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住まいに求める基本的な思いは、今も昔も変わらない普遍的なものかもしれない。しかし、リフォーム技術の向上、素材の進化やプランナーの多彩なアイデア、住まい手の意識向上により、新たな定番が現場では次々と生まれている。今回は「素材」と「デザイン」二つの視点から、リフォームの現場をよく知るトッププランナー8人に、リフォームの新定番を教えてもらった

【1】引き締め素材を取り入れて空間のポイントにする

アイアンや真鍮(しんちゅう)など硬質感をもつ素材を、柔らかい雰囲気の木と組み合わせて使うのが最近の人気だ。ナチュラルな空間やモダンな空間にもなじみやすく、引き締め素材として使うと効果的。強度が高く、太さの変化によって、重厚にも繊細にも見せ方を変えられる。

既存の柱や梁を残したナチュラルな空間に、コンクリートブロックやアイアンの階段手すりなどハードな素材を組み合わせた。「黒のアイアンだとグッと引き締まり、白にするとなじむ感じにできます。どんなデザインテイストでも取り入れやすいのが魅力です」(画像提供/LIV(リヴ))

【2】室内にはあまり使われない建築素材でラフ感を出す

ラワン合板(ベニヤ板)や足場板など従来は隠れて見えなくなる構造用建材や、古材、レンガなど外壁に使われる建築素材を、あえてインテリアに取り入れることで程よくラフな雰囲気に。ここ数年人気のインダストリアルな空間でよく見られる手法だ。

「キッチンの腰壁にラワン合板を使ってむく材とは違う質感のキリッとした塩系インテリアに」。大柄の木目が特徴的で、塗装の有無で上品系、素朴系と表情を変えられる(画像提供/ハコリノベ(サンリフォーム))

【3】イメージだけで選ばずに場所に合った素材の使い方をする

劣化が目立ちやすい水まわりなどに使う素材は、メンテナンスに手がかかってもこだわりたいのか、ラクに手入れができる方がいいのか、用途とライフスタイルに合った素材選びが暮らしやすさを左右する。長く使えるよう特性を見極め賢い素材選びをする人が増加中。

薄塗りができてクラックが入りにくいモルタルに似た質感の左官材をダイニングテーブルの天板(てんばん)や床全体に使用。「『ペットがいるので水拭きできる床に』との要望に応え、メンテナンス性とデザイン性を両立させました」(画像提供/ハコリノベ(サンリフォーム))

【4】再利用で新旧素材を違和感なく融合させる

全てを新しくしてしまうと、きれいにはなるが味気ない空間になってしまいがち。しかし、新旧素材をバランスよく組み合わせることで、住み慣れた家のようなこなれた空間が生まれる。古いものを以前とは違う雰囲気、違う場所で再利用するアイデアを楽しみたい。

玄関の式台に使われていた立派な木をリビングのカウンターに再利用。「捨ててしまうにはもったいない部材を活用すれば、古さを活かしたデザインの融合が楽しめます」(画像提供/LIV(リヴ))

【5】ずっと長く使える本物素材を取り入れる

質の良い本物の自然素材は、心地よさを与えてくれ、手入れ次第で長く使い続けられるのが魅力。新建材なら傷になってしまうものも、自然素材なら味になる。全面的に取り入れなくても床材やカウンターなど、足や手がよく触れる部分に絞って取り入れる人が増えている。

美しい色合いと高級感が魅力の御影石。「傷がつきにくく、水や熱に強いのが特徴で、最近は料理好きの方から天然石をキッチンカウンターに使いたいという要望が増えています」(画像提供/Kraft(クラフト))

【6】塗装範囲や素材使いのバランスで印象を変える

「男前インテリア」などと呼ばれ、ここ数年人気のインダストリアルな空間。ダクトや配管がむき出しになったスケルトン天井が特徴だが、塗装や素材の組み合わせバランスで少し柔らかさをプラスすれば、ナチュラルテイストの家具にも合わせやすくなる。

スラブむき出しの天井にホワイト塗装の壁、木製サッシの室内窓を合わせ、どんなテイストにも似合う空間に。「気分に合わせて家具を入れ替えたい人や、家族の成長とともに内装を変えたい人に取り入れやすいデザインです」(画像提供/シンプルハウス)

【7】これまで以上に性能が高くフラットな土台づくり

2020年以降の新築では、断熱性能のレベルアップが義務化の予定。これまで体験したことのないような災害が各地で起こる中、長く安心して住み続けられるよう、家の土台となる耐震、断熱、構造面を当たり前レベル以上に引き上げるリフォームが再認識されている。

