ファッション通販サイト「ZOZO TOWN」を運営するZOZOの前澤友作社長が、10月9日、都内で会見を開いた。内容は、アメリカのスペースX社でイーロン・マスク氏と発表した、月世界旅行「dearMoon」プロジェクトに関するものだ。

 前澤氏は冒頭、大企業を経営しながら、どうやって月へのプロジェクトと両立させるのか聞かれ、「私たちは6時間労働制を取り入れている。私自身も会社に朝から晩までいるというワークスタイルは取っていない。会社には週3〜4日ぐらい。しかも、たいてい6時間で帰っている」と発言。

 仕事以外の空いた時間を使って、趣味のアートや宇宙プロジェクトの勉強を進めていると説明した。

 前澤氏は、月へ連れて行くメンバーを画家、映画監督、ファッションデザイナー、ミュージシャンなどから選ぶと発表しているが、選考基準についてはこう話す。

「僕の夢が世界平和ですので、『世界をなんらかの形で自分のクリエーション(作品)でよくしたい』という想いの強い方を探したい。あと、自分がその方の作品が好きというのも大事」
 

 続けて、「なるべくワールドワイドにいろんな地域のアーティストをお連れしたい。アーティストの皆さんなので、突拍子もないことを言う方もきっといるでしょう。そういうのを『どうか喧嘩しないでね』となだめすかすのも僕の役割。仲良く楽しい旅にしたい」と決意表明した。ただ、現状ではまだ誰にも声をかけていないという。

 さらに交際中の女優・剛力彩芽を月へ連れて行く可能性があるのか聞かれ、「本人(剛力)は当然このプロジェクトを知っていますし、大変興味を持っている。ぶっちゃけ『私も行きたいな』と言っています」と応じる。

 とはいえ、今回のプロジェクトはアーティストを月に連れて行くのが目的。「ただ楽しんで行く旅行とはやっぱり違う」とし、剛力になんらかの役割やミッションがあり、かつそれをすべての船員たちが受け入れてくれれば、連れていけると思っているようだ。

「極めて真面目に私たちはやりたいなと思っている」と語った前澤氏だが、プロジェクトについては4〜5年前から考えていたという。実際、最近もその兆候があったと経済ジャーナリストの松崎隆司氏が語る。 

「前澤社長は、所有していた自社株を大量に売却していたのです。600万株を売却した5月は、株価は4000円弱だったので、200億円以上を手にしたと思われます」

 外資系証券会社の幹部が、こう補足する。

「今回の発表の背景には、ZOZOの前澤氏と、スペースXのマスク氏の両者の利害の一致がある。まず、マスク氏にはCEOを務める電気自動車メーカー・テスラ社の経営危機がある。

 また、スペースXは一昨年の爆発事故もあり、可能なら新しい資金が欲しい。そこに“お客”となる前澤氏は渡りに船だった。一方のZOZOにすれば、800億円とも1000億円ともいわれる乗船料が、海外を含めた広告費と割り切れば安い」

 なぜ、多額の広告費を容認できるのか。全国紙経済部記者が解説する。

「ZOZOは、プライベートブランド(PB)の立ち上げを『第二の創業』と位置づけています。そのカギを握る、自宅で体型データを採寸できる『ゾゾスーツ』の無料配布を昨年、発表している。ですが、技術的な問題で量産に失敗し、配送の遅延が相次いだのです」

 直近の4〜6月期の連結営業利益は、このPB関連費用がかさみ、前年同期比で26%減。急成長に陰りが……。

「初代に続いて、第2弾を展開していますが、こちらは採寸後の完成品の配送が遅れています。このPBが成功するか、海外の市場を開拓できるかが目下、ZOZO最大の課題。

 今回の月旅行は『個人のプロジェクト』と断わりつつ、会社からもリリースが出ているように、結果として、会社にとって大きな広告・宣伝効果があるのです」

 ZOZOはこう回答した。 

「企業理念である『世界中をカッコよく、世界中に笑顔を。』という趣旨に合致したプロジェクトだと思いますので、会社としても温かく見守りたい」

 フライトは5年後。そのとき「時代の寵児」は、その恋人はーー。