"サラリーマンが副業"稼げるバイトの実態

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飲食店でのアルバイトから、自宅を使ったシェアハウスまで。本業以外で稼ぐにはいろいろな道がある。副業の解禁、シェアリングエコノミーの流行と周辺環境がめまぐるしく変わるなか、最新事情をレポートした。

■多様化する「もうひとつの財布」

ここ数年、好景気が続き多忙さが増すなかで、サラリーマンの給与所得は伸び悩んでいる。そこでプレジデント誌では「金額別」などの切り口でさまざまな副業を紹介してきた。ところがここへきて、2つの時代性により、状況が変わってきている。

ひとつは「副業解禁」が国レベルで提言され、「本業に影響を及ぼさない範囲で」認める企業が増えたこと。もうひとつは「シェアリングエコノミー」(個人間の貸し借りを中心としたモノ・サービス・場所の共有)が一般的になったことだ。

その結果、給料以外の“もうひとつの財布”の中身も多様化した。定番の副業から新たな副業、そして各種のシェアリングまで、取り組み可能な職種は意外と多い。

そもそも副業の意味は、年齢・ステージや目的意識で変わる――と筆者は考える。

20代前半の若手が「とりあえずのバイト感覚」で行う場合と、50代半ばで定年がチラつく世代の意識は違う。後者なら、定年後の安定収入や生きがいの視点で向き合うはずだ。

また、体を駆使する仕事のなかには、若者にはいいが、中高年には辛い職種がある。逆に、長く培った技術や経験が物を言う「顧問」のような副業もある。何を選ぶかはあなた自身だ。

以下、『金持ちになる副業100選 サラリーマンを副業にする超副業術』という著書を持つ副業の達人、ノーマン・浦田氏のアドバイスをもとに、注目の職種を紹介しよう。

副業編

まず身近なのが飲食店の接客だ。学生時代のバイト経験を生かせる人もいるだろう。東京都内であれば時給1000円超えも多い。20代なら新たな交流にもつながり、50代では第二の人生を見据えることも可能だ。

最近取材したカフェ経営者のなかには、製薬会社の元研究員、出版社の元編集者という異色の経歴も目立つ。もし「3年後にカフェを開業」という明確な目標があれば、“報酬が出るトレーニング期間”として、接客技術を磨く場となる。

お酒が好きな女性ならフロアレディもある。クラブなどアルコールを提供する夜型接客業だ。プレジデント誌2017年4月3日号の記事でも紹介したが、やはり稼ぐのなら東京・銀座がお勧め。渋谷や六本木よりも中高年の客層が多いが、客単価も高いので高時給が期待できる。

「寮を用意し、職と住を備えた店もありますが、それだと人間関係の苦労も多い。昼間は本業を持ち、週に何回かお店に通う副業型の働き方のほうがいいでしょう。私が行く店にも、昼間は結婚式場や病院に勤めている女性がいますよ」と浦田氏は指摘する。こちらもその後、独立開業する人もいる。

■語学力も磨ける観光ガイド

訪日外国人数3000万人(17年は約2869万人)時代となり、注目度が増すのが観光ガイドだ。副業にするなら、マッチングサイトに登録するのが一般的で、報酬の目安は半日で1万円だ。接客と国際交流が同時にでき、「英会話学校に行かなくても流暢になった仲間もいる」(専業ガイド)というが、英語など語学力+得意分野を持ちたい。

最近は「日本人の日常生活」や「日本らしい体験」が喜ばれるという。前者なら、たとえば下町の人情酒場に連れていく。後者なら、日本の武道(柔道、剣道、空手、合気道)体験ができる専門道場に案内するなどだ。ただし武道の場合は、集合時間に遅刻したり遊び半分だった外国人参加者を、空手の師範が激怒して叱り飛ばしたという話も耳にした。事前に礼儀を伝えることも大切だ。

■実入りがよい派遣型・一対多

「昼はスポーツクラブで働き、夜は派遣で鍼灸師をする人もいます。私がお願いしている先生は60分で1万円。国家資格が必要ですが、鍼や灸の専門サロンで働くよりも単価がよく、常連客がつけば手堅い。私がお願いしているのも派遣型ですが、腕がいい人は予約が取れないほどです」(浦田氏)

毎日違う場所に出向くので、派遣先の家や相手は安心か、のリスク管理も大切になる。浦田氏は、男女で副業への意識の差を指摘する。

「総じて女性のほうが副業に積極的。私のところに副業相談に来る人も、圧倒的に女性が多いです。男性は不満を持ちつつも現状肯定型なのか、あまりチャレンジしないように感じます」

スポーツ種目のコーチやトレーナーにもいえるが、組織に所属する場合と、個人レッスンで行う場合は、待遇や勤務条件が変わる。「スポーツクラブに所属して働く場合は、時給1000〜1500円が目安ですが、個人レッスンなら同3000円が目安になります」(浦田氏)。