「できる限り補助金制度が使える、より高い性能を備えた家が、これからの時代に即したスタンダードになっていくはず。築古物件や増改築された物件でも、建築当時の設計図書が残っていれば一度フラットに戻し、そこから性能を高める作業が行えます」(画像提供/ATTRACT(アトラクト設計工務))

【8】室内開口を取り入れて時間と空間を家族で共有

室内開口は単に光と風の通り道としてだけでなく、デザイン性と機能性も兼ね備えている。最近ではプライバシーよりも家族とのつながりを重視する傾向が強いため、個室の扉をなくしたり、家族の気配を感じられる室内開口を設けるケースが増えている。

6人家族が集まる広いリビング。「遊び心のあるデザイン扉で子どもたちがワクワクするような空間を演出し、ガラス窓で家族の気配をいつも感じられるよう配慮しました」(画像提供/SCHOOL BUS)

【9】ディテールまでこだわり、雰囲気ある空間をつくり出す

自分好みの空間をつくるため、モールディングやタイルの張り方、造作家具などのディテールまでこだわる人が増えている。使用する部材の太さや細さ、厚みや幅といった細やかなつくり込みのほか、素材の扱い方など一つひとつが、印象を変えるカギになる。

オリーブカラーのキッチンの腰壁に施されたモールディング。「凹凸をつけ過ぎてヨーロピアン調にならないよう、mm単位までこだわってシンプルな溝を施し、本場のアメリカンスタイルを再現」(画像提供/SCHOOL BUS)

【10】照明器具や光量の調整で空間をスタイリングする

ダウンライトやダクトレールをとりあえず設置するだけの照明計画から、最近は家具とのバランスを考えた配置や照明自体のデザイン性を活かした提案へと進化。シーンによって調光できるシステムの採用など、スタイリングアイテムとして取り入れる照明計画が主流になってきた。

「古いビルを改装した空間には、カチッと計算されたデザイナーズ照明よりも、厚みのあるガラスやスチールなどラフな雰囲気のものを複数混ぜて組み合わせる方がうまくまとまります」(画像提供/アンメゾンワールド)

【11】構造上抜けない部分をあえて目立たせてアクセントにする

構造上抜けない壁や柱、梁などは、間取りをデザインする上でデメリットに思われがち。あえて特徴をもたせてデザイン化することで、その空間のポイントとして昇華させることもできる。さらに、異素材と組み合わせて新鮮なインパクトをもたせてみると、面白い空間が完成する。

LDKの中央に通る丸太柱は構造上抜くことができなかったため、磨きをかけて残し、印象的に。「美しい木目の柱はリビングの雰囲気によくなじみ、邪魔な雰囲気を感じさせません」(画像提供/ATTRACT(アトラクト設計工務))

【12】くすみ系アースカラーで大人上品に仕上げる

飽きのこないシンプルでナチュラルな空間は根強い人気だが、シンプル過ぎない上品で大人な雰囲気に仕上げたいという人が増えている。差し色として紺や緑、茶といった落ち着けるアースカラーを使えば上品にまとまり、どんなインテリアにも合わせやすい空間に仕上げられる。

アースカラーとは空や緑、大地の色。自然素材との相性もよく、どんなテイストにも合わせやすい。「SNSの影響か色の感覚はここ最近、多様になっているように感じますが、やはり落ち着ける色合いは昔から変わりません。人になじみの深いアースカラーが使いやすいでしょう。壁一面だけ使ったり、キッチンの造作扉だけに使うなど、アクセントカラーとして取り入れることが多いです」(画像提供/北条工務店一級建築士事務所)

住む人の個性やライフスタイルに合わせ、オリジナル性の高い空間づくりができるのがリフォームの醍醐味。気になる新定番をぜひプランに取り入れて、より自分らしく暮らせるリフォーム空間を実現させよう。

●取材協力
・ATTRACT(アトラクト設計工務) 林 光一さん/アンメゾンワールド 芝本貴行さん/Kraft(クラフト) 前田浅人さん/シンプルハウス 田口和也さん/SCHOOL BUS 古谷勇祐さん/ハコリノベ(サンリフォーム) 財津友里さん/北条工務店一級建築士事務所 影山絢香さん/LIV(リヴ) 藤関悦子さん
(SUUMOリフォーム 編集部)