昌平のンドカ ジェニファー【写真:平野貴也】

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“個性派”昌平がウインターカップ埼玉県予選決勝で悲願の初V

 高校バスケットの祭典「ウインターカップ」(全国高校バスケットボール選手権大会)埼玉県予選会は14日に最終日を迎え、女子の決勝は、昌平が61-55で山村学園を破って初の全国大会出場を決めた。身長170センチ台の選手がほとんどいない昌平は、身長で勝る相手にファイブアウト(インサイドに選手を立たせず、全員が外角からプレーするスタイル)で対抗。相手守備網の外でパスを回しながら、ゴール下へのランニングに合わせるパス、隙を見てドライブで切り込んで相手を引き付けてからボールを外へ戻すキックアウトパスなどを使って相手を翻ろう。課題としていた集中力を最後まで切らさず、悲願の初優勝を飾った。主将の大野紗佳は「身長差に対して、守備がうまくできた。攻撃は、足(フットワーク)で勝たないと勝ち目がないと思っていた」と狙いを明かした。

 多くの選手でプレータイムをシェアするのも昌平のスタイルだ。加藤祐介ヘッドコーチは「力のある3年生が多く、それぞれに個性がある。みんなで補い合いながら、フレッシュな選手を使いたいと考えている」と方針を語った。前半、後半の立ち上がりには、機動力よりパワーが持ち味のンドカ ジェニファーもプレーした。ンドカは、3兄妹の長女。長兄のンドカ ボニフェイスは、J2水戸でプレーするプロサッカー選手で、パワフルなディフェンダーだ。妹のジェニファーも自分は動かずに走ってきた相手を跳ね返してしまうほど力が強い。そのパワーに魅力を感じた昌平男子ラグビー部の指導者から女子7人制ラグビーへの挑戦を勧められ、軽いテストを受けると、9月には日本ラグビーフットボール協会が主宰する女子セブンズユースアカデミーのテスト生に選ばれて参加。今大会の直前も合宿に参加。高校卒業後は大学で7人制ラグビーに転向するという少し変わった状況にあるンドカは「まずは、ウインターカップ。転向する理由は、バスケは、ボールを持ったら3歩しか走れないけど、ラグビーなら突っ走れるから」と明るく話した。

「言わなければ分からないと周りから言われる」菅野ツインズも活躍

 ンドカが競ったジャンプボールから始まった試合は、終盤まで僅差で進んだ。昌平は、外角シュートが武器の菅野奈月、オールラウンドにプレーできる菅野沙月の「言わなければ分からないと周りから言われる」二卵性双子の姉妹も活躍。姉の菅野奈は、練習後も体育館を使える時間にシューティングをやって力を付けてきたといい「マネージャーや後輩が毎日の練習に付き合ってくれた。気持ちに応えないといけないと思っていたので良かった」と笑顔を見せた。ひざの大ケガにより1年以上プレーできなかった期間があった妹の菅野沙は、プレータイムは姉より少ないがリバウンドで体を張るなどチームに貢献。「今日はチーム全体で最後まで気持ちが切れず、みんなで戦い切れた」と手応えを語った。

 昌平は今季、関東大会予選で埼玉制覇を達成。ポテンシャルの高さを示していたが、夏のインターハイ(全国高校総体)予選では、市川越にわずか2点及ばず敗戦。主将の大野は「全国大会に行ったことがない先生を絶対に連れていこうと話していたのに、できなかった。それを決めることができて良かった。初めてで、全国がどんな舞台か分からないけど、チャレンジャーなので精一杯自分たちらしいバスケをできれば良い」と次のステージに目を向けた。個性派が「全員ガード」でプレータイムをシェアしながら戦う独特のチームが、初の全国大会に挑む。(平野 貴也 / Takaya Hirano)