炎上を気にせず、面白いと思うことを叫ぶ! 三木 聡監督、批判を恐れる社会に物申す

「企画ってのは、いろんな形で頓挫するわけですよ」――。平然と三木 聡監督は言う。ゼロから練り上げた企画にNOを突きつけられるのがつらくないわけがない。だが、そこでこの男はあきらめない。手を変え品を変え、何とかして企画を通す。最初に考えついたときから10年近くが経過し、ようやく完成にこぎつけたのが映画『音量を上げろタコ!なに歌ってんのか全然わかんねぇんだよ!!』だ。このタイトルは、監督が自分自身に向けて、また現代社会に向けて投げかけたいメッセージでもある。

撮影/川野結李歌 取材・文/黒豆直樹 制作/iD inc.

「映画『音量を上げろタコ!なに歌ってんのか全然わかんねぇんだよ!!』」特集一覧

「やらない理由を探すなよ」作品に詰め込んだ思い

“ハイテンション・ロック・コメディ”と銘打たれた本作ですが、禁断の声帯ドーピングで驚異の歌声を手に入れた、世界的ロックスターであるシン(阿部サダヲ)という奇想天外な主人公はどのように生まれたんでしょうか?
企画としてのスタートは2006年頃かな? ある女性のボイストレーナーと話してる中で「ロックミュージシャンってあんなデカい声で歌うの恥ずかしくないんですか?」、「そんな客観性があったら歌わないわよ」なんて会話を繰り広げまして。
「思いが強いほど、大きな声で伝えようとする」というのが人間のベースとしてあるんじゃないかと。それとオリンピックなどでのドーピング問題を組み合わせて、声帯ドーピングでデカい声を出すミュージシャンがいたら面白いんじゃないかと考えついたんです。
そんなシンが出会うのが、彼とは対照的に声が小さすぎるせいでバンドをクビになってしまう、売れないストリートミュージシャンのふうか(吉岡里帆)です。
シンが誰と対峙したら面白いか? 逆に声が小さいヤツ、「声、小さくない?」っていつも言われるようなヤツと出会ったら面白いなと。それが最初に生まれた企画の“種”ですね。
シンを演じた阿部サダヲさん、ふうかを演じた吉岡里帆さん、どちらも三木監督の作品への出演は初めてです。
シンという役は、阿部さんにしかできないでしょうって。プロデューサーと配役のことを話し始めて、「阿部さんしかいないんじゃない?」って7秒くらいで結論に至りました(笑)。
ふうかに関しては、一番大事なのは、シンやクセの強い面々に無防備な状態で立ち向かっていかないといけないということ。ある意味、素っ裸で立つくらいの勇気や芯の強さが必要で、何人か候補が挙がったんですけど、吉岡くんは柔らかく立ち向かうことも強くいることもできるだろうと。
千葉雄大さんが演じたシンの担当A&R・坂口も非常に印象的です。ピザを頭にぶちまけられたり、社長役の田中哲司さんと抱き合ったり、これまで見たことがないような姿を見ることができました。
千葉くんの演じた坂口は、物語の中でいちばん変化する役柄でもあるんです。ヘタレキャラからだんだんと裏の顔や手練手管を見せたり、田中さんと全裸で抱き合ったり(笑)、いろんなシーンでさまざまなリアクションが求められる役。

