日本代表の大迫勇也【写真:Getty Images】

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森保ジャパン、パナマ戦へ

 日本代表は12日、パナマ代表との国際親善試合に臨む。今回の合宿からロシアワールドカップに出場した従来の主力級が続々合流した中で、大迫勇也の存在が次世代を担うアタッカーたちの魅力とどんな化学反応を見せるか。「半端ない」エースストライカーを生かせる攻撃陣の組み合わせとは?(取材・文:元川悦子)

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 ロシアワールドカップでベスト16進出に貢献した主力と新世代の融合の第一歩となるパナマ戦が12日に行われる。

 8日から現地で合宿を張っている日本代表は試合前日の11日夕方、冷たい雨の降りしきる新潟・デンカビッグスワンスタジアムで冒頭15分間以外は非公開の最終調整を実施。4分半と長かった冒頭ミーティングでは、森保一監督に新キャプテンに指名された吉田麻也が円陣の中で挨拶する一幕も見られた。

 4年後のカタール大会で4度目のワールドカップ出場を目指す長友佑都も「長谷部(誠)の後のキャプテンはなかなか大変でしょうけど、彼なりのキャプテンシーを見せてほしい。僕もできる限りサポートしていきたい」と盟友にエールを送った。

 その吉田を筆頭に、ロシアワールドカップ組が何人先発するかがパナマ戦の1つの注目点。今回は9月のコスタリカ戦で出番の少なかった選手を優先的に起用するという見方もあるため、GK東口順昭やDF槙野智章、MF遠藤航あたりは温存されるかもしれない。

 試合日程の関係で合流が遅れた長友や酒井宏樹も次戦要員と位置づけられる可能性が少なからずある。そういう中でも、初日から合宿に参加している絶対的ストライカー、大迫勇也はスタメンの有力候補と目される。森保監督も堂安律や伊東純也らフレッシュなアタッカー陣と彼を組み合わせを見てみたい気持ちは強いはずだ。

 新体制の初陣で鮮烈な印象を残した新背番号10・中島翔哉も「(大迫は)経験があって、前でキープもできますし、ゴール前での駆け引きも上手だと思いますし、ポルチィモネンセでにもジャクソン(・マルティネス)とかそういう選手がいて、自分との相性がすごくい。やりやすいんじゃないかと思います」と今年3月のマリ戦以来の共演を心待ちにしている。

 中島はA代表デビュー戦だったその試合で代表初ゴールも奪っている。それも大迫が前線で体を張ってボールを収める仕事を精力的にこなしてくれたから。その時のいい感覚が今も残っているのは確かだろう。

「大迫半端ないって」の再現を

 振り返ってみれば、ロシアワールドカップアジア最終予選中盤以降、大迫の存在価値は常に圧倒的だった。2〜3人の敵に囲まれても落ち着いてボールをキープできる卓越した技術に加え、ロシアワールドカップ本大会では初戦のコロンビア戦で1ゴール1アシストと爆発。勝利を引き寄せる明確な結果を出せるセンターFWに君臨した。

「大迫半端ないって」が流行語になり、今月のシカゴマラソンで日本人初の2時間5分台を出した同じ苗字の大迫傑に「大迫選手から刺激を受けた」と言わしめたところが、この男のインパクトの大きさを物語っている。

 その後、同じ大舞台に参戦した岡崎慎司と武藤嘉紀の両FWが所属クラブで出番を思うように増やせず苦しむ中、大迫は新天地ブレーメンでフロリアン・コーフェルト監督から瞬く間に信頼を勝ち取り、開幕から7試合中6試合で先発。ここまで1ゴールを奪う働きを見せている。

「僕も周りに合わせようとしているし、みんなも合わせようとしてくれてるし、(新たな)チームがすごく温かく迎え入れてくれたのが有難かった。ただ正直言えば、僕も(ワールドカップ後の)2週間はすごく苦労しました。ワールドカップの後には何か目に見えないものがあると感じた。そこからうまく切り替えて、乗り越えることができたので、あとはもっともっと目に見える結果を出していくだけですね」とエースストライカーは、フレッシュな状態を取り戻して森保ジャパンに合流している。

 今回のFW陣は追加招集の川又堅碁と北川航也という実績不足の2人が名を連ねているだけに、大迫に託されるものは非常に大きい。彼がロシアワールドカップの時のように最前線にしっかりと陣取り、圧巻のパフォーマンスを示すことで、攻撃陣が活性化されるのは間違いない。

大迫勇也がもたらす化学反応

 むしろ、その大迫に合うか合わないかで2列目のアタッカー陣の絞り込みがなされるという見方すらある。ロシアでともに戦った原口元気やヴァイッド・ハリルホジッチ監督時代に同じピッチに立った中島はまだいいが、堂安や伊東、南野拓実、北川らは全くと言っていいほど一緒にプレーした経験がない。

 そこで大迫がそれぞれの良さを引き出すような気配りと大胆さを示せれば、日本の攻撃に新たな色が生まれる。「(若い選手たちは)みんないいものを持っている。同じプロのサッカー選手だし、日本人だから、すごくやりやすさはあるんじゃないですか」と大迫本人は楽観的だ。

 例えば、堂安とであれば、高度な技術と創造性を引き出せるだろうし、伊東とのコンビなら彼の矢のようなスピードを利用して自分がフリーになることもできるだろう。南野や北川と縦関係の2トップというのもの興味深い。若い才能を生かすか殺すかは大迫勇也の一挙手一投足にかかっているのだ。

 本人も年下のメンバーに自分からアクションを起こして、チームを引っ張ろうとしている。本田圭佑らがいた頃は口数の少なかった大迫が「大人しい選手が多いので、そこまで会話は多くないです」というコメントを残しているのも、新戦力に世界基準を伝え、ワールドカップベスト8の壁を破るための機運を高めようという姿勢の表れだ。

 そうやって内面的な変化を見せているのも森保監督には心強い点。これまでの大迫勇也とは一味違った仕事ぶりが今回は見られるはずだ。

 大迫がけん引する攻撃陣がどのようなバリエーションをもたらすのか。そこはパナマ戦で第一にチェックすべき点と言っても過言ではない。4年ぶりとなる新潟での国際Aマッチで「半端ない点取屋」の底力を改めて日本中の人々に示し、日本代表の存在価値を今一度、高めてもらいたい。

(取材・文:元川悦子)

text by 元川悦子