新卒から勤続10年でも年収200万台…独身アラサー女性の“夢”を持てない生活

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 仕事があって、家もある。一見すると「普通の生活」に思えるが、夢も希望もない状態に追い込まれてしまった人たちだっている。たとえ転職はせずに同じ会社で10年以上働き続けても給料は一向に上がらず、新卒時とほとんど変わらない年収200万円台のまま……。

「なんでこうなったのかわからないんですよね。普通に大学を卒業し、一応まじめに働いているつもりなんですが……」

 真美子さん(仮名・30代前半)が住むのは、お世辞にもキレイとは言えない東京都渋谷区のワンルームマンション。彼女の姿から見えてきたものとは……。

◆大卒で10年以上働いても年収200万台のまま

 真美子さんは北海道の私大を卒業後、東京の靴販売会社に就職。そこで十数年が経過したのだが、その間一度も引越しは行っていない。手取り月給は新卒時よりも少ない14万円程度。マンションの賃料すら、入居時より5000円も高くなっているから、1か月のうちに自由に使えるお金は昔より少ないことになる。

「自由に使えるお金は……あまりないですね。最近、携帯を格安会社に換えたので5000円くらい浮きました。プチプラのコスメ(安い化粧品)を少し買えたかな、というくらい。美容室だって3か月に一度行ければいいほど。髪は染めてもすぐプリンになるので、黒髪のままです」

 部屋を見渡せば、目立つのはチューハイや発泡酒の空き缶、コンビニや弁当店の食べがら。灰皿には細いタバコの吸い殻が山盛りだ。まるでお金のない貧乏大学生の部屋だが、真美子さんは一応、社会人としてまじめに働き、そこまで浪費家でもない。何が原因なのか。

「10年も働けば、お給料もそれなりに上がると思っていましたが、安いファストファッションブランドが流行ったために、私のお店で販売しているようなミドルレンジ(中級)の靴が売れなくなってしまったんです。現在は新卒時よりも1万円くらい安い手取りです。女性の多い職場なのですが、以前は40歳手前くらいで寿退社や産休で会社から離れる人が多く、若手が空いたポジションに入れていました。今は上が辞めないために若手が昇進できません。新卒の子が入る余裕もなく、私たちがいつまでたっても下っ端です。一昨年には家賃も上がりました。オリンピックを前に、周りの賃貸物件の家賃も上がっているとかで……」

 そもそも残業代のつかない「ブラック企業」に就職してしまったことも原因と嘆く真美子さんだが、不景気や不動産価格の上昇といった要因も、真美子さんに追い打ちをかけた。

 しかし、である。家賃や食費、生活必需品を買っても、月に5万円程度は残る。もっと家賃の低い部屋に住めばいいし、部屋に散乱する酒や弁当などのゴミを見ても、真美子さんにも何か原因があるのではないか……。

「月に平均でも二足は、自社で扱う商品の買取を迫られます。これで大体3万円弱。会社の飲み会も、基本的には自費負担で1回3000円程度としても、月に1万円以上。残業も週2〜3度あり、終電がなくなると会社泊。どうしても帰りたいときはタクシーで、これも自己負担です。会社に近い渋谷区に住んでいるのはそのためで、遠いとタクシーで帰れなくなってしまうから」

◆「もう何もかもが手遅れな気がする」

 「残業がない」という日でも、毎朝9時半から午後9時ごろまでは店頭、もしくは会社にいるという真美子さん。労働感覚がすでに麻痺しているのかもしれず、自宅に帰れば食事を作る気力すらなく、近隣の弁当店かコンビニで夕食兼つまみと強めの酒を買い、テレビや動画サイトをぼーっと眺めながらの晩酌。そのまま風呂にも入らず、気づけば朝を迎えている。趣味や娯楽は一切なく、こんな生活を送りはじめて、すでに10年近くが経った。

「自由に使えるお金も月に5万円では全く足りず、カードローンも利用しています。リボ払いだから……と気にしていなかったら、借金は70万近くにまで膨れました。無駄使いもしていないし、懸命に働いているのに。北海道の田舎で育ち、少しでもいい生活をしたいと札幌に出て、その後は東京に来ました。昔は見下していた地元の中卒、高卒の同級生たちはほぼ全員が結婚し、子育てをしながら半数以上が家まで買っている。以前はSNSでつながっていましたが、そういう報告を見るたびに胸が苦しくなる。今では全く見ないようになりました。30歳までは、実家に戻ろうかとも思いましたが、もう何もかも手遅れなような気がして……」

 仕事もある、住むところもある。毎日食べられるし、酒だって飲める。ひと昔前に社会問題とされた「ワーキングプア」と呼ばれる人たちと比較すれば、真美子さんは「普通の生活」を送っているのかもしれない。しかし、真美子さんには夢も希望もない。ただ毎日、仕事して家に帰り、休日はほぼ布団の中で過ごすだけ。「何か」をしようにも、先立つお金も気力も削がれてしまっており、プライベートの交友関係もほとんどない。

「婚活すれば変われるかな? と思って合コンや婚活パーティーにも行ったことはあります。お付き合いをした男性もいます。でも、根本的に私の生活が変わらない以上、どうしようもないことに気が付きました。でもどうすればいいんでしょう? 死にたいとか逃げたいとかは思わないんですが、このまま過ごしていても、本当に一人ぼっちになってしまいそうで……。そういう恐怖感がありますね」

 失われた20年ともいわれる、バブル崩壊後から十数年の間に社会人となった30代後半から40代だけではない。30代前半、20代の世代でさえ、真美子さんのような境遇を強いられている人々が存在する。どうにか社会生活を営んでいるが、ギリギリ社会にぶら下がっている、という表現が適当なのかもしれない。<取材・文/森原ドンタコス>