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ホストやキャバ嬢のバースデーを盛り上げる豪華シャンパンタワー。最低でも数十万円、最高額は数千万円ともいわれるシャンパンタワーですが、このキャンセル料をめぐり、客と従業員の双方から弁護士ドットコムに相談が寄せられています。

ホストクラブに通うある女性は150万円のシャンパンタワーをキャンセルしたところ、「キャンセル料が100万円かかる」と言われ、支払うべきなのか悩んでいます。

一方で、「タワーの準備やシャンパンの仕入れ、従業員の増員までして待っていましたが全て無駄になってしまいました」「キャンセル料は取れますか?」と途方に暮れるキャバクラの従業員もいます。

どちらも口約束だったとのことですが、キャンセル料を支払う義務はあるのでしょうか。あるとすれば、その額はいくらぐらいが妥当なのでしょうか。ナイトビジネスに詳しい若林翔弁護士に聞きました。

●高額すぎるキャンセル料は「無効」となる可能性も

ーーシャンパンタワーを入れるという口約束をしただけの場合でも、キャンセル料を支払わなければならないのでしょうか。

「口約束であっても、具体的な内容についての合意ができていれば契約は成立します。どのシャンパンを何本使用し、その金額がいくらなのかということについて、合意ができていれば事前に契約は成立しているといえるでしょう。

ただ、実際に口約束だけで証拠となるようなものがないとなれば、その約束(契約)の存在や内容について立証するのは困難になります。

そして、契約が成立したにも関わらず、一方的にお客さんの方からキャンセルをするということは、シャンパンタワーを注文する契約についての債務不履行があるといえ、キャンセル料というよりは損害賠償を払う必要が生じます」

ーー事前にキャンセル料に関する説明を受けていた場合や規定がある場合はどうなるのでしょうか。

「事前にキャンセル料についての合意がある場合は、その合意(契約)に従ってキャンセル料を支払う義務を負うことになります。

ただし、事前に合意したキャンセル料が、実際にかかるであろう損害と比べてあまりにも高額である場合などの事情があれば、公序良俗に反して無効だと判断される可能性があります」

●キャンセル料は個別に判断されることになる

ーーキャンセル料を支払わなければならない場合、金額はいくらが妥当なのでしょうか。

「シャンパンタワーのキャンセル料についての規定や事前の合意がない場合には、シャンパンタワーの注文をキャンセルした債務不履行によって生じた損害を支払う義務を負うことになるでしょう。

キャンセルがなければ得られたであろう利益(履行利益)と考えれば、シャンパンタワーの注文料金にサービス料等を加算した金額が損害となりそうです」

ーーシャンパンタワーを入れる予定日よりもかなり前にキャンセルをした場合も損害を支払わなければならないのでしょうか。

「このような場合は、実際にシャンパンタワーに使用するシャンパンの注文もしておらず、ホストやキャバ嬢はその日に別のお客さんを多く呼ぶこともできるかもしれません。そうなると、実際に債務不履行により生じた損害というのはほとんど発生しないことになりそうです。

実際に請求できる具体的なキャンセル料(損害賠償)は、具体的な事情により判断されることになるかと思います」

●キャンセル料で悩まないために

ーーキャンセル料をめぐるトラブルを避けるために、できることはありますか。

「お店やホスト、キャバ嬢からすれば、事前に妥当なキャンセル料について規定をして、お客さんに合意しておいてもらうのが良いかと思います。

キャンセル料を請求されているお客さんは、実際にどのくらいの損害が発生しているかを検討してもらい価格交渉をしていくのが良いのではないでしょうか。ご自身での交渉が難しい場合には弁護士へ依頼をして代わりに交渉してもらうという手段もあるということを頭の片隅に入れておいてもらえたらいいかと思います」

(弁護士ドットコムニュース)

【取材協力弁護士】
若林 翔(わかばやし・しょう)弁護士
顧問弁護士として、風俗、キャバクラ、ホストクラブ等、ナイトビジネス経営者の健全化に助力している。日々、全国から風営法やその周辺法規についての相談が寄せられる。また、店鋪のM&A、刑事事件対応、本番強要や盗撮などの客とのトラブル対応、労働問題等の女性キャストや男性従業員とのトラブル対応等、ナイトビジネスに関わる法務に精通している。
事務所名:弁護士法人グラディアトル法律事務所
事務所URL: https://fuzoku-komon-law.jp