夜の東京駅。計画運休が行われた9月30日はどんな状況だったのか(写真:たっきー/PIXTA)

9月30日、列島を縦断した台風24号の影響を予想し、首都圏初となるJR東日本の計画運休が決行された。東北・北陸などの新幹線は19時半以降の一部の列車を運休した。在来線は17時ごろから順次運転を取りやめ、20時に全線でストップする。動いているはずの列車が順次止まっていくと、どんなことが起きるのか。新幹線と在来線の結節点である「東京駅」で、止まる列車の最前線を見た。

飯田橋駅から東京駅に向かったのは20時54分、この日最後の千葉行きだったが、計画運休の20時をだいぶ過ぎている。

メディアが伝えるのは、利用者は鉄道事業者が目安とする時間以降の利用は控えようということだった。しかし、東北や北陸などの新幹線は、首都圏在来線が止まる時間を過ぎて東京駅を発着する列車もある。ならば、あえて在来線で東京駅に入り、新幹線や在来線の利用状況を観察してみよう、ということだ。

在来線「最終電車」は何本も走っていた

21時09分、東京駅に着くと、隣のホームで21時30分に発車する京浜東北線の最終列車「桜木町行き」のアナウンスが始まっていた。

「この列車は最終のため新幹線と接続します」と案内が流れる。実際、しばらくすると、新幹線からの乗り継ぎと思われる、キャリーバッグを手にした女性のグループ客らが、小走りに駆け込んできた。

21時35分、三鷹行きの中央線最終列車を見送った。こちらには駆け込んでくる人はいない。列車が去ると「上りエスカレーターをすべて止めて下さい」と、業務連絡があってホームが閉じられた。そういえば、この直前にはヘルメットに反射ベルト姿の保線員がホームの端を目視点検しながら歩き始めており、計画運休がひしひしと進んでいる気がする。

東京に乗り入れた山手線でも、最終列車の案内が始まった。東京駅に着いてから山手線はこの時間でも10分間隔で走っていた感じだが、すべて大崎止まりだった。

「21時44分、新橋・品川方面行き最終電車です。この時間、このほかのすべての在来線、京浜東北、中央、上野東京ライン、横須賀線……は終了しました」と、女性駅員が話している。ついでにいうと上野・池袋方面行きの逆回りの山手線は21時59分発が最終というアナウンスが流れた。

1両に10数人程度の閑散とした乗客で、なるほど20時から順次止まるというのはこういうことか、と納得しかけたのだが、この列車が終わりではなかった。最初は聞き間違いかと思ったのだが、別の女性の声で再びアナウンスが流れ始めた。

「山手線の最終電車、新橋・品川方面大崎行きは22時15分……」

通常、東京駅を出発する在来線は山手線が最後である。計画運休でも山手線だけはこの後も動き続ける。22時15分の次は最終電車ではなく、23時20分も「回送電車」という名前で客を乗せて動いた。

ひとまず駅のホームから新幹線改札へと移動してみる。

駅構内に座り込む利用者

最終列車を送り出し、人影がまばらな在来線とは違って、新幹線改札口の周囲には座る椅子もないほど、多くの人が集っていた。この人たちは何を待っているのだろうか。1人の男性は、少し怒り気味だった。

「在来線が8時に止まるっていうから、早めに来て新幹線を待っていたんだよ」

東京駅発の青森・秋田・盛岡方面は20時台、新潟、仙台方面は21時台、那須塩原行きは22時、最も遅い越後湯沢行きは22時28分の発車だった。さらに到着となると、はやぶさ・こまち42号、MAXたにがわ416号が23時台に到着する。計画運休で、早々と駅じまいという感じでは、とてもない。

それどころか、八重洲口改札口を出ると、すべての券売機が発売中止を表示するまで、多くの人が座り込んでいた。駅の柱という柱に、お互いが視線を合わせてにらみ合わないように、うまく組み合わさっている。20代に見える若者が多く、スーツケースをテーブルにしてトランプで時間をつぶす4人組の女性グループ、シートを敷いて寝入る中年男性、ヒールを脱いで足を投げ出す女性など。

八重洲口からは深夜の高速バスも発着する。列車同様にバスも運休を重ねているためかと思いきや、バス待ちの人の多くは駅の外で待ち、駅構内に座り込む人は列車乗客のようだった。もうほとんどの列車は最終を終えた。まもなく駅も閉まるのではないか。駅務員は状況をこう説明した。

「駅を終日開けるかどうかは決まっていないんですよ。新幹線で車泊対応するかもしれないのですが――」

駅を管理するJR東日本に電話で問い合わせたところ、「駅は通常通り閉めます。車泊は1編成だけです」とのことだ。すでに改札を出ている人に車泊は難しいのかもしれない。

23時を過ぎて再び駅に入ると、列車ホテルの案内が聞こえた。

「女性のお客様は4号車から乗車し1号車から4号車まで、家族連れのお客様は6号車から入り7号車、8号車まで。男性のお客様は9号車から入り10号車までをご利用ください」

注意深く情報収集を

さて、20時から順次止まる在来線は、東京駅ではいつまで動いていたのか。それはアナウンスに耳を澄ませる人だけにわかった。ホームでは「回送(Out of Service)」と表示されており。実際、ひと昔前ならバックパッカーと呼ばれたかもしれない15人ほどの外国人の集団は、しばらく待っていたがいなくなってしまった。山手線回送電車は、23時14分大崎止まり、23時20分池袋止まりが、本当の最終だった。東京駅に到着した新幹線乗客の一部や、途方に暮れた人の一部を乗せたものだった。

回送という表示のせいか、降りる人はいても、乗り込む人は誰もいない。駅に降りると利用者より駅務員や警備員のほうが多いという、山手線では見たことのないような光景が広がった。

計画運休とは利用者が残っていても、運転を打ち切るという意味ではない。鉄道事業者は利用者の状況を見ながら運休を決めている。計画運休に遭遇したときは、あきらめずに情報を収集してみるといいかもしれない。