堀江貴文氏が語るさだまさしの魅力とは?

写真拡大 (全3枚)

 デビュー45周年。コンサート回数は日本一で、2位以下に大差をつける4300回超。作った曲は570曲以上、著書累計300万部超、返済した借金は35億円…。数字を羅列すると、その凄さが際立つが、「さだまさし」の生き方や考え方に改めて注目が集まっている。著名人たちが彼の素顔について語った書籍『うらさだ』も刊行された。さだの凄さについて、短期集中連載で同書に参画した語り手たちの発言を紹介。第1回は堀江貴文氏。さだまさしは、希代の実業家の目にどう映っているのか。

 * * *
 2017年の夏のことなんですが、僕が準レギュラーコメンテーターを務める『5時に夢中!』に、さださんがゲストで出演したんです。何回記念だか忘れましたが、スペシャル番組で、放送前に「え? 本当にさだまさし本人が来るの!? あり得ないでしょ」と疑っていたら、本当に来た(笑)。

 しかも、めちゃくちゃ気さくで、ノリもメッチャいい。たまに『生さだ』を観てたんですけど、あの気さくなノリが楽屋でもそのまま。「なんで、あんな番組やってんすか?」って聞いたら、「オレもわかんないよ」って気さくに笑わせてくれる。

 きっとさださんは、いわゆる大御所芸能人にありがちなヘンなプライドがないんでしょうね。自分が世間からどう見られているかというようなことを過剰に気にしていないんだと思います。プライドが高くて得することなんて、ひとつもありません。プライドが解決してくれる物事もなければ、プライドが高い人が優秀なわけでもない。大事な決断をする時の障害にもなります。

 逆に、プライドが低ければ動きやすいし、スピーディに質の良い判断ができます。周囲から親しみを持たれ、愛されます。僕の周りの人間関係を見ていても、本当にそのことを実感します。さださんを見ていると、そういうくだらないプライドを全然感じない。他人の目など気にしていない。だから『5時に夢中!』というローカル番組にも気負わず出てきて、自分から楽しめてしまう。

 さださんファンはデビュー当時からの年配の方も多いんですよね? え? スタッフも最初からあまり代わってない? それってすごいことですよね。ずっと愛され、支え続けられてるってことですから。僕も番組でお会いして、すぐにさださんという人間が好きになりました。

 この放送終了後、LINEを交換しようとしたんですけど、さださん、ガラケーだから「できない」という。そのあと、ご自身のインスタにも僕とのツーショットを載せて、「LINEやるように薦められているんだけど、ガラケーだからなぁ〜」と書き込んでいましたけど。

 だから今は、さださんのインスタに僕がコメントして、それにさださんが返信コメントするという、微妙な距離でのお付き合いが続いています。それから僕、和牛の店をやってるんですが、「来てくださいよ」と何気に誘ったら、本当にフラッと来てくれて。精肉店で肉を買っていってくれたこともありました。お礼にカツサンドの差し入れなんかさせてもらって。

 そんなこんなで、「トークイベントやるんですけど、出てくださいよ」とダメ元でお願いしたら、「いいよ!」とあっさり。このイベントは、僕がやっているオンラインサロンがあって、そこのメンバーたちが主催する、まだまだ手作り感満載のイベントだったんですが、まさかOKしてもらえるとは思ってもみなくて……。

 ただ、やっぱりメンバーたちはさださんの気さくさを知らないですからびびっちゃって、 「あんな大御所に、トークショーで歌ってくれとお願いするのはまずいんじゃないか」と躊躇してしまった。で、当日のトークショーで『償い』という曲の話になったんですが、本人を目の前にすると、「やっぱり生で聴いてみたい。会場の人に聴かせたい」という衝動に駆られてしまう。

 それで、またしてもダメ元で、「『償い』、歌ってくださいよ」と頼んでみると、「そういうのは先に言ってよ、そしたらギター用意してくるのにさあ」とさださん。でも、結局歌ってくれることになり、急遽、スタッフが走り、別の会場でお笑い芸人がネタに使っていたギターを強引に借りてきて、その場でさださんが何とかチューニングして、即席ライブをしてくれました。

 いいギターじゃないし、チューニングも完璧じゃありません。アンプもないし、音響も最悪。でも会場に集まった観客全員が聴き入っていた。これは大袈裟じゃなく、あそこにいた人全員、さださんファンになったと思います。即席なのに、それくらい十分な迫力がありました。

◆プライドのなさと好奇心の強さが作品の源泉に

 さださんは「歌手」でくくっちゃいけない人だと思います。ひと言で表すなら「マルチな人」。だからいろんなことに手を出して、失敗することもあるんでしょうけど(笑)。「好奇心の塊」みたいな人なんでしょうね。悪く言うと、とっ散らかるし、飽きっぽい。

 だってあれだけヒット曲があるんだから、大人しく歌だけ歌っていれば間違いなく稼げる。でもそれだと本人はつまらないんでしょうね。僕もいろいろなことをやっているから、その気持ちがよく理解できます。マルチな才能を持っている人は、ひとっところにいられないんです。

 元リクルートの藤原和博さんが唱えていることですが、人はひとつのことに1万時間取り組むと、誰でも「100人に1人」の人材になれるそうです。

 1万時間というと途方もないように思えるかもしれませんが、1日6時間取り組めば、5年で1万時間になります。さださんの場合、歌手を45年やってるわけだから、まさにこの道のプロ。それだけじゃなくて、「詩人」「作曲家」「小説家」という・顔・(=肩書き)を持っている。会社の経営も長くしているから「経営者」の顔もある。何はともあれ、35億円もの借金を無事に返した手腕は見事です。それから「生放送のキャスター」。

 つまりさださんは、マルチにいろいろ手を出して、しかもその分野にのめり込んだお陰で、「100人に1人(歌手)」×「100人に1人(詩人)」×「100人に1人(作曲家)」×「100人に1人(小説家)」×「100人に1人(経営者)」×「100人に1人(生放送のキャスター)」=「1兆人に1人」という価値を持つ人材になっている。他にもいろいろ極めているでしょうから、「1兆人に1人」どころじゃないかもしれません。

 ヘンなプライドがないから、これからも新しい分野に躊躇なくチャレンジしていくでしょう。「失敗して後ろ指さされたらどうしよう」と考えないわけだから。僕も同じですが、さださんも、仕事と遊びの境界線がなくて、ただワクワクすることに飛びついていっただけだと思います。そうして自分でも気づかないうちに、いつの間にか何足ものわらじを履いている。

 プライドのなさと好奇心の強さが、様々なさだ作品の源泉になっているんだと思います。

※さだまさしとゆかいな仲間たち・著/『うらさだ』より