Android端末が安いのは「ユーザーが個人情報を差出すから」と専門家。一方アップルはプライバシー重視を力説

Googleは10月8日、2011年から運営してきたSNS「Google+」に最大50万人分の個人情報に影響するセキュリティ上の不具合があったことを公表し、2019年8月で一般向けGoogle+サービスを閉鎖すると発表しました。

Googleは発表にて、この不具合が発覚したのは2018年の春頃としており、外部から登録ユーザーの個人情報が参照できた可能性があることを認めています。脆弱性が見つかったのはGoogle+のユーザー情報を外部から読み出したり書き換えたりする「People API」。このAPIは、たとえばスマートフォンゲーム「Ingress」でGoogle+のユーザープロフィールをStats画面に表示させるなどに使われています。

Googleは、Google+を閉鎖する理由がユーザーのGoogle+利用率の低さのためだと主張していますが、今回脆弱性が見つかったことをきっかけに閉鎖しようという流れとなったのかもしれません。

ただ、50万人の個人情報を流出の危機にさらしておきながら、約半年間にわたってその事実を公表しないというのは、IT巨人たるGoogleにしては対応が甘かったようにも思えます。実際、Googleの発表に先駆けてこの問題を報じたWall Street Jounalなどは、こうしたGoogleの姿勢を強く批判しています。

これに対しGoogleは、Facebookから得た個人情報を流出させたCambridge Analytica(CA)の問題がその当時は紛糾しており「当局の関心に対応するため」その時点での公表を差し控えたと説明します​​​​。さらに「問題はすぐに公表するほど深刻ではなかった」と付け加えました。

Googleといえば、アップルのiPhoneが搭載するiOSと市場を2分するモバイルOS、Androidでのユーザー情報の扱いについても時折批判が沸き起こっています。


​この10月3日には、​​​​​​非営利団体Center for Democracy and Technologyのヌアラ・オコーナー CEOや、ElevatPertners共同創業者で初期のGoogleへの投資Facebbokでマーク・ザッカーバーグCEOに助言していたことで知られるロジャー・マクナミー氏らによる「Androidが安価に購入できるのはその代償としてユーザーが個人情報をすべて与えているからだ」との主張をCNBCが伝えました。

マクナミー氏は「アップルとGoogleは、ユーザー情報の保護と取り扱いに関してまったく違う考え方をしている」と指摘し、たとえばアップルが端末のユーザー認証に使う指紋認証や顔認証データをその端末内だけで処理しているのに対して、Googleはあらゆるユーザー情報をクラウドに吸い上げて処理すると説明しています。

人気が拡大しつつあるスマートスピーカーについても、マクナミー氏はユーザーの日常生活に深く関わる会話までが情報として収集される監視可能な社会に変わっていくとの見解を示しました。

奇しくもこの前日の10月2日には、アップルのティム・クックCEOがVice Newsのインタビューに応じ、アップルによるユーザーの個人情報保護姿勢を強調し「われわれはユーザーから収集する個人情報を可能な限り少なくする挑戦に取り組んでいる」と語っています。

たとえばGPSを追跡したりウェブの閲覧履歴を使ったりすれば、ユーザーに最適化した情報をタイムリーに提供でき、Siriももっと有能になるのではとの質問に対して、クックCEOは「一部企業は、サービス提供のためにすべての情報を差し出す必要があるとあなたに説明するだろうが、それを鵜呑みにしてはいけない」とし、収集された個人情報が、それ以外の目的にも利用されているであろうことを示唆しました。



もちろんアップルにしても、一切の個人情報を取得していないわけではないはずです。SiriがiPhone 4Sに提供された当初は、アップルのサーバー上で音声の解析処理をしていました。ただし、アップルは主としてハードウェアを売る企業であり、ユーザーの情報やデータに最適化した広告からの収入を軸としたビジネスモデルではありません。

アップルは2017年、自社製品がプライバシーを重視していると宣言するページを公式サイトに掲載しました。さらには銃乱射事件の犯人が所有していたiPhoneのロック解除を、個人情報保護の観点から拒否しつづけたことも話題となりました(その後出たiPhone Xに搭載するFace IDが、容疑者の顔にかざすだけで簡単に解除を許してしまうのは少々皮肉なことでしたが)。

ちなみに、GoogleやFacebookといった企業が、無償もしくは安価なサービスと引き換えに得たユーザーの情報やデータを、広告最適化以外のの製品やサービス開発に利用しているのは秘密でもないはずです。

たとえばGoogleフォトでは、利用規約でユーザーの写真をGoogleがほぼ自由に再利用できるようにしています。Gmailにしても、Googleによるメール内容のスキャンが話題になったことがありました。最近でもWall Street Journalが、Gmailがサードパーティにメール閲覧を許可していると報じています。

当然ながらこうした個人情報の再利用に関しては、ユーザーに直接的な被害が発生しないよう考慮されています。しかし今回のように個人情報が流出するかもしれないというリスクを少しでも減らしたいなら、アップルのようにプライバシー重視を打ち出す企業の製品を選べば良いでしょう。

いずれにせよ、いまやボタン一つだけのデバイスから自動車まであらゆるモノがインターネットに繋がる時代です。われわれユーザーが製品やサービスを選ぶ際ときは、自分に合ったもの、必要なものをよく吟味したいものです。