黒木華

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 女優の黒木華が13日、新宿ピカデリーにて行なわれた映画『日日是好日』初日舞台あいさつに多部未華子、鶴田真由、大森立嗣監督、原作者の森下典子と共に登壇。本作で黒木は、9月15日に75歳で逝去された女優・樹木希林さんと数々のシーンで共演しているが「人間性がかっこよかった」と故人を偲んでいた。

 本作は、森下の人気エッセイを映画化。「一生をかけられるなにかを見つけたい」と思いつつも、なかなか目標が見つからない大学生の典子(黒木)が、いとこの美智子(多部)の誘いではじめた茶道を通じて、大切なものに気づいていく物語。

 樹木さんは、典子が通う茶道教室の先生・武田のおばさんを演じていたが、黒木は茶室という狭い空間のなか、二人だけの芝居を数多く経験した。「なんてありがたい時間なんだ」と思いながら演じていたという黒木は、樹木さんの魅力について「言葉では表現しづらいんです」と悩ましげな表情を浮かべつつも、樹木さんと対峙して「自分が役者さんとしてやらなければいけないことが、まだまだたくさんあるんだ」と気づかされたそう。

 そんな黒木と樹木さんのシーンを、ただただ「すごかった」と表現した多部は、樹木さんと共演する前は「恐れ多いというか、怖いイメージがあった」と素直に告白する。しかし、実際に撮影現場を共にすると「撮影中お話しする機会もいただきましたし、わたしたちを含めスタッフさんたちにかける言葉を聞いていても、すごく愛を感じる方でした」と貴重な経験ができたことに感謝していた。

 多部同様、大森監督も「ご一緒する前は怖い方だと思っていた」と樹木さんの印象を語っていたが、撮影を通じて、樹木さんがどんな思いで撮影現場に入り、役に向き合っているのかをしっかり感じ取ることに神経を集中させていたという。そして、樹木さんの佇まいや行動を目の当たりにした大森監督は「僕の財産になっていくと思います」と自身にとっても貴重な作品だったと明かした。

 茶道の経験がまったくないスタッフで製作することに森下は「すごく不安だった」と心情を吐露していたが、出来上がった作品を観て「感動した」という。大森監督は「茶道の映画ですが、お茶を通して人間を描いています。一人の女性が大人になっていく姿を、希林さんのような深い愛と優しい目でみていただければ」と客席に訴えかけていた。(取材・文:磯部正和)