多くの芝居を構築する技術が必要だけど、千葉くんはまさに、いろんなことができそうだと。でも、実際にここまでやるとは予想外でした。シーンごとに「こういうのどうでしょう?」って、あの柔らかい物腰で面白い提案をどんどんしてくれるんです。
三木監督は、従来のイメージを壊したり、新たな一面を引き出してみようという意識をお持ちだったんでしょうか?
いまそうやって聞かれると「たぶん、あったんでしょう」と結果論で言えますけどね。走ってるときは客観性がないので「何となく」「たぶんイケる」という“勘”みたいなもので突き進んでるんです。
計算しているというよりも無意識に?
「たぶん」の積み重ねなんですよ。まあ、現場ではさも確信があるかのように立ってるんですけど(笑)。いまは、「これをやったらどうなるか?」「これを描いたらネットでどんな反応をされるか?」と予想しながら行動を決めていくような風潮があるじゃないですか?
反響を気にして作品を作る風潮ですね。
この映画でやってることって、予想がつかないようなことばかりだし、僕らスタッフも俳優陣も「これをやったらどう思われるか?」なんて気にしてないし、そんな余裕もなかった。
炎上なんて気にせずにものを作る精神がロックだし、自分が面白いと思うことを叫んでみようというのはありますね。
これまでの作品以上に三木監督のメッセージがちりばめられているようにも感じました。
いま言ったような、“結果”をベースに考えがちな風潮への不満を無意識に詰め込んでるところもあるし、あとは「やらない理由を探すなよ」ということですかね?
シンが、一歩を踏み出そうとしないふうかに投げかける言葉ですね。
映画学校の講義とかに行くと「脚本を書きたいと思ってる」という若い子がいっぱいいて、こっちは「書けばいいじゃん」って言うんだけど、「なかなかテーマが」とか言うんですよ。それはやらない理由を見つけてるだけでしょって。

最後の最後にできあがった作品を見て「あぁ俺って、やらない理由を探すなよと伝えたかったのか?」と気づかされたりした部分でもあるんだけど。
シンが、バイきんぐの小峠英二さん演じるストリートミュージシャンに向かって「(ロックを気取っているけど)曲順、決めてんじゃねーか!」と毒づくシーンも心に響きました。
こないだカナダの映画祭でも上映したんですけど、カナダ人も笑ってました(笑)。どんな荒くれ者も、セットリストを決めてやってるんじゃないかと。それはたしかに、前から映画で描いてみたいワードでしたね。

売れるものばかり作る産業は、いずれ衰退していく

こうしたとがった企画であればあるほど、実現が難しくなります。とくに現在、オリジナル脚本の映画が公開までこぎつけるのは至難の業とも言われています。
実際、この話も早い段階で脚本化されてるんですけど、まあ企画ってのはいろんな形で頓挫するわけです。出資までこぎつけたかと思ったら、社会情勢が変化して「いや、ちょっとこういう企画にはお金は出せません」って(苦笑)。

そうやって紆余曲折を経てやっとね。ただ、それこそデカい声で叫び続けていれば、騙されてくださる人たちもいるんですね(笑)。
オリジナル作品では、ゼロから物語を作り上げるアーティストとしての気質だけでなく、企画を通して現場をまとめるマネジメント能力も必要だと思います。
僕自身は決して芸術家だとは思ってないけど、企画を通すという点に関しては、プロデューサーが担ってくれる部分が大きいですよね。僕の知らないところでいろんな偉い人の説得もしてくれてるんでしょうし。

委員会とか出資者を前にして「このシーン、何で地蔵が出てくるの?」と聞かれて、「いや、いま地蔵がトレンディなんですよ」とか言ってくれていたり(笑)。そういう意味で、僕はいろんな人と“共犯関係”を作っていくのが大事なのかなと思います。
共犯関係?
プロデューサーを始め、スタッフ、俳優陣、出資者とね。人気原作があるわけでもないこういう映画は、とくにそうですよ。もちろん、人気の小説があって、それをもとに関係を作っていくのもいいと思います。

でも、別のやり方もあったほうが“豊か”だと思うんですよね。やはり、売れるものに専念して作っていく産業はいずれ衰退していくと思います。どこかに「よくわかんないもの」を受け止める余白を残しとくほうが強いでしょ…って。「そりゃ、あんたの勝手な言い分だ」って言われそうですけど(笑)。

総力を挙げてバカバカしいことに挑めるのは、映画が一番

ご自身の作風を「不条理」や「ナンセンス」と言われることに関しては、どう受け止めていますか?
まあ、そういうものなのかなって。結局、カテゴライズがないと、受け取る側も受け取りようがないんでしょうね。『時効警察』をやり始めたときも、勝手に「脱力系」と言ってみたら「あぁ、そういうことね」ってなんか理解してもらえましたし(笑)。

