静岡市唯一のミニシアターである静岡シネ・ギャラリー=静岡市葵区(吉沢智美撮影)

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 静岡市葵区御幸町、JR静岡駅からもほど近い繁華街の一角にレンガ造りの建物がひっそりとたたずむ。

 この建物の中に、市内唯一の単館系映画を上演する映画館「静岡シネ・ギャラリー」がある。会員数が全国五指に入るという、人気のミニシアターを運営する支配人には別の顔があった。

 平成15年に開館した静岡シネ・ギャラリー。多目的ホールの「サールナートホール」3階にあり、50席と55席の2スクリーンを有している。質の高いラインアップなどから人気を呼び、会員数は約4500人。全国のミニシアターでも5本の指に入るレベルだという。現在は映画館として認知度が高まったが、支配人によると、当初は「文化の発祥地にしようと思ってジャズや落語などをやっていて、その合間でときどき映画を上映していた」のだという。

人が集まる場所に

 サールナートホールが開館したのは7年のこと。仏陀が初めて説法をした場所であるサールナートから名前を取った。建物は、初の説法を記念に作られた仏塔「ダメークの塔」をモチーフに建てられた。

 なぜ映画館の入る建物の名が仏陀に由来するのか。その答えは、支配人を務めているのが建物の向かいにある宝泰寺の住職、藤原靖爾さん(73)だからだ。

 「全国を歩いてきたが、静岡市はゆっくりできる場所がない」(藤原さん)との思いから、ホールでは当初、人が集まるさまざまなイベントを催してきた。ところが、開館から10年ほどたったころから客足が伸び悩み、徐々に赤字が続くようになったという。特別な行事のとき以外は閉館することも考えたが、空調などのメンテナンスを維持しなければならない関係もあり、「とにかく毎日ホールに人を呼べるものとして思いついたのが映画館だった」と藤原さんは明かす。

 予算もあまりなかったことから、閉館となった映画館から映写機や座席を譲り受けた。25年にデジタルシネマ設備を導入するまで、修理を繰り返しながらも、ずっと譲り受けた映写機を大切に使用し続けていたという。上映する映画について藤原さんは「“生きる”“命”がテーマ」と言い切る。メジャー、マイナーを含め毎年1200本ほどの新作映画が世に出回り、映画配給会社から配られるDVDで新作映画をチェックしなければならない。副支配人の川口澄生さんは「毎日1本は見ている」というが、藤原さんは住職としての仕事もあるため「忙しくてなかなか(DVDを)見られない」と申し訳なさそうに話す。

自らの引退見据え

 11月には74歳となる藤原さん。住職として、支配人として息つく暇もないが「若い人についていけないと感じたときに辞めないといけないと思う」と自らの引退を考える。引退後の仕事は娘婿に任せるつもりだが、「年を取ると若い人が物足りなく見える。ということは、自分もおやじからは『大丈夫か』と思われていたのかな」と笑う。それでも、年齢、住職も兼ねたキャリアを重ねるにつれ、映画のセレクトには一層力が入る。しばらくは藤原さんこだわりの映画を静岡の地で楽しむことができそうだ。(吉沢智美)