コンビニ大手3社がそろって中間決算を発表。国内事業の環境は決して楽ではなさそうだ(編集部撮影)

10月11日、コンビニエンスストア大手3社の2018年度上期(2018年3〜8月期)決算が出そろった。

業界首位のセブン&アイ・ホールディングスは、アメリカのコンビニ事業が伸長、総合スーパー(GMS)イトーヨーカ堂の採算改善もあり、売上高にあたる営業収益は3兆3435億円(前年同期比11.9%増)、営業利益1996億円(同2.6%増)と、中間期ではいずれも過去最高を更新した。

2位のユニー・ファミリーマートホールディングスも増収増益。GMSを展開するユニーの全株をディスカウントストア大手のドン・キホーテホールディングスに譲渡するという大きなニュースもあった。

ドラッグストアなどとの競争が激化

そうした中、各社とも共通するのが、主力の国内コンビニ事業の伸び悩みだ。業界の雄であるセブンーイレブン・ジャパンでも、営業利益は1274億円と前年同期比2.5%の減益となった。既存店売上高は1.4%増となったが、2017年9月に行われた加盟店に対するチャージ料の1%減額が利益を押し下げた。


ファミリーマートの国内コンビニ事業は、ユニー傘下だったサークルKサンクスからのブランド転換店で利益が増加し、事業利益(営業利益に相当)は25.7%増の304億円となった。ただ、転換店を除いたファミリーマートの既存店売上高は0.4%減と、状況は決して楽ではない。業界3位のローソンは既存店売上高が微減となったうえ、新型POSの導入などコストが先行し、部門の営業利益は同12.4%減の287億円に沈んだ。

いまや生活インフラとして成長を続けてきたコンビニだが、取り巻く環境は厳しい。ドラッグストアなど別業態が食料品販売に注力しており、強力なライバルとなっている。特に課題なのが、客数をどう回復させるか。客数はいわば店に対する支持を測るバロメーターだが、大手3社とも既存店での客数の減少が続いている。

ただ、各社とも手をこまぬいているわけではない。客数増に向けた施策を打っている。

セブンが取り組むのは、弁当や冷凍食品などの商品開発に加えて、商品改良による賞味期限の長期化だ。セブンのおにぎりや弁当を製造する会社は、セブン専用の工場を持つ。2018年度上期にはサラダのパッケージ改良や、中華系総菜の工場を自動化して外気にふれる時間を減らすなどして、賞味期限を長くした。従来1日半だったサラダや中華系総菜の賞味期限は2日半となったという。

賞味期限が延びると加盟店側にとって廃棄リスクが軽減され、商品を発注しやすくなる。井阪隆一セブン&アイ・ホールディングス社長は「加盟店に“勇気”を促した結果、徐々に商品発注を増やしてもらえるようになった」と話す。

6月に始めたスマートフォンアプリは、ダウンロード数がすでに500万を突破。顧客の購買履歴に応じたリコメンドやクーポンの配布などで来店動機を高める。今後はイトーヨーカ堂などグループ他社への顧客誘導も強化する。

こうした取り組みの結果、セブンの客数は改善基調にあるという。四半期ベースでみると、2017年9〜11月には既存店の客数が前年超えする日数が28日だったが、2018年6〜8月には50日になった。

ローソンは「夕夜間」を強化

ローソンが打ち出すのは、「夕夜間」の強化だ。これまで米飯やサンドイッチなどの発注の締め切りは1日2回で、商品発注から納品までの時間が長く、品ぞろえが十分ではなかった。そこで発注の締め切りを1日3回と頻度を高め、納品までの時間を短くした。竹増貞信社長は「サプライチェーンを変えた6月以降、夕夜間で手応えを得ている」と話す。実際、取り組み前の2018年5月と比べて、2018年6月〜8月の期間で夕夜間の売上高は3%上昇しているという。

ファミリーマートでは、焼き鳥など中食の商品強化に加えて、コーヒーマシンを刷新しており、コーヒーの売り上げは10%以上増加している。他にもドン・キホーテとの共同店舗を6月に3店舗開店するなど、業態を超えた新たな取り組みも行っている。ドン・キホーテとの共同店は6〜8月に日販は前年比30%増、客数は10%増を記録した。

生活インフラとなったコンビニだが、2013年に大ヒットした「セブンカフェ」以降、ライフスタイルを変えるようなヒット商品が見当たらない。顧客に「この商品がある店だから行く」と思わせるような、新たな価値を提供できるかがカギを握りそうだ。