国土交通省は、トラクターに大型作業機を付けたまま公道走行ができるよう道路運送車両法の運用を見直す方針を固めた。幅2・5メートルを超えるものや、トラクターの灯火類が隠れる作業機については、同法で定める「保安基準の緩和」の認定をして、制限を付けて走行可能にする。農地間の移動を効率化できるとみて、農耕用車両に適した認定方法などを議論する。

安全対策が重要


 同省が政府の規制改革推進会議農林ワーキング・グループ(WG)で示した。検討するのは、一般的な、最高時速35キロ未満の「小型特殊自動車」に分類されるトラクターの規制緩和。ロータリーやハーベスターなど、装着時に後退灯が隠れたり、幅や高さが基準を超えたりする大型作業機はこれまで、外さないと公道走行できなかったが、認定して走れるようにする。

 現行の認定制度でもトラクターが公道を走る審査はできる。WGで、複数の作業機をまとめての申請や、認定時に付ける制限など、農耕用途に合った制度の運用方法を検討する。

 同省によると、公道走行用の車両では、申請からだいたい1カ月以内に認定されるという。警告灯追加や速度制限、期間制限などの条件が付く。トラクターも同様で「条件は個別の判断になる。なるべく農家の手間がかからない条件や申請方法を考えていく」(自動車局技術政策課)としている。

 認定制度の利用で、トラクターの農地間の移動がしやすくなると期待。農作業の効率化と安全対策の両輪で議論する。

 警察庁の統計では、農機の公道での死亡事故は年間30〜40件で推移。単独事故が最も多いが、後続車に追突される事故も発生している。低速車マークの掲示の徹底など、安全対策も重要になる。

<ことば> 保安基準の緩和

 トレーラーや連節バスなどの大型車両、または、超小型の車両など、構造が特殊で通常の保安基準に適合しない車両でも公道を走れるようにする認定制度のこと。地方運輸局が保安上支障がないか審査し、制限を付けて認定する。道路運送車両法の保安基準第55条で定めている。