MRI検査を受けるライター

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 厚生労働省が発表した「平成29(2017)年人口動態統計の概況」によると、日本人の死因第1位は「悪性新生物(がん)」、第2位が「心疾患(心臓)」、そして第3位が「脳血管疾患(脳卒中)」。

【写真】ライターのMRI検査結果を大公開!

「脳卒中」とは、脳の血管が詰まる「脳梗塞」、脳の血管が破れて出血する「脳出血」、血管にできたこぶ(脳動脈瘤)が破裂して出血する「くも膜下出血」などの総称だ。脳卒中は無自覚のうちに突然発症することが多く、たとえ一命を取りとめても、後遺症が残って要介護となりやすい怖い病気。

 そんな脳卒中を早期発見するための検診が、1988年ごろから始められた「脳ドック」だ。

「当初は、“頭痛が気になる”“両親が脳梗塞を患ったから自分も心配だ”などが脳ドック受診の主な動機でした。最近はそのニーズが変わってきました」

 と、教えてくれたのは脳神経外科医で新百合ヶ丘総合病院の笹沼仁一院長。

 65歳以上の人口が全人口の2割以上を占める超高齢化社会の現在では、認知症への不安から、物忘れや脳の萎縮などを気にして、40代以降の働き盛り、子育て世代は男女問わず脳ドックを受診する人が増えたという。

 そうした背景を受けて同病院では、脳の加齢を数値化した脳年齢を提示する「脳年齢」脳ドックを、全国に先駆けて今年8月から開始した。東北大学加齢医学研究所で構築してきた大規模脳画像データベースに基づく解析技術を導入した画期的なものだそう。

 脳年齢が気になる世代の40歳を過ぎたころから物の名前がすぐに出てこなくなり、家族に日々“あれ、それ、これ”と指示語を連発している43歳ライターが、初めての脳ドックで脳年齢を受診してみた。

 通常、同病院での「脳年齢」脳ドックは、脳の断層写真からがんを早期に発見する「PET-CTがんドック」とセット(11万円税別)で行うが、今回は特別に「脳年齢」脳ドックのみ体験させてもらった。

 まずは検査着に着替えて、タブレットで最新の「認知力テスト」を受ける。出てきた数字を暗記して答えたり2ケタの数字の引き算をしたり、出題の立体と同じ形の立体を答えるなどのテストを行い、約20分で終了。これは東北大学加齢医学研究所での研究成果を用いて独自に考案したテストで、通常の認知症テストよりも、やや難易度が高いとのこと。

 その後、MRI検査へ。検査技師に「金属は身につけていませんか?」「閉所恐怖症ではありませんか?」と確認され、耳栓を装着してから、検査台に横たわりドーム状の検査機の中へ。検査が開始されると、耳栓をしていてもかなりの音量で「ビービービー」「ゴトゴトゴト」と工事現場のような音が聞こえてきた。

 そもそもMRI検査とはなにか。CTと同様に身体の断層画像を撮影するのだが、CT(コンピューター断層撮影)はX線を使って画像を撮るのに対し、MRI(磁気共鳴画像診断)は大きな磁石による強い磁場と、FMラジオに使われているような電波を使って画像を撮る点が異なる。

 そのためMRIは放射線による被ばくがなく、安心して検査を受けられる。MRIは磁場と電波を使用して、人体の大部分を占める水分(主に水素原子)の密度を測定する。大きな磁石の中にあるコイルに電流を流すと強い磁力が生じコイルが振動する。この振動が大きな音となって聞こえる。スピーカーと同じ原理だそう。

 約30分で撮影が終了すると、いよいよ検査結果を聞くために診察室に移動する。

ドキドキの結果は

 脳年齢は先ほど受けた「認知力テスト」の結果と脳のMRI画像を、AI(人工知能)によって過去の大量データと照合し、平均値と比べて、何歳相当の脳であるかを算出する。

 気になる結果はなんと44歳! 3か月後には誕生日を迎えるので、ほぼ年相応でひと安心。総合評価もA〜FのうちBで「健康的な脳の状態を維持できており、特に問題なし」とのこと。C〜Fの場合は、定期的な受診が望ましいそうだ。

