研究施設のマウス(2014年1月23日撮影、資料写真)。(c)AFP=時事/AFPBB News

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【AFP=時事】特定の遺伝子が除去されるよう改変した幹細胞を用いて、同性のマウス2匹から生存能力のある子を誕生させたとする研究結果が11日、発表された。

 現在のところ、研究の実用性はほぼ理論の範囲に限定されているが、既存の哺乳類クローン作製法の改良や、ゆくゆくは同性カップルの不妊治療などにも応用されるかもしれない。

 11日の米科学誌セル・ステムセル(Cell Stem Cell)で発表された今回の研究では、同性マウス2匹から子を誕生させる新たな手法の実践に初めて成功した。ただ、これまでにも別の複数の手法での研究は進められていた。

 今回、雌のマウス2匹から誕生した子マウスには子孫も生まれているが、雄のマウス2匹から生まれた子マウスは誕生から48時間しか生存できなかった。

 雄2匹から生まれた子は、同性生殖過程に起因する異常を排除することを目的とする遺伝子操作の複雑な処置も施されていたが、その生存期間は雌2匹から生まれた子よりも短かった。

 同性生殖は研究の道筋としては異色と思われがちだが、多くの生物種では、雌雄のペアが関与しない方法で生殖が可能となっている。

 爬虫(はちゅう)類、両生類、魚類などを含む一部生物種では、単一の親だけで生殖を行うことができるが、哺乳類の場合はこのプロセスがより複雑になる。

 論文の共同主執筆者で、中国科学院(Chinese Academy of Sciences)の周(Qi Zhou)氏は、セル・ステムセル誌に「なぜ哺乳類の生殖様式が有性生殖に限定されているのかという疑問に興味を抱いていた」と語っている。

 この研究分野は倫理的にセンシティブだ。遺伝子編集と新しい種類の生殖方法に関する過去の研究でも、人に適用された場合の影響をめぐって懸念が噴出した。

■「刷り込み領域」

 哺乳類はほとんどの場合、生殖過程で母親と父親からそれぞれ1組ずつ、2組の遺伝子を受け継ぐ。

 だが「刷り込み遺伝子」として知られるごく一部の遺伝子は一方の親からのみ受け継がれる。

 こうした遺伝子に関しては、もう一方の親からもたらされる一連の遺伝子が効果的に不活性化され、発現が制御される。これが正しく機能しないと、子は先天異常を発症したり死に至ったりする恐れがある。

 しかし、同性の両親からの遺伝物質を混ぜ合わせることにより、子には2組の「刷り込み遺伝子」が受け継がれるリスクがある。

 そのため今回の研究では「精子や卵子の前駆体である始原生殖細胞」に似た半数体胚性幹細胞(ES細胞)を用いたと、論文の共同主執筆者の胡宝洋(Baoyang Hu)氏は説明する。

 次に、通常の生殖の「発現制御」プロセスを効果的に再現するために、半数体ES細胞の遺伝子構成を改変して「刷り込み領域」を取り除いた。

 雌マウスの場合、三つの「刷り込み領域」を削除した細胞をもう一方のマウスの卵子に注入した。

 雄マウスの場合、七つの「刷り込み領域」を削除した細胞を、もう一方の「父親」マウスの精子とともにマウス卵子に注入した。マウス卵子の細胞核は除去されているため、雌の遺伝物質は残っていない。この受精卵は代理母に移植された。

 研究チームは今回、雌マウスのDNA2組と遺伝子操作技術を用いて、210個の胚から29匹の子マウスを誕生させた。子マウスは成体になるまで生存し、正常に繁殖した。

 一方、雄の2組の遺伝物質から誕生させたマウスは48時間しか生存できなかった。研究チームはこの生殖方法が正しく機能しなかった理由についてさらに研究を重ねる予定だ。
【翻訳編集】AFPBB News