そういうカテゴライズが重荷や十字架になっていく場合もあるけど、あながち否定すべきでもないのかなって思ってます。ただ、僕にとってのリアリティはこっちなんですよね。
ナンセンスなものを作っている意識はなく、むしろ“リアル”であると?
結局、映画って自分なりの何らかのリアリティを形にしていく作業なんですよ。たとえば、喫茶店で女と男が別れ話をしているときにウェイトレスが水をこぼしたら、俺はそっちが気になっちゃう。でも、「いやいや! 別れ話をしてるときにそんなの気にならないだろ?」という人もいるでしょうし、リアリティの置き方はそれぞれ違うわけで。
監督の描く“笑い”は独特だと評されることが多いですが…。
自分の感性を言葉にするのは難しいけど…「これが面白いと思っていたけど、他の人は違った」という部分に自分は興味を持って、面白がっているのかな?と思いますね。
“笑い”のセンスについて、影響を受けた存在は?
映画で言うとデヴィッド・リンチにコーエン兄弟のコメディセンスには影響を受けたし、それこそ溝口健二や黒澤 明、ウォシャウスキー姉妹に至るまで、自分が好きな映画監督は、どこかそういうユーモアのセンスを持っているように思いますね。

映画以外でもモンティ・パイソンに宮沢章夫さん、スネークマンショー、松尾スズキさん…いろんなものがごった煮になっていて、そこからぽっかりと浮かんできたものが自分の映画なのかなと。
放送作家として『タモリ倶楽部』や『トリビアの泉』などバラエティ番組の構成をされたりもしてきましたが、いま、映画界で活動することの魅力とはなんでしょうか?
全員が総力を挙げてバカバカしいことに挑めるのは、映画が一番だったりするんですよね。テレビドラマも総力を挙げて作りますけど、何話もあって“長距離ランナー”の部分があるでしょ? 映画は約2時間の短距離で、息も絶え絶えになりながら作り上げる感じですよね。

というか、そもそもこの映画の描写、ドラマじゃ無理でしょ?(笑)
映画だからこそ許される激しい描写はありますね。
勢いとテンション、濃密な時間の作り方――映画はそういう魅力を持ちあわせていると思います。だって、テレビで吉岡里帆を冒頭から血まみれにするって無理だし(笑)。ある種の自由さ、テンションの高さに惹かれているんでしょうね。それぞれのメディアで表出の仕方は違えども、自分の中の“核”はあまり変わってないとは思います。
三木 聡(みき・さとし)
1961年8月9日生まれ。神奈川県出身。慶應義塾大学文学部卒業。大学在学中から放送作家として活動を始める。『タモリ倶楽部』(テレビ朝日系)、『トリビアの泉』(フジテレビ系)など数々のバラエティ番組を担当。2005年に『イン・ザ・プール』で長編映画監督デビュー。以降、『亀は意外と速く泳ぐ』、『図鑑に載ってない虫』、『俺俺』などを世に送り出す。そのほか、脚本・演出を担当したテレビドラマでは『時効警察』、『熱海の捜査官』(ともにテレビ朝日系)などがある。

「映画『音量を上げろタコ!なに歌ってんのか全然わかんねぇんだよ!!』」特集一覧

出演作品

映画『音量を上げろタコ!なに歌ってんのか全然わかんねぇんだよ!!』
2018年10月12日(金)ロードショー
http://onryoagero-tako.com/
©「音量を上げろタコ!」製作委員会
配給・制作:アスミック・エース

サイン入りプレス プレゼント

今回インタビューをさせていただいた、三木 聡監督のサイン入りマスコミ用プレスシートを抽選で1名様にプレゼント。ご希望の方は、下記の項目をご確認いただいたうえ、奮ってご応募ください。

応募方法
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受付期間
2018年10月12日(金)12:00〜10月18日(木)12:00
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  • 当選者発表後の流れ/当選者様にはライブドアニュース運営スタッフから10月19日(金)中に、ダイレクトメッセージでご連絡させていただき10月22日(月)までに当選者様からのお返事が確認できない場合は、当選の権利を無効とさせていただきます。
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