東野幸治

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 東野幸治が仲間たちの秘話をつづる連載「この素晴らしき世界」。今週のタイトルは「度が過ぎる芸人、若井おさむ(2)」。お酒を飲まないと眠れない若井さん。その驚きの酒量は……

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 何でも度が過ぎる芸人、若井おさむ君の話の続きです。

 お酒を飲まないと眠れないという若井君の悩みに、番組内で坂上忍さんが「寝酒で眠れるならいいんじゃない」とやさしく答えてくれたところ、若井君は寝酒の量について「だいたい缶ビール6本とワイン1本を毎日」と明かしました。明らかに飲み過ぎです。

 さらに若井君はある写真を見せてくれました。先輩と飲んだ夜、気分が良くて歩いて帰る途中、躓いてコケてしまった時のだというそれは、左目を中心に赤くパンパンに腫れ上がった若井君の顔でした。「えっ!」という坂上さんの絶叫がスタジオに響き渡り……。

東野幸治

 明らかに躓いただけのケガの状態ではなく、「酔っ払って忘れているだけで、誰かに殴られたんじゃないの?」と思ったのですが、言い出せる雰囲気ではありませんでした。酒量もケガも、度が過ぎます。

 若井君は更に近況報告をしてくれました。

「給料が減ったのでワンルームの安い部屋に引っ越したんです。狭くもなったから、飾っていた200体くらいのガンダムのフィギュアの8割ぐらい捨てました」

「ガンダム芸人としてそれは一番捨てたらアカンやろ!」と言おうと思いましたが、まっすぐな目で話す若井君を前に、何も言えませんでした。物の捨て方も度が過ぎます。

 そして残った2割のガンダムフィギュアをどうしたかというと……。

「離婚の原因は僕にありました。妻を幸せにできなかったことを日々悔やんでいて、何か拝むものがほしくて」……嫌な予感しかしません。

「残ったフィギュアの中でジオン軍のを、金色の仏像に改造して拝んでいるんです」

 さすがに私も、「ジオン軍でも地球防衛軍でもどっちでもええわ!」と、とりあえず早口でツッコミました。でも大丈夫、まだ坂上さんが笑っています。

 話はまだ続いて、フィギュアを大量処分後、あるテレビ番組のスタッフから「フィギュアがいっぱいある自宅にロケに行きたい」と連絡があったそうです。若井君が「捨ててしまった」と言うと、そのスタッフは彼の性格をよく知っているので、「身辺の整理をしてるの? 自殺なんて考えてないよね?」と心配してくれたといいます。

「それは絶対にないです!」

 若井君は強く否定しましたが我々もちょっと心配になり、「でも本当に自殺を考えた瞬間もあったんじゃないの?」と聞いてみると、「本当です。自殺なんか考えません!」と再度キッパリと否定しました。その様子に私は、「それならいいけど、なぜそこまでキッパリ言えるの?」とちょっとしつこく質問を続けたら、「僕は家の冷蔵庫の扉に『自殺は絶対しない』と書いて貼っているんです!」と胸を張って誇らしげに言い切りました。もはや笑うしかありませんでした。

 もちろん自殺はしたらいけませんけど、冷蔵庫の扉に貼りますか? それ以前に「自殺は絶対にしない」ってあえて紙に書きますか? ということは自殺を考えたことあるってこと? 色んな疑問が頭の中で駆け巡りますが、その状況で私に出来るのは反射的に笑うことと「他に冷蔵庫になんて書いて貼ってるの?」と若井君に聞くことです。

「『犯罪は絶対にしない!』って貼っています!」

 その日一番の笑顔で、元気に答えてくれました。

 今年の特集では、若井君からどんな話が飛び出すのか……。すでに度が過ぎる期待をしている私がいます。

東野幸治(ひがしの・こうじ)
1967年生まれ。兵庫県出身。東西問わずテレビを中心に活躍中。著書に『泥の家族』『この間。』がある。

「週刊新潮」2018年10月4日号 掲載