メルセデス・ベンツC200を公道で真っ先に試す機会に恵まれたのでリポートしたい(筆者撮影)

実に6500点にも及ぶ改良が施されてフェイスリフトしたメルセデス・ベンツ「Cクラス」。最大のトピックは、販売の中心モデルである「C200」の搭載エンジンが、従来の2.0Lから1.5Lへと排気量を変更したことだろう。

マイルドハイブリッドになったC200

しかもこれは単純なダウンサイジングではない。新技術として話題の「BSG(ベルトドリブン・スターター・ジェネレーター)+48V電気システム」を搭載した新エンジンの採用なのだ。勘の良い読者ならばもう理解されたと思うが、今回からC200はいわゆるマイルドハイブリッドになったというわけだ。


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「M264」の型式名を持った1.5L直列4気筒直噴ターボエンジンは、最高出力184馬力/最大トルク280Nmと、以前のC200に搭載された2.0L直列4気筒直噴ターボとほぼ変わらないスペックを実現する。

そしてここにベルトを介してクランクシャフトと接続される最高出力10kW/最大トルク160Nmを発生するスターター/ジェネレーターを兼ねたモーターであるBSGと48V電気システムを組み合わせた。

最近、注目されている48V電源システムを組み合わせたBSGのようなマイルドハイブリッドは、ボッシュやコンチネンタル、ヴァレオといった欧州のサプライヤーが推している機構。2011年にフォルクスワーゲン、ダイムラー、BMW、アウディ、ポルシェの5社によって策定された「LV148」という48Vの車載電源を用いたものである。

48Vのメリット

高電圧に分類される60V以下に設定した48Vを使うことで、高電圧のシステム搭載時に求められる安全対策や機能を用意せずに済むため、高電圧なフル・ハイブリッドのシステムより低コストでCO2排出量規制をクリアできる手法として、最近多くの自動車メーカーが採用しつつある。実際に先日発表されたアウディの「A8」や「A7」も、48Vのマイルドハイブリッドを組み込んでいる。

48Vは従来の12Vのシステムではできなかった回生ブレーキの利用を可能とすることをはじめ、フル・ハイブリッドよりは電装品を小さくシンプルにできるし、電圧が低く電力効率が悪い従来の12Vシステムによるマイルドハイブリッドよりさまざまな電装品を動かせることに加え、新たな電装品の採用で価値を高める(電動ターボやスーパーチャージャー、スタビライザーなど)、多くのメリットが挙げられる。

特に近年では、自動車における電装品は増えつつあり、12V電源では電力量が厳しくなりつつある。そうした背景を受けて48V電源を用いたマイルドハイブリッドが注目されている。

今回はそうしたシステムを実際に搭載したメルセデス・ベンツC200を公道で真っ先に試す機会に恵まれたのでリポートしたい。

エンジンスターターボタンを押すと、エンジンは静かに目覚める。これまでのC200よりも、始動時の振動も少ない。

そしてアクセルを踏んで走り出す瞬間から、これまでとは異なるフィーリングが生まれていることに気がつく。

従来の内燃機関を搭載したモデルでは、アクセルを踏むとエンジンの回転が上がり、それが力を生んで動き出す。が、いくら反応の良いエンジンであっても、アクセルを踏んでから動き出すまでには一瞬のタイムラグがある。

それがこの新エンジンにはないのだ。理由は走り出す瞬間はモーターによってアシストがなされるため、エンジンでは反応しきれないわずかな一瞬をモーターが補っている。だからアクセルに足を乗せたらすぐにクルマが動き出す。しかも感触はスッとすり足をするような落ち着きと滑らかさを持っていて、さらに力強く前へと出て行ける。電気自動車やハイブリッド的に動き出すのである。

BSGと48V電気システムは、回生ブレーキなどで発電した48Vの電気を1kWhのリチウムイオン電池にチャージする。そしてこれを加速時にはベルトを介してつながるクランク軸に対し、アシスト用モーターとしてプラスアルファの力(加速時には最高で10kW)を上乗せする。また一方でブレーキング時は、エネルギーを回生する(回生時には12kW)働きも与えられている。

とはいえこれだけではなく、実際の走りにはこのシステムをさらに効果的に使っている。

たとえば信号待ちなどで停止してアイドリング・ストップしてから、再発進する際のエンジン始動はBSGによって行われるため、セルモーターにはない静かな始動が実現される。

変速時にもモーターはアシストを行っている。たとえばシフトアップ時。通常の内燃機関のクルマであれば、一度エンジン回転が落ち込んでから上昇していくが、その落ち込みをモーターでアシストするためシームレスな加速が実現できている。これはすごく気持ちが良い。

