1/10ルノーの完全自動運転となる電気自動車(EV)のコンセプト「EZ-ULTIMO」は、今年のショーで最も目を引いたクルマのひとつだ。未来の都市ではクルマの個人所有よりもシェアリングが重視されるようになる。PHOTOGRAPH COURTESY OF RENAULT 2/10この丸みを帯びた“ブロンズの箱”は、コンセプトカーではお決まりのことだが量産車にはほど遠い(そもそもタイヤは曲がるのか、石畳を走れるだけの車高はあるのか)。だがルノーいわく、これこそが人々がクルマに多くを求めるような「自動運転の未来」のヴィジョンを示しているのだという。特にインテリアは、木材や本革、大理石を使うことで「フランスならではのエレガンス」を体現しているのだという。PHOTOGRAPH COURTESY OF RENAULT 3/10シトロエンはルノーとは逆方向に向かっているようで、非常に現実的で落ち着いた雰囲気のEVを発表した。「DS3 CROSSBACK E-TENSE」は、ファッショナブルなクロスオーヴァータイプのSUVで、人気の小型車「DS3」のアップデート版ともいえる(写真はDS3 CROSSBACK)。このEV版は容量50kWhのバッテリー(テスラのハイエンドモデルの半分だ)を搭載しており、EU基準で186マイル(約300km)を走行できる。停止状態から時速60マイル(同約97km)までの加速は8.7秒である。こうしたスペックは購入する人にとってどうでもいいことだろうが、これから発表されるであろう価格さえ適切であれば、欧州の街では日産自動車の「リーフ」やルノーの「ZOE」といった小型EVのよきライヴァルになることだろう。PHOTOGRAPH COURTESY OF CITROËN 4/10プジョーのコンセプトカー「PEUGEOT e-LEGEND CONCEPT」は、そのセンスのよさにもかかわらず、どうやら米国からヒントを得たらしい。スタイリングには、いわゆるマッスルカーのモチーフが随所に見られる。横から見た感じはダッジ・チャレンジャーを思わせるし、逆傾斜したフロントマスクの印象はマスタングっぽい。あくまでコンセプトカーなので、もちろんEVであり自動運転の機能を備える。そして、その未来が退屈でも薄味でもないことを示すための存在でもある。PHOTOGRAPH COURTESY OF PEUGEOT 5/10プジョーが採用したレトロなモチーフは、内装からも見てとれる。シートはヴェルヴェット張りで、ディスプレイは使わないときに木目調のパネルで隠される。実際につくられるとなれば、100kWhのバッテリーを搭載して四輪駆動になる予定だ。PHOTOGRAPH COURTESY OF PEUGEOT 6/10街乗り用の小型車がなければ、欧州のモーターショーとは言えない。その典型例が、ダイムラー傘下のスマートである。こうしたコンセプトを「Smart Forease」は、EVの時代に向けて進化させた。EVの明るい未来を象徴してか、このコンセプトカーには屋根がない。PHOTOGRAPH COURTESY OF DAIMLER AG 7/10スマートは、すでに内燃機関で動くクルマの販売を米国で終えた。このForeaseが(本当に量産されて)大西洋を越えて米国にやってくることになれば、カリフォルニアのガレージに収まればしっくりくる。EVには州の優遇策があるし、きっと天候もよくてオープンカーにぴったりだろう。PHOTOGRAPH COURTESY OF DAIMLER AG 8/10日産自動車の高級ブランド「インフィニティ」は「Project Black S Concept」の開発を進めている。これはV6エンジンを搭載した「Q60」をベースにしたモデルで、 ルノーのF1チームの技術を利用したハイブリッド車だ。これによって電気による力強い加速が得られることになる。PHOTOGRAPH COURTESY OF NISSAN 9/10このクルマはハイブリッドだが、エコからはかけ離れた走りを見せる。3つのモーターが計563馬力のパワーを出し、時速60マイル(同約97km)までの加速は4秒を切るという。PHOTOGRAPH COURTESY OF NISSAN 10/10トヨタ自動車は、パリでは完全に新しいコンセプトカーの発表はしなかった。だが、多くの来場者にとっては新しい“言葉”を披露した。「Self-Charging Hybrid」と呼ばれるもので、要するにコンセントからの充電はできないが、バッテリーの電気だけでも走れるというシステムだ。これはトヨタがすでにプリウスで実用化しているもので、そこでは単に「ハイブリッド」と呼んでいる。トヨタはこの技術がまだ十分に賢くエコであることを人々に訴求すべく、ブランド刷新を図ろうとしているのだ。写真はパリで発表したカローラのワゴンタイプ「カローラ ツーリングスポーツ」。PHOTOGRAPH COURTESY OF TOYOTA

毎年この時期になると、自動車メーカーがパリに集う。そこでは「大きいことはいいことだ」の論理は影を潜め、電気こそがクルマの推進力であることが示され、ちょっと奇妙なクルマの未来が語られる。そこはいかにも、“ヨーロッパ的”な世界だ。

パリモーターショーで注目、「米国的ではない」未来を示す6台のクルマ」の写真・リンク付きの記事はこちら

世界最古の自動車見本市であるパリモーターショーは、正式には「モンディアル・ド・ロトモビル」と呼ばれる。ここが世界で最もにぎわうモーターショーだ。米国のモーターショーではピックアップトラックやSUVが人気で、長距離通勤が多いがゆえに電気自動車(EV)が大衆の選択肢には入ってこない。だがパリは、それとはまったく異なる世界観に満ちている。

欧州では昔から街なかで小回りが利く小型車が好まれ、英国やフランス、オランダでは内燃機関が終わりを迎えようとしている。つまり、上の写真でも紹介しているような一風変わったクルマたちこそが「クルマの未来」である、ということなのだ。