今井絵理子

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 今井絵理子と谷亮子は似ている。顔ではなく内面が。高い実績と高い自己評価があるゆえに、周りの大人に利用されやすいという哀しい性質のことである。

 それはよくある、「有名子役は大成しない」話にも通じる。幼い頃からちやほやされると、世間と感覚がずれ、破滅していくというジンクス。今井は子役ではないが、12歳でSPEEDとしてデビューし、華やかな目鼻立ちと歌唱力で人気をさらった。グループは10代で解散し、20歳でできちゃった婚。そして出産、離婚、SPEED再結成を経て、32歳で参議院議員に当選という、幼い頃から世間に注目され続けてきた半生だ。

 そして例の交際宣言である。「一線は越えていない」という迷言があったこともふまえ、皮肉と大バッシングを浴びた。この発言に、彼女は自己評価を見誤ったな、と言う印象を受けたのである。小さい頃からもてはやされてきたゆえの世間知らずな「おめでたさ」を感じたのだ。

今井絵理子

 今まで私は愛されてきたから、今回も堂々としていれば大丈夫。わかる人はわかってくれる、と言わんばかりの無邪気さ。それは時として驕りに転ぶ。今井は略奪愛を否定していたが、相手方は報道当初、離婚協議中とはいえ結局は不倫であったことを認めていた。構図としては小泉今日子・豊原功補の不倫宣言にも近い。違いは、小泉は不倫を認めても「さすがキョンキョン」というような賛辞さえ出たことだ。やっていることは共に不貞なので、反応の差は理不尽ではある。でも今井は、きっと小泉の時と同じような反応もあると信じて、わざわざ世間に自分の恋愛事情を発信したのだろう。政治家としては致命的な危機管理能力である。

 しかし、この甘すぎる危機管理能力が、彼女をここまで生き永らえさせてきたとも思うのだ。

踊らされ続ける今井、次の一歩は

 豊かなサービス精神とも紙一重に思える、甘すぎる危機管理能力。周囲の大人たちにとっては、さぞ手のひらのうえで踊らせやすい人間であっただろうと。えりちゃんえりちゃんと褒めながら、歌わせ、子どもの本を書かせ、再結成でテレビ出演もさせ、そして広告塔議員へ。今井本人はきっと、自分の考えですべてやってきた、と自負しているだろうが、それにしては方向性がブレすぎている。2年前の議員当選直後、池上彰のインタビューで故郷・沖縄のことを問われ、「12歳で東京に出てきたので沖縄のことはあまりよくわからず、これから勉強したい」と答えて失笑を買ったのも記憶に新しい。

 詐欺師は、お金持ちではなくおだてに弱い人を狙う、と聞いたことがある。まさに今の彼氏は詐欺罪で告発されているが、今井の根っからの「踊らされ」体質が不憫に思えるほどである。いくら沖縄アクターズスクール出身だからって。

 今回の件を受けて、今井の再選は消えるだろう。党側も、彼女の知名度を使って手に入れたかった成果は、ある程度回収したのでお役御免と思われる。今から歌手活動といっても、最盛期ほどの人気は見込めない。そんな多くのものを失った彼女を、今の彼氏は支え続けるだろうかと考えると、どうも不安が残る。

 そうなった時、次は誰が彼女を踊らせようとするかである。沖縄知事の出馬要請とかのちのち来たら、ころっといきそうだ。ただ彼女と同世代を生きた人間としては、目の前のステータスに踊らされず、今度こそ地に足がついた彼女を見てみたいなと思う。教育や障害児支援など、政治家として掲げた約束をどこまで守れるのか。あるいは後進にどんなバトンを渡していけるのか。彼女の政治家としての本当の真価は、ここで踏みとどまれるか、これからもフラフラと踊りつづけていく道を選ぶかで決まる。

 平成最後の年は、90年代アイドルの生きざまの総括のようだった。安室ちゃん引退、元モーニング娘。吉澤ひとみ逮捕、そして元SPEED今井絵理子の交際宣言。一世を風靡した女性たちが、それぞれ全く違う事情で芸能人生の区切りを迎えている。

 奇しくもSPEEDのヒット曲「Go! Go! Heaven」では「何が一番大切か 今はわからないまま踊り続けてる」という歌詞がある。そろそろ今井が一番大切なものを見極め、浮ついたステップでなく、今度こそ着実な一歩を踏み出すことを期待したい。

(冨士海ネコ)

2018年10月12日 掲載