そしてシフトダウン。通常の内燃機関のクルマであれば、ギアが落ちた瞬間にエンジンの回転数がハネ上がるが、BSGではベルトを介して抵抗を生み出す制御によって、ハネ上がりを抑えてくれる。つまりシフトアップ時もシフトダウン時もこれまでのようなシフトショックとは無縁なのである。

そしてこれはエンジンの印象をより良いものに感じさせてくれる要素になる。だからむしろ、この1.5Lエンジンは以前の2.0Lより上質に感じるのだ。

フル・ハイブリッドに感じる違和感はない

同時に気づくのは、なるほどこのシステムは電動化をうまく使いつつ、自然な走行フィールも失わないものだということ。

なぜなら発進や再始動、シフトチェンジなどの局面において、モーターならではの制御によって機能の向上や上質さを感じさせる要素としているために、いわゆるフル・ハイブリッドに感じるフィーリングの違和感がそこにはまったくない。だからこれまでと同じような感覚ながらも、プラスアルファの要素だけが光っている。もっとも今回のCクラスの場合はトランスミッションもATであるため、日本車のハイブリッドやマイルドハイブリッドの多くが使うようなCVT(無段変速機)特有の間延び感がないので、余計に自然に感じる。


これまでと同じような感覚ながらも、プラスアルファの要素だけが光っている(筆者撮影)

結果として走り全体に、好印象を生む要素になっているわけだ。

とはいえ、搭載されているのは1.5Lの直列4気筒直噴ターボであるため、限界は当然ある。アクセルをどんどん踏み込んでいく高速域になるほどに、プラスアルファのアシストはなくなるし、全開領域ではさすがに1.5Lのエンジンであることを感じる。ただし、実生活の中でのアクセル開度を考えれば、そうした限界をみる要素は少ないといえるだろう。

またCクラスの今回の改良においては、このパワーユニット以外にも新世代の2.0Lクリーンディーゼルを搭載したことも特徴で、これについては機会があればレポートしたい。

そのほか今回のCクラスでのトピックを挙げておくと、エクステリアでは、前後バンパーが形状変更を受けたのに加え、新たにLEDハイパフォーマンスヘッドライトを標準装備した。そして上位グレードではマルチビームLEDヘッドライト(ウルトラハイビーム付)も用意されている。

さらに安全装備と運転支援もアップグレードされている。レーダーセーフティパッケージは「Eクラス」や「Sクラス」とほぼ同等の内容を備えたものへと進化した。たとえばウインカー操作で自動的にレーンチェンジするアクティブレーンチェンジアシストを採用。さらにアクティブディスタンスアシスト・ディストロニックは、追従中に完全停止してから30秒以内であれば自動再発進機能付きとなった。

さらに最近必須のテレマティクスについては、「メルセデス・ミー・コネクト」を全車で標準装備。事故検知時の24時間緊急通報サービスに始まり、スマホでの車両ドアロック・アンロックを可能とするリモートドアロック&アンロックや、アプリで車両の状況を確認できるリモートステータス確認、そして駐車位置検索や、スマホからナビの目的地を遠隔設定できるSend2Carを採用した。ほかには24時間のコンシェルジュサービスも利用可能といった具合で、コネクテッドによるさまざまなサービスも展開する。

しかしながら今回、印象的だったのはやはり48Vのマイルドハイブリッドの搭載だろう。

すでにフル・ハイブリッドが確立されている日本では

はたして、すでに小型車でもフル・ハイブリッドが確立されている日本の自動車および自動車メーカーは、こうした48Vのマイルドハイブリッドに対して、どのように向き合っていくのだろうか。


48V電源と、今後の自動車の動向(筆者撮影)

効率という意味ではすでにフル・ハイブリッドがある分、マイルドハイブリッドそのものにうま味はないと判断する場合が多いだろう。

しかしながら、先に記したように今後はコネクテッドやADAS、果ては自動運転などを見据えた際に、現在以上に電装品が増していくことは間違いないわけで、そこに対して別系統で48V電源を用意することはとても魅力になるはずである。

また実際に効率ではなく、クルマの商品性を考えた場合には、自然なフィーリングを持った走りが実現できる機構は価値があると思えるが、それを日本の自動車メーカーがどう考えるかも気になるところである。

今回、新型Cクラスの目玉ともいえる「BSG(ベルトドリブン・スターター・ジェネレーター)+48V電気システム」を搭載したC200を実際に試乗してみて、図らずも今後の自動車の動向を考えさせられたのだった。