日米比較 「インスタ映え」から考える女子文化の違い

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塩谷舞・石井リナ・大久保楓による鼎談は第3回にして、なんと海外へ。それぞれの理由で、同時期にニューヨークに滞在することになった3人が集まり、そこで感じたこと、見つけたもの、日本との違いなどで盛り上がります。

◆「裕福度」と「幸福度」は比例しないのか?

舞:ニューヨークに拠点を置く前から、「日本でこのまま必死に“上”を目指して、幸せになれるんだろうか」という疑問がありました。金銭面での成功、つまり裕福度と、幸福度が反比例していくというか……。

楓:なんか分かる気がする。

リナ:年収と幸福度の関係で、800万円が頂点でそれ以上には上がらない、みたいなデータもありますよね。

舞:東京は、価値観は新しいし、スタートアップとか頑張る人を応援してくれるから好きな街なんです。ただ、その先進的な価値観の人が同時に「死ぬほど働く」ことを肯定していたりもして。私はそこまでマッチョな志向にはなれないし、この先、業界での序列や圧力に巻き込まれず自分のテンポで幸せに生きていこうと思うと、海外か田舎かしかないって感じちゃったんですよね。そんな時に、音楽家の夫がニューヨークに拠点を持ちたいと話していたので、私も乗ることにしました。

リナ:場所を変えるとマインドも変わりますしね。

舞:そうそう。浮き沈みの激しいネット業界の中での自分の立場や、キャリアをフラットな環境で考えられるようになったのがよかったこと。

リナ:私は休暇をファッションウィークに合わせたんですけど。年に1回は来ようって決めてて……よいものを作るのはヨーロッパで、流行を作るのはニューヨークだと思っているんです。市場や見せ方が新しくて面白い。

楓:私もファッションの勉強と、3週間の語学留学で。

舞:3週間いろいろあったね。

楓:そうですね。舞さんの知り合いのフォトグラファーさんとすごく話が盛り上がって、翌日すぐに自分のブランドの服を持って一緒に街へ写真を撮りに出かけたりもしました。

舞:人生の早いタイミングでアメリカを見ていると、ビジネスモデルとか市場の規模感とかがすごく変わってくるので、ブランドをやっている楓ちゃんみたいな人が19歳で留学に来ているのは、正直すごく羨ましいって思う!

インスタ映えから考える女子文化の違い

楓:「ドリーム・マシーン」っていう、“インスタ映えのためのミュージアム”みたいなところにも3人で行って楽しかったですね。

舞:大人気だった! 入場料が30ドルもして、大人たちがただただ写真を撮る場所。そして目新しいテクノロジーやアートというよりも、とにかくインスタ映え

楓:お金を払ってインスタ映えするスポットを何カ所か回るっていう文化自体が日本にはなくて、新鮮。

舞:照明が青い部屋も多くて「これだと顔が可愛く映らない!(笑)」と思っちゃったけど、全身をスタイリッシュに撮るための作りがメインなんですよね。日本のSNSは「顔をいかに可愛く撮るか」が最重要じゃない? そもそも女子の文化の違いは大きい。ニューヨークの街で萌え系みたいな人は見ませんし。

リナ:「可愛い」を辞書で調べると「弱いものに心引かれる気持ち」と定義されているんです。日本では、か弱さが女性の美徳の一つだと捉えられているところがあって、アイドルとかにもそれが求められている。

一方で海外ではビヨンセがライブの時に女の子たちに、パワフルでいることの素晴らしさをメッセージとして発信していて、すごく差を感じますね。そんな人、日本にはいないじゃないですか? ロールモデルがない今の日本のままだと女性のエンパワーメントは進まなそうに思えて……。いつ、日本に「パワフルなアイコン」が誕生するのか期待して待っています!

舞:そこは、自分たちがどんどん体現していかなきゃいけないね。ちなみに、ニューヨークで名刺の代わりにSNSってことが多くて、Instagramがほとんどなのでちゃんとやってて良かった!って(笑)。

リナ:Instagramは「世界初のグローバルSNS」とも言われていますからね。TwitterやFacebookと違ってヴィジュアルだから言語の壁を超えていける。

舞:もしTwitterだけを使ってたらと思うと……。あと、YouTubeをよく見るようになりました! 日本よりいろいろなジャンルに特化した人が多くて、ファッショナブルなYouTuberも多いです。

楓:確かに日本のYouTuberのジャンルは、おもしろ系とか日常系とか手で数えられるくらいしかないです。でも、これは単純にYouTuberの数が圧倒的に少ないから。海外だと動画編集もシンプルだったり、フリーでおしゃれな音楽があったりして、ブログの延長として始める子も多いんです。だからYouTuberのイメージも違いますし……。そういう周りの環境の差がジャンルに表れているんだと思います。

◆ニューヨークか東京かという二択以外の選択

舞:ニューヨークはフリーランスもすごく多いんですよ。

リナ:街にコワーキングスペースが多くて、多様で、今回気になりました!

舞:楓ちゃんは、自社ブランドをニューヨーク進出させていくの?

楓:まだ自分の働き方を決めていないのでわからないですけど、SNSの面で見ると海外にメリットがあるとは思います。でも、人と人の関係を考えると日本の方が丁寧で責任感があってよいような……。

舞:美味しいとこ取りだって可能だから、同時進行でコミュニティを作って、両方で仕事をするのもありだよね。

リナ:私はオフィスが作れるならニューヨークに作りたい。

舞:確かにBLASTって、新しい価値観を投げかけ続けるメディアだから、ニューヨークだと人選がより豊かになりそう。

リナ:そうなんです。ただ、ニューヨークは女性の社会活躍などの面で先進的なので、後発になるBLASTにどれだけ需要があるかは……。だから、ニューヨークと日本の間で新しい事業を生むような動きができたら面白いですね。

舞:とはいえ、ニューヨークは良いところばかりでもない! 良い面や悪い面、両方に目を向けていきたいね。

リナ:まぁ、ニューヨークも男女平等に先進的ながら、レディファーストをしないといけないっていうプレッシャーもあり、ちょっとした矛盾も感じますけどね。不思議な場所だなぁと思います。

【プロフィール】
大久保 楓/元YouTuber。現アパレルブランドLOLIPOPKNIFEクリエイティブディレクター。1999年生まれ。SNS総フォロワー数10万人を超える。18歳での起業も話題に。

石井リナ/BLAST Inc. CEO/SNSコンサルタント。1990年生まれ。『Instagramマーケティング』共著。現在は起業し、動画メディアBLASTの運営を行う。

塩谷 舞/milieu編集長。1988年生まれ。東京とニューヨークの二拠点生活中。大学在学中に『SHAKEART!』創刊。Webディレクター・PRを経てフリーランス。