激しい闘志で日本DF陣に襲い掛かったカバーニ(右)。試合後のミックスゾーンでは一転、笑顔を振りまいていた。(C)REUTERS/AFLO

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 実に痛快な夜だった。火曜日、埼玉スタジアムで繰り広げられた一大スペクタクルは、いまだその余韻を残している。
 
 森保ジャパンが4-3でウルグアイ代表を下した一戦だ。数多のゴールが飛び交った見応えある攻防戦だったが、驚かされたのは必死の形相でボールを追う南米の雄の姿。韓国戦に続く連敗は避けたいとばかりに、ファウルまがいの激しいチャージも頻発させていた。スパイクされた柴崎岳などは足を引きずってミックスゾーンに現われていたし、両チームともに親善試合とは思えないほど、高いインテンシティーで向かい合った。だからこそ、観る側は存分に楽しめたのだ。
 
 その試合後のミックスゾーン(共同の取材エリア)で、ウルグアイ代表が「取材拒否」したことが取り沙汰されている。
 
 150名近い記者やジャーナリストでごった返していた、ウルグアイ戦後の取材エリア。一種のカオスだが、その場にウルグアイの地元メディアやスペイン語を操る取材者はほぼいなかったと思う。私はそれでも、ウルグアイ代表選手たちの日本代表への印象を聞きたく、声を拾おうとトライした。10人くらいの選手に話しかけたが、ひとつも成功しなかった。無残な結果である。そうしたアクションを起こしていたのは私を含めて2、3人程度。他の取材陣は「どのみち彼らは話さないだろう」と諦めていたのかもしれない。彼らは前日練習でも誰ひとりとして、口を開いていなかったからだ。
 
 たしかに「取材拒否」ではある。ただ、とても強く響く言葉だ。

 
 もちろんミックスゾーンを通るわけだから、選手たちには極力取材に応じてほしいと思う。ただ、外国籍の選手にとって日本の取材エリアはさほど簡単な場所ではない。私は英語で話しかけたものの、ウルグアイの選手たちは大半が苦手そうで苦笑していた。スペイン語の通訳さんがいれば、また状況は違っていただろう。ひょっとしたらスペイン語圏のメディアが来ていないから、ミックスゾーンは素通りでいいとチーム内で申し合わせがあったのかもしれない。ごめんね、という素振りをする選手もいた。フェルナンド・ムスレラやロドリゴ・ベンタンクールらがそうだ。
 
 間違っても、険悪なムードはいっさいない。試合後にエキサイトして審判団に詰め寄っていたエディンソン・カバーニも、ミックスゾーンでは日本の選手たち数人と笑顔で健闘を称え合っていた。ただ彼らは「話さない」という選択をしただけだ。あからさまに無視をしたとか、負けて不機嫌で態度が良くなかったとか、アジアのメディアを軽視していただとか、そういう次元の話ではない。
 
 欧州ではミックスゾーンさえ設けていないリーグが少なくない。あっても登場する選手が限定的だったりするし、Jリーグの試合後だって、話しかけても対応しない選手はいる。行動によってどう印象付けられるのかを含めて、プロ選手である彼らの「チョイス」なのだ。
 
 ウルグアイ代表のチームマネジャーに「なんとか選手たちの足を止めてもらえませんか?」と尋ねると、片言の英語で「彼らは疲れている。休ませてやってくれ」とやんわり言われた。まあこんな日もある。私はそう感じただけだ。
 
取材・文●川原崇(サッカーダイジェストWeb編集部)