by Katerina Radvanska

日本で「出版不況」が叫ばれ、実際に出版産業が縮小し始めて20年。新聞も相当な苦境にあるようで、アメリカでは、2004年から15年で約1800紙の新聞が消え、ニュースを得ることができない「ニュース砂漠」が拡大しているそうです。

The Expanding News Desert |The Expanding News Desert

http://www.usnewsdeserts.com/reports/expanding-news-desert/



ノースカロライナ大学チャペルヒル校(UNC)のメディア&ジャーナリズムスクールでは、この「ニュース砂漠」の情報をまとめたサイト「The Expanding News Desert」を公開しています。トップページの「Do You Live in a News Desert?」と題された地図は、すでに新聞が消滅した地域、残り1紙という地域を示したものです。



その最新のレポートによると、2004年から15年間で廃刊、他紙との合併などで消滅したアメリカの新聞の数は約1800。内訳は日刊紙が60、週刊紙が1700。残っているのは日刊紙1283,週刊紙5829の7112紙だとのこと。この間、「新聞の廃刊がなかった州」はなく、「ニュース砂漠化」に晒されているコミュニティは数百という数に上ると考えられています。すでに、アメリカの全3143郡のうち、約200の郡は「まったく新聞の存在しない郡」と化し、1449の郡が週刊紙1つのみという状況に陥っています。また、すでに日刊紙が消滅した郡の数は2000に上ります。

消滅した新聞の70%、1300紙は大都市圏で発行されているもので、そのほとんどは週刊紙で、発行数は1万部未満だったとのこと。農村部でも500以上の新聞が消滅。こうした地域の読者の多くは全国平均を上回るほど貧困な農家で、コミュニティは孤立しがちであり、新聞がなくなったあとの空白を埋めるものがない状況にあります。残っている新聞も小規模な農村地域で展開しているものが多く、該当する5500紙は発行数が1万5000部未満だそうです。

新聞の数の減少は上述の通りですが、読者数も減少の一途をたどっていて、しかもその減少速度は加速しています。ここ15年で、新聞の1週間の発行部数は1億2200万部から7300万部へと減少しました。

なお、消滅はほとんど気付かれないうちに発生しています。137年の歴史がある「Gridley Herald」は2018年8月31日付けで終了しましたが、その終了をスポーツ担当記者が知ったのは当日のことだったそうです。



Girdley Heraldを発行していたのはアメリカ最大級の新聞出版社であるGateHouse Mediaで、同じく2018年付けでミズーリ州南西部で最古の日刊紙・Carthage Pressも廃刊にしました。新聞の発行をやめてしまう理由は「新聞用紙が高いから」だとのこと。

With one day’s notice, Gridley Herald staff prints final issue, closes its doors - Chico Enterprise-Record

https://www.chicoer.com/2018/08/31/with-one-days-notice-gridley-herald-staff-prints-final-issue-closes-its-doors/



紙が高いならデジタル化すればよいのでは……というのは簡単に思いつくところであり、実際にベンチャー企業をはじめとして数多の起業家が地域にニュースを提供するビジネスモデルを試したものの、大部分の企業は大都市圏に集中しているため、結局、一度「ニュース砂漠」になると、元に戻ることは難しいようです。

また、上に出てきたGateHouse Mediaのように、新聞を所有する会社の数もまた年々減少しており、上位25社で新聞全体の3分の1、日刊紙に限ると3分の2を所有している状態にあります。このため、地元とは利害関係を持たない会社がローカル紙を出しているというケースが多いとのこと。

UNCメディア&ジャーナリズムスクールでは、最小の市場でも持続可能なニュースビジネスモデルを作り上げられれば、草の根レベルからメディアへの信頼を復活させることができると締めくくっていますが、そんなビジネスモデルがあるなら、すでに起業家が群れをなしているはず……。