日本が世界初?の販売国だった体温で発電するスマートウォッチ「MATRIX Power Watch」の仕掛人 矢野社長に聞く

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「MATRIX Power Watch」は、体温で発電するスマートウォッチだ。
Appleをはじめとするスマートウォッチ最大の不満となる「毎日充電」を一気に解決したのが、「MATRIX Power Watch」だ。

言うまでもなく、スマートウォッチの最大の不満は、性能でもデザインでもない。
毎日バッテリー充電をしなければならない苦行のような手間だ。

通常の腕時計であれば、バッテリーは最低でも1か月以上、発電システム内蔵の腕時計なら半永久にバッテリー切れの心配がない。それに比べてスマートウォッチは、ほぼ毎日、充電が必要となる。
スマートウォッチがいくら多機能、高性能であっても、充電を怠れば時刻さえ確認できないのであれば、腕時計としては信頼できない、というわけだ。

MATRIX Power Watchは、体温差で「MATRIX Power Watch」自身で発電することで、「毎日充電」の呪縛からスマートウォッチを開放した。

実は、日本がMATRIX Power Watchの本格的な販売を始めた最初の国だと知っているだろか?


■後発の日本が世界初の販売国に
世界で一番早くMATRIX Power Watchを販売したのが、株式会社ビーラボ 代表取締役社長 矢野雅也氏だ。


MATRIX Power Watchについて語る、株式会社ビーラボ 矢野社長


MATRIX Power Watchは、海外のクラウドファンディングサイト「Indiegogo」にて資金を調達し、海外で開発、誕生したスマートウォッチだ。

矢野氏によると、
「Indiegogoでは、1億8千万円くらい集まりました。けっこうとんでもない金額です。」
いかに、世界中の期待が集まっているのか、集められて資金からも推察できるだろう。

MATRIX Power Watchを開発したのは、クラウドファンディングサイト「Indiegogo」で資金を調達した海外の企業だ。株式会社ビーラボの矢野氏は、MATRIX Power Watchを日本で発売する輸入元となる。

矢野氏は、海外の優れた製品を国内で販売してきたエキスパートなのだ。
「弊社は新しいテクノロジーやコンシューマー向けIoT製品にフォーカスした新商品を扱っています。海外にこだわっているわけではないですが、日本ではそういうハードウェアが少なくて、結果的に海外で生み出された製品を多く扱ってきました。」

驚くことに日本は、販売決定が後発であるにも関わらず、世界で最も早くMATRIX Power Watchをフルラインナップで販売した国になった。

矢野氏によると、
「実は、Indiegogoで申し込んだ人でも、最新機種のMATRIX Power Watch Xを発送完了するのは、9月末くらいなんですよ。
ところが日本では7月5日に正式に販売開始してしまった。
海外では『なんで、俺のところに届かないんだ!』と怒っている人もいるほどです。」

日本が海外よりも先に販売できた理由について、
MATRIX Power Watchの開発メーカーは、日本を最も大事な市場と捉えているからだという。
実際に日本での売れ行きは好調で、矢野氏によれば製品を仕入れる運転資金が心配になるほどだったそうだ。


MATRIX Power Watchシリーズ


■体温発電の腕時計が、今までなかった理由
MATRIX Power Watchは、体温で発電する世界初の腕時計。

「いったい、どうして体温で発電ができるのだろう?」

矢野氏
「もともと2014年にドイツの会社が体温で発電する腕に巻くデバイスを発表しました。しかし当時は、サイズも大きく、見ためも不格好でした。そこから、高効率なTEGやDC-DCコンバーターチップを自社開発し、徹底した本体全体での温度管理やエネルギーマネメントを通してMATRIX Power Watchという形にまで昇華できた。

(MATRIX Power Watchを開発した)彼らが作ったのは、ただの時計ではなくて、体温で発電するという構造そのものなんです。そういった意味でこれは時計でありながら発電機構であると言えます。」

矢野氏によると、体温で発電するには、
・冷たいところ
・温かいところ
この2つを作らなくてはならないそう。

この2つを同じ製品内に作り上げ、うまく熱を伝えることか大きな課題だった。
さらに腕時計にしたくても、そこまで小型化するのは非常に難しかったという。


体温で発電中は、白いバーが表示される


この体温で発電するシステムは、とても夢がある。
では、スマートウォッチ以外にも応用はできるのだろうか?

矢野氏
「この技術をほかのもの、たとえば、イヤホンにできるかというと、今すぐには、たぶんできないんですよ。もし、ほかの製品に適用しようとすれば、これをもう一回、最初から設計し直さないといけないのです。」

現時点の発電システムは、残念ながら、腕時計という、いまの製品でしか使えないそう。
しかし体温で発電する技術は、様々な分野での応用が期待されているのは事実。
そこで最近は、温泉で発電する実験もはじめているという。
ちょっと、その詳細も気になる。


温泉で発電する実験をはじめた


■最新モデルは、体温発電なのに充電器も付属したワケ
最新モデル「MATRIX Power Watch X」には、充電器(サーマルチャージャー)も付属されている。

矢野氏によれば
「Xの場合は、通知機能のように、物凄く電力を消費する機能があります。使い方にもよりますが、たくさん着信がある人の場合、体温発電だけでは消費に追いつかないことも懸念されます。そうしたケースでの非常用に充電器も用意しました。」

最新モデルのMATRIX Power Watch Xは、下位モデルに比べて発電能力は大きく向上されている。
それでも
・通信や通知が多く、消費が大きい
・バッテリー残量が少ない
などのケースでは、バッテリー切れの不安は残る。
そうしたヘビーな利用に対する配慮というわけだ。

最新モデルMATRIX Power Watch Xは、現時点では、通知はまだ英語表示のみだが、アップデートにより日本語表示に対応する予定とのこと。なお、メニューの表示は、既にすべて日本語に対応済みだ。


MATRIX Power Watch X」には、USB充電器が付属されている


今後のMATRIX Power Watchシリーズだが、fスマートウォッチやガジェットという特殊な製品ではなく、一般の時計と肩を並べる製品として展開していきたいという。

矢野氏
「今は主にデジタルガジェットとしてMATRIX Power Watchを販売しています。
時計の文字盤が変えられる機能や、通知機能などが修正されれば、腕時計としての完成度も高くなっていきます。
今後は、MATRIX Power Watchシリーズを時計として、販路を開拓して行きたいと考えています。」

矢野氏によれば、来年以降、さらに新しい商品も登場するとのこと。
MATRIX Power Watchシリーズは、今、スタートラインにたったところで、本当のブレイクはこれからのようだ。


ITライフハック 関口哲司