ゴルフが得意なら、ゴルフレッスンもある。いずれの場合も、公共施設よりも民間施設のほうが相場は高い。だが民間施設に所属すれば、指名が期待できる半面、相場は低くなる。浦田氏は、こうした資格・インストラクター系は、自ら教室を主宰して生徒を集める「一対多」の方式を勧める。そうすれば収入も上がる。前述の観光ガイドにもいえるが、同じ時間を割いて、1人を見る場合とグループを見る場合は金額が変わるからだ。

空き時間を有効に使うには、各種の代行業が発達している。

たとえば、お盆や彼岸の時期に需要が高まる職種に墓参り代行がある。墓地から離れた遠隔地に住んでいる人、高齢で足腰が弱った人などの代わりに、お墓に出向き、周囲の草むしりをしたり、墓石を洗ったりする。水受けを整え、花を供えるといった業務だ。

血縁や地縁が濃密な時代には「不謹慎」と言われただろうが、全国各地に墓地の放置や無縁墓が激増する時代だ。そう考えると、依頼主の思いを汲み取り、気持ちを込めてお参りしたい仕事だ。報酬は数千円が相場だが、時給換算では結構いい値段となる。これ以外に、結婚式や葬式などの代理出席もビジネスになっている。

昭和時代からある家事代行(お手伝いさん)も、やり方次第では、空き時間の活用になる。寮に出向き、朝の2時間だけ朝食や後片付けをする仕事もあれば、高齢の個人宅を日中に清掃する仕事もある。夜型の仕事もあるので、興味のある人は、キーワードで検索してはいかがだろう。

■報酬よりやりがい「野球審判員」

インターネットに得意分野を登録して、仕事を受注する「クラウドソーシング」も副業の窓口として注目したい。代表的なサイトがランサーズだ。

職種はさまざまだが、アプリ開発やデザイン、ウェブライターなどが目立つ。インターネット上で取引を完結できる魅力はあるが、1本記事を書いて数百円など、一部の業務では単価の低さが問題視されている。

ネット上でできる注目業務は、プログラミング開発だろう。たとえばプログラミング専門の会社で技術を取得(受講料は有料)し、技術習得後、その会社から仕事を受けるというパターンもある。これまでの取材では、「特別イベントのデザインとプログラミングを1週間で3件受注し、合計で約23万円の売り上げになった」という景気のいい話も聞いた。

ネットで完結する職種であっても、お互いに素性を知らないままではブラック副業になりかねない。発注側の評判や報酬体系を調べ、時には発注先と面談するような意識も大切だ。

野球経験者にお勧めの副業にアマチュア野球の審判員がある。NPB(日本のプロ野球)審判員以外は、ほとんどが会社員など、ほかに職種を持ち、野球審判員を行う。

ひとくちにアマチュア野球といっても、少年野球や大学野球、社会人や学生の草野球など試合数は多い。審判派遣の認知度が上がり、ここ数年で依頼件数が激増した団体もある。もっとも、報酬は1試合で5000円程度。技術職にしては低いが、取材すると驚くほど野球への情熱は熱く、「生まれ変わっても野球審判員をやりたい」と話す人が多い。

地域の審判団体や審判派遣団体に登録して、試合会場に派遣されるのが一般的だ。

シェアリングエコノミー編

ここからは、シェアリングエコノミーを見ていこう。「訪日外国人数3000万人」が目前となり、20年の東京五輪を控えて注目されるのが民泊である。

大手ビジネスホテル経営者に取材した際、次のような話も聞いた。

「民泊が盛り上がった背景には、既存事業への不満もあった。たとえばアジア系の訪日外国人には、8人や10人といった大家族で来日されて、同じ部屋で過ごしたい方もいます。当ホテルの従来型の部屋では、そうした需要に対応できなかったのです」

そう考えると、一軒家を民泊に貸し出す手法は有望だ。ただし法の規制も強化された。

■民泊よりもルームシェア

18年6月15日、「住宅宿泊事業法」(民泊新法)が施行された。無許可・無届けの違法民泊排除も目指しており、マンションの一室を利用した民泊はたいへんやりにくくなった。

新法の施行直前の18年6月上旬、民泊サイト最大手「Airbnb(エアビーアンドビー)」は、民泊新法の届け出や旅館業法の許可を得ていない物件の掲載を取りやめたという。そして巨大観光地の京都市は、住居専用地域での民泊事業を年間60日、観光閑散期の1月と2月に限定するという厳しい“上乗せ規制”を打ち出した。

