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賃貸か購入か、で迷う人の多い住宅購入。毎月高い家賃を払うのなら、いっそのこと購入して自分のものにしたほうが得ではないか……なんて、賃貸暮らしをしている人なら一度や二度は考えたことがあるのでないでしょうか? 一方で、賃貸のほうが気楽でいいという人もいます。どちらがいいかは各人の考え方によりますが、一生賃貸で暮らすとなれば、お金の面など、どんなことに注意しておけばいいのでしょうか。

○まずは、賃貸暮らしのメリットとデメリットを考える

まずは賃貸暮らしのメリットとデメリットを列挙してみます。

メリット

・ローンがない

・固定資産税・土地資産税の負担がない

・ライフスタイルの変化に合わせて住み替えしやすい

・修繕などの費用は家主が負担

デメリット

家賃を払い続けなければならない

・自分の住居ではない(契約更新がある)

・自由にリフォームできない

メリットは、何といっても「ローンがないこと」でしょう。家賃が月々のローン返済額と同程度だとしても、20年、30年と長いローンは、精神的にもずっしり重みを感じるものです。ローン返済に加え、購入後には毎年定期的に「固定資産税・土地資産税」の支払いが発生しますから、金銭的にも賃貸のほうが楽と言えそうです。

20年、30年の間には家族人数や仕事など、ライフスタイルの変化が何度か訪れるため住み替えを検討することもあるでしょう。最近では家を売って、買い替える人もいますが、ローン金利や買値・売値の損得、売買の都度のさまざまな税金なども考えると簡単には踏み切れない場合が多いでしょう。

賃貸には、そういうわずらわしさがないのもメリットですが、一方で、賃貸住居は自分のものではありませんから、自分がずっとそこに住み続けたくても、家主の都合で退去を求められてしまうこともあり得ます。その場合、家主から事前に申し出るべき期間が法律で決まっており、次の住居を探す期間が設けられていますが、思い描いていたライフスタイルどおりにならない可能性はゼロではないということです。

○一生の賃貸暮らしはメリットがデメリットになることも

賃貸暮らしはデメリットもあるとはいえ、精神面や金銭面ではメリットのほうが多いようにも考えられます。しかし、「一生」賃貸暮らしを続けるとなると別。若いうちはメリットだと思っていたことでも、年を追うごとにデメリットになる可能性もあるのです。先に列挙したメリット・デメリットでみてみましょう。

一生、賃貸暮らしを続ける場合は、金銭的、身体的な負担感が老後になってから大きくなると考えておくほうが賢明でしょう。

玄関の上がり框、階段、浴室、台所など、家中のあらゆる部分で身体への負荷を和らげるようリフォームを希望しても、家主がリフォームに同意してくれなければ、高齢者が住みやすい住宅へ引っ越しを考えなくてはいけなくなるかもしれません。身体の状況によっては高齢者用施設などへの入居も検討することになりますが、多くの場合は一般住宅に比べて高額です。賃貸から賃貸へという場合は、持ち家を売るということができませんから、貯金などの蓄えを多くしておかなければなりません。

○貯金はどのぐらい必要か?

老後生活資金としていくら必要になるかは、各世帯の暮らしぶりや資産の有無、年金額によっても異なります。一般的には「夫婦で3,000万円」の貯金が必要と言われていますが、これは総務省の「家計調査」や厚生労働省の年金額データ、日本人の平均寿命などを用いて計算したもの。年金を含む平均収入額、平均支出額、平均寿命を元に算出した結果、老後生活資金として年金収入以外に3,000万円程度必要といわれているのです。

ここで注意しておきたいのが、総務省の「家計調査」で60〜69歳の世帯は持ち家率が93%。家賃を払っている世帯はわずか6.7%にすぎず、当データの支出額には家賃がほとんど含まれていないということになります。つまり、一生賃貸暮らしをする人にとっては、この3,000万円だけでは足りず、家賃相当分を余分に貯金しておかなければなりません。

仮に65歳でリタイアするとして、85歳までなら20年分、90歳までなら25年分。人生100年時代とも言われる昨今ですから、最低でも30年分ぐらい払い続ける覚悟はしておくほうが賢明かもしれません。

仮に家賃が月5万円なら、5万円×12カ月×30年=1,800万円かかります。また、賃貸の場合は更新がありますから、2年ごとに更新料と火災保険も必要です。更新料を家賃の1カ月分、火災保険を1万円と仮定すると、(5万円+1万円)×15回=90万円。合わせて1,900万円程度。先の3,000万円と合わせて4,900万円は見積もっておいたほうが良さそうです。

○高齢者向け賃貸住宅の利用も考える

政府は高齢者向け賃貸住宅施策を実施しています。その1つが「高齢者向け優良賃貸住宅」。これは床の段差が少なく、要所に手すりなどを設置した高齢者の使いやすさに配慮した住宅で、所得などの一定条件を満たす場合に家賃軽減を受けられます。入居時の礼金や仲介手数料、また更新料がなく、身体的にも金銭的にも負担が少ない住宅です。一生賃貸暮らしをするなら選択肢の1つに入れておくと良いでしょう。

申し込みは物件によって抽選もしくは先着順なので、希望したときすぐに入居できるとは限りませんが、リタイアが近くなったら物件を探してみるといいですね。

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○著者プロフィール: 續 恵美子

女性ファイナンシャルプランナーによるお金の総合クリニック「エフピーウーマン」認定ライター。生命保険会社で15年働いた後、FPとしての独立を夢みて退職。その矢先に縁あり南フランスに住むことに――。夢と仕事とお金の良好な関係を保つことの厳しさを自ら体験。生きるうえで大切な夢とお金のことを伝えることをミッションとして、マネー記事の執筆や家計相談などで活動中。