「東レ パンパシフィック・オープン」で準優勝に輝いた大坂なおみ【写真:荒川祐史】

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なおみフィーバーに沸いた1週間、大坂とともに日本人ファンも成長を

 なおみフィーバーに沸いた1週間が終わった。テニスの「東レ パンパシフィック・オープン」は23日、シングルス決勝が行われ、世界ランク7位の大坂なおみ(日清食品)が同8位のカロリナ・プリスコバ(チェコ)に4-6、4-6で敗れ、日本勢23年ぶりの優勝を逃した。日本人シングルス初の4大大会制覇した全米オープン後の凱旋試合とあって、大坂の試合日はすべてチケット完売の超満員となったが、その裏では日本人ファンのマナーの課題も残った。

 晴れの決勝の舞台。大坂とプリスコバの登場を目前に控えるコート上には、こんなアナウンスが再三、響いていた。「試合中のフラッシュによるカメラ撮影は禁止です」――。全米女王と元世界1位の一戦。一流選手を自分のカメラに納めたい気持ちはもちろん分かるが、プレーの妨げにならないように観客に配慮を求めるお願いが繰り返されていた。

 なおみフィーバーに沸いた今大会。チケットは連日完売となり、大坂を一目見ようと当日券を求めて列もできた。当然、今までテニスを観戦経験がないファンも多かった。ただ、東レPPOは国内女子最大の国際大会。WTAツアーとして世界のトップ選手が真剣勝負をする場だ。しかし、大坂の初戦となった2回戦では試合中にフラッシュが光り、何度か主審が注意をする場面があった。

 以降、連日「撮影注意」のアナウンスが繰り返された。3連休中日となった決勝当日も「選手から連日、クレームが届いている」とアナウンスされ、設定によっては自動的にフラッシュ撮影となっているスマホもあること、デジカメもズームをする際に焦点を当てるため光が発せられることを挙げ、故意でなくともプレーの妨げになる可能性があることが懇切丁寧に説明されていた。

サーブ直前に客席を移動、プリスコバが中断するシーンも…

 コート上に立つ場内インタビュアーが被写体となって“リハーサル”を取る時間もあり、「もし、試合中に選手が自分の方をじーっと見ていることがあったら光が発せられているかもしれません」と注意喚起を促した。その甲斐もあってか、決勝では客席からフラッシュが光ることはなかったように見受けられたが、こんなシーンもあった。

 エンド裏の2階席でトイレから出てきたファンが着席しようと通路を横切っていった。本来、客席の移動はコートチェンジのタイミングに限られている。まさにその瞬間、コート上ではプリスコバがサーブのモーションに入る直前だった。視界に入ったのか、プリスコバはいったん中断。10秒ほど間を置いて再び、サーブを打っていた。

 試合はプリスコバが元世界1位の貫禄を示し、大坂をストレートで圧倒した。優勝後のスピーチでは「日本に何度か来ていますが、楽しめた1週間でした。ファンの皆さんも私を応援するのは難しかったと思いますが、しっかりと届いていました」と日本のファンに感謝し、「また来年も来たいと思います」と約束してくれた。

 近年は男子の錦織圭(日清食品)が牽引してきた日本テニス界において、女子の大会がこれだけ盛り上がるのは大きな一歩だ。大坂はコート上で飛躍的な進化を遂げている。こういった場面は海外の試合でも見受けられるが、気持ち良く選手にプレーしてもらうために、そして、テニスをもっと日本に根付かせていくために、ファンもマナーを学び、一緒に成長していくことが問われる。(THE ANSWER編集部)