 さらに、脳のMRI画像を見ながら脳の状態を笹沼先生が詳しく解説してくれた。

「顔の感覚を脳に伝える三叉神経、聴覚と平衡覚を脳に伝える聴神経など神経の周辺や、内分泌器官である脳下垂体には腫瘍ができやすいのでチェックします。また、両目の奥や両こめかみの奥など、くも膜下出血を引き起こす脳動脈瘤ができやすい部位も調べます。

 血管の幅は約3〜4ミリぐらいなので、それより大きい5ミリ以上の動脈瘤があると危険です。高血圧、高脂血症、糖尿病などの生活習慣病があると、動脈硬化が進み、脳の画像上に変化が出るので要注意です。

 あとは、脳へ血液を供給する頸動脈も見ます。頸動脈が脳を養っている内頸動脈と頭の皮膚などを養っている外頸動脈に分かれる分起点にコレステロールが沈着すると血管の壁が厚くなって狭窄(きょうさく)し、脳梗塞を引き起こします。これらと頸椎を走っている椎骨動脈をいろいろな角度から見て、狭窄がないか調べます」

 通常の脳ドックでは脳の血管系の疾患を中心的に検査するものの、「脳年齢」脳ドックでは脳の形態を解析することで海馬に萎縮がないかどうかを調べることができる。

海馬が萎縮すると認知症のリスクが高まる

「MRI画像によって前頭葉、後頭葉に萎縮がないかどうかを見るのと同時に、海馬の萎縮も確認します。記憶をつかさどる海馬が萎縮すると認知症になるリスクが高まるからです。

 脳の萎縮の原因のひとつとなるのがアルコールの過剰摂取。今年2月に発表されたフランスの調査結果では、アルコール依存症の人は、そうでない人の3倍以上も認知症になりやすいことが判明しています。厚生労働省では、1週間あたりの飲酒量がビール6本(1本あたり350ミリリットル)以上だと、飲酒による認知症リスクが高まるとしています。

 通常のアルツハイマー型の認知症が徐々に進行するのに対し、アルコール性認知症は初期症状が見られないまま、かなり症状が進んだ状態で突然、発症することが多いので、注意が必要です」(笹沼先生、以下同)

 また、高血圧、高脂血症、糖尿病などの生活習慣病も認知症の原因となるので要注意だ。

「健康診断でも血液や肝機能などに異常が出始めるのは、やはり40代から。40年も生きていれば、どうしても生活習慣病など身体に不調が出てきます。脳も身体と同様なので40代で1度「脳年齢」脳ドックを受診することをおすすめします。

 特に異常がなければ毎年受けなくても、3年、5年などに区切り、気になる症状が出たときに受診すればいいでしょう。過剰な検査、検診を批判する声もありますが、実際に早期にがんや動脈瘤を発見して助かった例が多くあります。すべての検診をやみくもに受けるのではなく、遺伝や自分の体質によって、気になるものを受ければいいと思います」

 認知症にならないためには、生活習慣病の予防と、1日30分程度のウォーキングなど適度な運動が効果的だという。

 厚生省は、2025年には65歳以上の約5人に1人が認知症と推計し、他人事ではいられない。人生100年時代に健康でいるためにも、自分の脳内を知っておくことは大切なことなのかもしれない。

(取材・文/小山内美貴子)

あなたの脳年齢はいくつ? 簡易チェック

1つでもあてはまったら脳年齢脳ドックを受けてみましょう!

(1)同じことをしているのに明らかに前より時間がかかるようになった
(2)昨日、食べたメニューが思いせせない
(3)携帯や財布をどこに置いたのかを忘れるようになった
(4)待ち合わせや約束の時間を間違えるようになった
(5)テレビや本などに集中できない

《PRIFOLE》
笹沼 仁一(ささぬま・じんいち) ◎日本脳神経外科学会専門医、日本脳卒中学会専門医。南東北医療クリニックや東京クリニックなど、各地の南東北グループ主要施設、関連施設の立ち上げを担う。2012年から新百合ヶ丘総合病院院長に。

《問い合わせ》
新百合ヶ丘総合病院/電話:044-322-9991(代表)