北海道大学と京都大学、パナソニックの研究グループは、ゲノム編集でアレルギー物質が少ない低アレルゲン大豆を作ることに成功した。アレルギーの原因となる2種類のタンパク質のもととなる遺伝子を壊した。研究グループによると、ゲノム編集で低アレルゲン大豆を作ったのは世界初という。多彩な品種で応用でき、アレルギーの起きにくい大豆や加工品の製造に役立つとした。

 大豆アレルギーは、大豆に含まれるアレルゲンタンパク質が原因で起こり、これまでに十数種類が知られている。これらのタンパク質は、納豆やみそのように発酵すると分解されるが、煮豆や豆腐、豆乳のように発酵しない食品にはそのままで残っている。

 研究グループは、ゲノム編集技術でアレルゲンタンパク質を作る遺伝子の機能を壊せば、アレルギーが起きにくい大豆を作り出せると考えた。試験に使ったのは「エンレイ」と「カリユタカ」。主要なアレルゲンである「30Kタンパク質」と「28Kタンパク質」を作る遺伝子に着目した。

 ゲノム編集を施した「エンレイ」を栽培したところ、収穫した大豆の中から両方の遺伝子が働かなくなっている粒があることを確認。中には、ゲノム編集の過程で使う外来遺伝子が存在しない粒もあった。この粒は、環境省の方針案では、遺伝子組み換え作物に該当しないとされる。

 また「カリユタカ」でも二つの遺伝子を働かなくすることに成功。ゲノム編集で使う外来遺伝子は存在していたが、交配を繰り返せば取り除くことができるという。

 ゲノム編集は、交配による育種と異なり、もともと持っている遺伝子を壊して働かなくすることができる技術だ。研究グループは、ゲノム編集を用いれば、別の品種も短期間で低アレルゲン大豆にできるとみる。北海道大学大学院の山田哲也講師は「アレルギー物質を減らすことで、安心して食べられる大豆が作出できた。未知のタンパク質もあるため、アレルゲンを完全になくすことは難しいが、さまざまな品種で低アレルゲン化を進められる」と説明する。