冨安はパナマ戦で代表デビュー。しかしウルグアイ戦は出番なしだった。写真:山崎賢人(サッカーダイジェスト写真部)

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 パナマとウルグアイを相手に2連勝を飾った10月シリーズの日本代表では、南野拓実、中島翔哉、堂安律という攻撃陣の「新ビッグ3候補」に大きなスポットライトが当たった。しかし、守備陣にも見逃せない収穫があった。 初招集された9月シリーズでは出番がなかったものの、パナマ戦で待望の初キャップを刻んだ19歳のCB、冨安健洋だ。
 
 コンビを組んだ槙野智章と連携してパナマを無失点に抑え込んだ守備のみならず、持ち上がりや縦パスなど攻撃でも貢献。東京五輪世代の期待のCBは大きなポテンシャルを感じさせ、チームメイトたちも絶賛していた。
 
「色々なタイプがあると思いますけど、あの体格で人にも強く、高さもあり、スライドやアジリティーも良いものを持っている。CBは経験がモノを言うと思うので、もっとリーダーシップを持てればさらに良い選手になると思う」(槙野)
 
「19歳であれだけプレーできるのは羨ましい。もう、嫉妬ですよ。僕が19歳の時は大学で太鼓を叩いていましたから(笑)。それと比べると、羨ましくてね。まあ、ああいう若手が出てくるのは嬉しいです」(長友佑都)
 
「トミ(冨安)の試合を見るのは初めてでしたけど、僕が思っている以上にやれるなと感じました」(吉田麻也)
 
 だからこそウルグアイ戦も個人的にかなり楽しみにしていたのだが、残念ながら出番なし。この10月シリーズはフィールドプレーヤー全員を使った森保一新監督の、「より多くの選手を使って真価を見極めたい」という考え方はもちろん理解できる。ただ、冨安はウルグアイ戦でも使うべきだったのではないか。
 
 代わりに吉田とCBコンビを組んだ三浦弦太が、ありえないミスで失点に絡むなど終始安定感を欠いたからではない。世界に通用しうる資質を持っている冨安が、エディンソン・カバーニというワールドクラスのCFを相手にどれだけ戦えるかを見極める絶好の機会だったからだ。今後は特別扱いする価値があると個人的には考える。
 
 まず大きいのがやはり、188センチというサイズだ。今や欧州レベルでは190センチ前後が標準で、180センチ台前半でワールドクラスと呼ばれるCBはマルキーニョス(パリSG)やサミュエル・ウンティティ(バルセロナ)など数が限られる。このクラスの大きさの日本人CBは、過去を遡っても中澤佑二や吉田麻也などそれこそ一握りで、体格のわりにアジリティーも悪くなく、それだけでも冨安には期待させずにはいられない。
 
 元から定評のあった足下のテクニックにもさらに磨きが掛かっている。パナマ戦ではタイミングを見て持ち上がり、鋭い縦パスを何本も通していた。例えばジェラール・ピケ(バルセロナ)やレオナルド・ボヌッチ(ユベントス)などのように「最終ラインのレジスタ」として機能できるほどのプレービジョンは備わっていないが、最後尾からのビルドアップが不可欠になっている現代のニーズを十分に満たしている。
 
 もうひとつ見逃せないのが、19歳での海外移籍だ。J2のアビスパ福岡から今年1月、ベルギーのシント=トロイデンに移籍。昨シーズンは出番を得られず苦しんだが、今シーズンは開幕からレギュラーポジションを掴んでいる。同じ日本人CBでは吉田が21歳、植田直通が22歳、槙野が23歳、鈴木大輔が25歳で海外挑戦しているが、彼らと比べてもかなり早い。
 
 言うまでもなく「欧州に行けばいい」というものではないが、Jリーグと比べて戦術/対人の両方で高いレベルが求められるのは明らかで、練習でも試合でも常に外国人選手と戦えるメリットはかなり大きい。ウルグアイ戦後に森保監督が、「海外でプレーしている選手はウルグアイにチームメイトもいますし、日頃からリーグ戦で戦っている相手もいると。だから本当に同じ目線でウルグアイと戦ってくれた」と語ったことからも、早期の海外挑戦は経験値という意味で雲泥の差が出るのは間違いない。