11月6日の米中間選挙を前に相場の下落は収まったのだろうか。欧米などのヘッジファンドは自分たちの本国が波乱になると日本株を「調整」に使う習性があるという(写真:AP/アフロ)

前回のコラム「日経平均3万円・上昇終了、どっちが正しい」では「27年ぶりの相場に勝つには上げに浮かれず、下げを恐れずだ、と書いた(10月8日付け)。

ヘッジファンドが10月2週を「恐怖の1週間」にした

実際、10月第2週の日経平均株価は、連休明け火曜日9日の314円安にはじまり、11日木曜日には915円も下落して大波乱となった。東京証券取引所から先週発表された投資主体別売買動向(10月第2週分)では、外国人の現物・先物合計売り越し額は約1兆8000億円におよび、「恐怖の1週間」だったことが改めて分かった。

しかし、筆者が「下げを恐れず」と言う必要もなく、この週の個人投資家は約6000億円の買い越しとなっている。個人投資家の資金は潤沢で、波乱相場に対して余裕すらうかがえる。

それにしても、外国人短期筋の先物売りは高水準だ。この第2週1兆8000億円の売り越しのうち、1兆5000億円が先物売りとなっている。

これは、欧米などの多くのヘッジファンドが日本市場をヘッジ売りに使っているためと考えられる。ヘッジファンドと言えども、本国株にはロングポジションが多く、本国が波乱になると流動性のある日本株、特に先物に大量のヘッジ売りが来る仕組みだ。

従ってヘッジファンドにとって、日本株は上がっては困るのだ。しかし、先物売りはいずれ買い戻しをしなければならない。なかなか越えられなかった2万3000円を抜けてから、一気の2万4400円台へ跳ね上がったエネルギーの源にもなっていた。ここで溜まった売りエネルギーは、再び株価を跳ね上げることになると思っている。

波乱の第2週に対して、日経平均は先週第3週も日々の動きでは3ケタの上下を繰り返し、波乱とも言えるものだった。だが、第2週に対してみると、1週間では163円安にとどまっている。下値は見えたと言えるのではないか。

先週の下値を支えたのは、それほど悪くなかった経済指標ではないかと思う。先週発表された主なものを拾ってみよう。まず日本。8月の鉱工業生産指数(前月比プラス1.3%と4カ月ぶり上昇)、稼働率指数(前月比プラス2.2%)、9月の消費者物価(プラス1.0%で21カ月連続上昇)という具合だ。

またアメリカでは、10月のNY連銀製造業景況指数(21.1と2カ月ぶりの上昇で予想の19.3を上回る)、9月の鉱工業生産(前月比プラス0.3%と4カ月連続上昇で予想の0.2%を上回る)、9月カンファレンスボード景気先行指数(前月比プラス0.5%と前月から伸び拡大)、と言った具合だ。

市場はいずれ米中貿易戦争に飽きてくる

一方、中国の7〜9月実質GDP前年同月比6.5%増は「2期連続の減速で、予想の6.6%を下回る」と、マスコミは一斉に「ネガティブ報道」をした。だが、果たしてそうだろうか。

もちろん、同国の統計は額面通りには受け取れないのは承知している。だが中小の新興国ならいざ知らず、2017年名目GDP世界シェア約15%を誇る生産大国の成長率としては、名目の9.6%増と共に、決してネガティブなものではないと筆者は感じる。

IMF(国際通貨基金)の予測では僅か4年後の2022年、世界の名目GDPシェアで、米国21.9%、中国18.4%とかなり接近する。さらに「中国製造2025」が功を奏し、一帯一路政策が実を結んで来たら、アメリカの制御が効かない巨大な共産主義国家が誕生することになる。アメリカが到底これを許すはずがない。中国への攻撃はますます激しくなると思われる。

今後は中国の反撃もあり、悲観と楽観を繰り返すことが予想されるが、すぐに結論の出るものでもない。おそらくそれに飽きた投資家は、実態経済や企業業績の原点に帰ってくると思われる。今週は米国の決算発表が佳境となり、日本も日本電産や信越化学工業などの決算があり、スタートから重要な局面を迎える。

不安の中で相場は育つと言われるが、言い換えれば、不安のあるうちは天井を打つことはないとも言える。引き続き、下げたところは拾うところだと考える。915円安でも果敢に買い向かった個人投資家を見ると、筆者などが言うまでもないことか。今週の日経平均予想レンジは2万2250円〜2万3000円とする。