日本損害保険協会が都道府県別の事故件数ワースト交差点ランキングをまとめた「交通事故多発交差点マップ」2017年版を発表。全国ワーストの交差点はどこでしょうか。ランキングの「常連」となっている交差点には、ある傾向が存在します。

規模が大きい、多差路、高架下… 危険な交差点とは

 日本損害保険協会は2018年9月、「全国交通事故多発交差点マップ」2017年版を発表しました。

 この調査は、日本損害保険協会が全国地方新聞社連合会および警察庁の協力を得て、2008(平成20)年(2007年調査分)から毎年発表しているもの。人身事故の50%以上が交差点付近で発生していることに着目し、都道府県別に1年間の事故発生件数ワースト5の交差点をまとめ、その特徴や事故の傾向などを紹介しています。


宮崎市の江平五差路交差点。2017年に全国で最も事故が多かった交差点のひとつ(画像:国土地理院)。

 各都道府県におけるワーストの交差点から、事故件数の多い順に全国ワースト5をまとめた結果は次の通りです(交差点名、所在地、2017年事故発生件数の順で記載)。

・1位:新二又瀬橋交差点、福岡市東区、20件
・1位:江平五差路交差点、宮崎市、20件
・3位:熊野町交差点、東京都板橋区、19件
・4位:西本町交差点、大阪市西区、18件
・5位:国道5号新川通交差点、札幌市西区、17件

 2017年は福岡の新二又瀬橋交差点と宮崎の江平五差路交差点が同率でワースト1位にランクイン。前者は、8車線の国道3号「博多バイパス」と5車線の県道が交わる面積の大きい四差路です。特に博多バイパスは実勢速度が速く、深夜や早朝に物流関係の交通量が多いといいます。

 一方、後者の江平五差路交差点は、幹線道路の国道10号が南北に、市道が東西に交わり、さらに南東方向へ宮崎駅に通じる市道が延びるという市街地の五差路。朝夕の通勤時間帯に渋滞しているほか、信号の変化が複雑であるため、前のクルマが発進したと思い込み、わき見をしながら発進して追突するなどのケースが多いそうです。

 3位の熊野町交差点(東京)、4位の西本町交差点(大阪)、5位の国道5号新川通交差点(札幌)は、いずれも主要な国道や都道府道が交わる規模の大きな交差点ですが、それぞれ首都高速、阪神高速、札樽道の高架下に位置し、交差点内やその前後に橋脚があるため見通しが悪いことが指摘されています。このうち、熊野町交差点や国道5号新川通交差点では、右折車が対向車の確認を十分に行わずに右折し、対向から来る直進車と衝突する「右折直進事故」が多い傾向です。

ランキング「常連」の交差点にある特徴

「危ない交差点」にはどのような傾向があるのでしょうか。日本損害保険協会の委託を受け、建設コンサルタントの建設技術研究所(東京都中央区)が「全国交通事故多発交差点マップ」の過去データ分析をまとめています(2007〜2014年のデータによる)。

 それによると、事故多発交差点に交わる主道路(大きいほうの道路)は約8割が4車線以上、約7割が国道であり、交差点規模が大きくなる傾向があるとのこと。「道路規格が高い多車線道路どうし」「交通量が多い」「構造的に視界が阻害されたり沿道の出入りがあるなどで交通に乱れが生じやすい」といった特性があるとしています。このような事故多発交差点の事故類型は、「追突」「右折時」「左折時」の順に多く、この3つで約8割を占めるそうです。

「全国交通事故多発交差点マップ」には、何度もランクインしている「常連交差点」も多く存在します。たとえば2017年版で宮崎県ワーストの江平五差路交差点は、2009(平成21)年もそうでしたし、東京都ワーストの熊野町交差点は、これまで3度もワーストになっています。

 そのような「常連交差点」のなかで歴代の人身事故件数が最も多いのは、岐阜市の薮田交差点です。2017年も年間10件で岐阜県ワースト、2010(平成22)年には年間72件も発生しており、10年間(ノミネートされなかった2015年を除く)の総件数は428件に及びます。

 薮田交差点は幹線道路どうしが交差する四差路で、付近に県庁をはじめ大小の商業施設なども多数あり、恒常的に渋滞しているとされています。そこで最も多い事故は追突。前方車両をよく見ず、わき見や漫然とした運転などが原因だそうです。

 建設技術研究所の分析によると、2014年までの8年間で「全国交通事故多発交差点マップ」に4回以上ノミネートされた「常連交差点」89か所の半数以上が、4車線以上の道路どうしが交わる交差点。「規模が大きい」「密集市街地にある」「信号交差点の多い区間にある」などの交差点が常連化しやすいそうです。一方で、交差点の形状としては一般的な「四枝」交差点が全体の約9割で、たとえば「江平五差路」のような接続道路数が多い交差点ほど常連化しやすいというわけではないとしています。


福岡市西区の新二又瀬橋交差点。2017年に全国で最も事故が多かった交差点のひとつ(画像:国土地理院)。

 日本損害保険協会では、「各支部で地域における危ない交差点の特徴をまとめたチラシを作成するなどして、警察や自治体と連携して啓発活動を行っています」とのこと。「全国交通事故多発交差点マップ」のデータが各所に活かされているようです。

※一部修正しました(10月4日11時40分)