そのため副業としての民泊には消極的な浦田氏だが、次の提言をする。

「民泊新法では『家主不在型』の場合は専門の会社に管理業務を委託しなければなりませんが、不動産仲介大手のなかには管理の請負だけではなく民泊ホストの代行を始める会社も出てきました。アパートや一戸建てのオーナーから物件を賃借し、同社がホストとなって民泊向けに貸し出すのです。民泊を始めたければ、こうした会社を利用するという手もあります」

こうした将来性の半面、会社によってはリフォーム用の内装一式費用を求める場合もあり、それに応じれば新たな投資も発生する。そもそも「管理費が割高(売り上げの30%)など条件はよくない」「英語の利用マニュアルを整えるなど、語学対応に時間がかかる」ことも、浦田氏が難色を示す理由だ。

「それよりもお勧めなのがルームシェアです」と力説する浦田氏は、次のように続ける。

「たとえば3LDKのマンションを購入して、余った部屋を月額で貸し出すのです。知人夫妻は3LDKの1部屋に住み、残りの2部屋を各5万円で貸し出しました。こうすれば購入物件を取得した場合、背負った住宅ローンのかなりの額が家賃収入で軽減されます」

賃貸住宅の多くは転貸禁止になっているので向かないが、購入物件なら検討できる手法だ。浦田氏の別の知人は、4200万円で購入した都内のタワーマンションでルームシェアを実践し、次のような経験をしたという。

「ルームシェアの専門サイトに、窓から見える景色や居住空間などの情報も公開。家賃など条件面を明示して募集をかけたところ、30人ほどの応募があったそうです」

応募者の多くは独身女性で、面接をして同居者を選び、居室用のカギを渡し、数年間一緒に住んだ。この話を聞き、浦田氏もルームシェア事業に将来性を感じたという。

「調べてみると、男性も含めてルームシェアに関心の高い若者は多い。プライバシーは犠牲になりますが、ワンルームマンションでは体験できない、居住者専用の共有スペースが利用できるのも魅力でしょう」

20代の間では「住居でゆるやかにつながりたい」「違う職種の人と交流したい」という意識が高まっている。昔から同じ県の地方出身者が住む寮、大学や会社の寮はあったが、その進化系といえそうだ。

■個人でもできるカーシェアリング

パーク24やオリックスグループなど大手企業が運営するカーシェアリングは、ここ数年で普及が進み、都市部ではかなり一般的になった。レンタカーとは違い、15分単位など細かく時間を区切って利用できたり、受付窓口を通さず24時間いつでも借りたり返したりできるのが魅力だ。

この場合は企業が貸し主だが、個人がマイカーを貸し出すカーシェアもある。浦田氏の知人には、高級輸入車のフェラーリを貸し出している人がいるという。

「本人を含めて5人で使っているのですが、それだとある意味でクルーザーを共同所有しているようなもの。富裕層の趣味の範疇ですね。ビジネス視点でのカーシェアは、ご近所の人2〜3人に貸し出すのがいいでしょう。注意したいのは休日など利用する日が重ならない人を選ぶこと。友人・知人に貸し出せれば理想的です」

友人・知人にかぎらず、広く一般の人に借りてもらいたいときは「エニカ」のようなカーシェア・アプリに登録するのも手だ。車種やスペックなどにより異なるが、やり方次第で月数万円にはなる。不動産投資と同じように、クルマの取得費用の一部を貸出費用で補うことも可能だ。こちらも運営会社の評判などを検索し、理論武装をしてから行いたい。

■話題の「メルカリ」向いているのは?

特に20代や30代女性の高い支持を集めるのが、フリーマーケット・アプリのメルカリだ。不要な品や売りたい品をスマホで撮影して出品すれば始められ、買い手もつきやすい。競合のヤフオク!などよりハードルが低く、商品点数も多い、といった魅力がある。17年の副業記事では「せどり」を紹介したが、メルカリはいわば“ITせどり”だ。

主要ユーザーは若い女性といわれるが、実は利用客層は公表されておらず、出品経緯などから伝わる情報だ。3000円未満の品が多く、アパレルや雑貨が目立つので、何を出品するかも腕の見せどころ。

「単に不用品を売るのではなく、事業として継続的に行うなら、大量の在庫を抱えられる人でないと難しい。特に家電製品などは無理ですね。値下げ交渉にこまめに対応するのも効率が悪い。財布などの小物を安く仕入れるルートがある人なら向いていると思います」(浦田氏)

さまざまな職種を紹介したが、便利さと安易さは表裏一体の面もある。「副業」や「シェアリングエコノミー」という言葉からは、肉体よりも頭脳労働が強調されがちだが、リアルの企業や店舗で地道に稼ぐ大切さもあれば、安定性もある。広告的な煽り文句に惑わされず、興味を持った職種は自分で調べて吟味する姿勢を持ちたい。そうした事前の情報収集が簡単にできるのもネット社会の恩恵なのだ。

(経済ジャーナリスト 高井 尚之 写真=PIXTA、AFLO、粟村哲志)