今夏、UVケアを頑張りすぎた人は気を付けて!

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史上まれにみる酷暑となった今夏。外出をする際は万全なUVケアを施してアウトドアを満喫した人も多いのでは?

【写真をみる】ビタミンDを体内産生するのに必要な日光浴の時間は、北海道と沖縄とでは大きな差がある

しかし、実は紫外線(日光)カットのし過ぎは「ビタミンD不足」の原因にもなりうることが明らかになっている。

今回、「そもそもビタミンDってどんな効果があるの?」という人のために、近年様々な研究結果が発表されて注目が高まるビタミンDの効果や、ビタミンD不足が原因で高まるリスクについて、ビタミンD研究の第一人者、神戸学院大学栄養学部の田中清教授に聞いてみた。

■ 紫外線から生まれるビタミンDとは?

まずは、そもそもビタミンDとはどのような栄養素なのか、田中教授に伺った。

「ビタミンDは、食事からの摂取に加え、紫外線(日光)の下、皮膚で産生することができます。その主な役割は、強い骨の形成・維持に必要なカルシウムとリンの体内吸収を促し、丈夫な骨を作ることです。したがって、ビタミンDが不足すると骨粗しょう症や骨折になるリスクが高まります。また近年の研究の結果、骨だけでなくビタミンD不足による様々な健康への影響が分かってきています」。

厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2015年版)」によると、18歳以上の男女では、1日5.5マイクログラムのビタミンD摂取が必要であるという指針が示されている。しかし国内外の指標に基づいた際、日本人のビタミンD摂取量は不足していると考えられている。

■ 夏に紫外線をカットし過ぎた後の秋はビタミンD不足に注意!

紫外線が皮膚の中にあるコレステロールの一種に作用すると、ビタミンDの前段階の物質が産生される。その後、時間をかけてこの物質がビタミンDとなる。

しかし近年、美肌ブームによる過剰なUVケアにより、特に夏場は女性を中心に極端に紫外線を避ける傾向がある。その結果、ビタミンDの体内産生量が減少しビタミンD不足に陥るリスクが上昇すると考えられているのだ。

■ ビタミンD不足を体内で作るために必要な日光浴の時間は?

それでは、ビタミンDを体内産生するためにはどの程度紫外線を浴びれば良いのか?

田中教授は「ビタミンDを10ナノグラム産生するために必要な日光浴の時間量・時間帯は季節や場所によって変わります。緯度が低い程、紫外線量が多いと言われているため、必要な日光浴の時間は少なくなります」と語る。

ビタミンD10マイクログラムを体内産生するのに必要な日光浴の時間は、北海道と沖縄では最大2400分の違いがある。普段から日光を浴びていると感じている人も、実は季節や地域によってビタミンD不足になっているかもしれない。

■ ビタミンD不足の人は がんの発生リスクが高い!

さらに田中教授によると、ビタミンD不足に陥ると重大なリスクが生じるという。

「約8000人の血液中のビタミンD濃度を長期間にわたって調査した、国立研究開発法人 国立がん研究センターによると、血液中のビタミンD濃度が低いと、各種がんの発生リスクが上昇することが発表されています。

逆にビタミンD濃度が上昇すると、各種がんの発生リスクが低下することも発表されました。ビタミンDには、異常な細胞の増殖を抑え、生物の細胞が役目を終えて不要になると自ら死ぬ現象を促進する作用が確認されています。この作用により、がんの発生を予防する効果があると考えられています」。

■ 女性必見!ビタミンD不足が女性の体重増加と関係あり!

さらに田中教授は続ける。

「2013年、アメリカ・オレゴン州ポートランドで、65歳以上の女性4659人のビタミンDの数値と体重の調査が行われました。5年間におよぶ本研究において、体重が増加した571人の女性の中で、ビタミンDレベルが不足(30ナノグラム未満)している女性の平均増加体重は18.6ポンド(約8.4キロ)、ビタミンDを十分なレベルで摂っていた女性は平均16.4ポンド(約7.4キロ)でした。

さらに、研究開始の時点でビタミンDレベルが不足している女性と足りている女性を比べると、前者のほうが体重が重かったことも明らかになりました」。

「ビタミンDが体重に対してどのように作用するのか研究中ですが、女性はビタミンDを十分に摂取することが、健康的な体型維持に繋がると言えるかもしれません」と、ビタミンD不足と女性の体重増加の関係性が明かされていることを説明し、ビタミンD不足が招くリスクはがんに留まらないことを田中教授は教えてくれた。

■ ビタミンD摂取におすすめの食材

普段の食事ではどのようにビタミンDを摂取すれば良いのか、田中教授に聞いた。

「魚類やきのこ類、特にしらす干し(半乾燥品)や、乾燥キクラゲはビタミンDを豊富に含んでいるためおすすめの食材です。日常生活でこれらを食べる機会が多くない方は、サプリメントも活用し、積極的にビタミンDを摂取することが重要です」。

いずれもスーパー等で気軽に手に入る食材なので、積極的に取り入れてはいかがだろうか。

このように、過剰なUVケアに伴う紫外線不足は今日のビタミンD産生不足の原因にもなりうる。

秋が本格化しつつある今、今度は日照時間の減少に伴う紫外線量の減少にも注意したい。ビタミンDの体内産生を目的とした“意識的な日光浴”が、今秋の健康キーワードかもしれない。(東京ウォーカー(全国版)・ウォーカープラス編集部)