店のうち100店舗を、5年以内に共同店舗「MEGAドン・キホーテUNY」に転換する。

現在420店余りを展開するドンキは、2020年度500店の達成を目指し、GMSやパチンコの居抜き物件への出店を続けてきた。ユニーを傘下に収めれば、物件を探す手間や多大な出店費用をかけずに500店舗体制を軽々と実現できる。


10月11日、記者会見に臨んだドンキの大原孝治社長(左)とユニー・ファミマの郄柳浩二社長(撮影:梅谷秀司)

両社は今年春に共同店舗6店を出店した。40%出資のままでもドンキはメリットを享受できるように映るが、買収に至った裏には、ユニーと足並みをそろえるうえでの“もどかしさ”があったようだ。

ドンキは各店舗の社員が主導して仕入れや値付けを行う個店主義や、評価給のウエートの高い実力主義が特徴で、「まじめでおとなしい」(業界関係者)ユニーとの社風の違いは大きい。両社の決算期は異なり、予算編成も一筋縄ではいかず、共同店舗で深夜営業を行うにはユニー側の労働組合への説明も必要となる。40%出資という立場では指揮が執りづらく、共同事業はドンキが想定したようなスピード感で進まなかった。

伊藤忠とのパイプで海外強化

こうした懸念を今回の買収で払拭する。「(申し出から買収決定まで)想定よりかなり早く話がまとまった」(ドンキ幹部)。既存のドンキやアピタ、ピアゴを俯瞰することで、同じ商圏内でのカニバリ(売り上げの食い合い)も防げる。


当記事は「週刊東洋経済」10月27日号 <10月22日発売>からの転載記事です

さらに今回、ユニー・ファミマがTOB(株式公開買い付け)でドンキ株を最大20%取得し、グループ化することも発表した。ドンキはユニー・ファミマの親会社・伊藤忠商事とのパイプを足掛かりに、海外展開も一段と強化する構えだ。

10月11日の記者会見はドンキとユニー・ファミマの社長らが登壇したが、ユニー経営陣の姿はなかった。東海の名門企業ともいわれるユニーの現場の反発を招かず、GMSの再生を実現できるか。業界の風雲児の真価が問われる。