圧巻のゴラッソでデビュー戦を飾った鎌田。地元サポーターとメディアの度肝を抜いた。©STVV

写真拡大 (全2枚)

 夏の移籍市場最終日にシント=トロイデン加入を決めた鎌田大地が、9月16日のデビューマッチで格上ヘントを下す決勝ゴールを決めた。
 
 1-1で迎えた79分、鎌田は敵陣ペナルティーエリア左角手前からドリブルで仕掛け、まずはCBデライクを置き去りにする。ベルギー代表デビューを果たしたばかりのMFフェルストラーテが、慌ててスライディングタックルを仕掛けたが、鎌田はそれを冷静に左足で切り返して、右足を振り抜いた。強烈な弾道のシュートがクロアチア代表GKカリニッチの左肩口を抜け、ファーサイドのネットに突き刺さった。
 
  これは地元紙『ヘット・べラング・ファン・リンブルフ』に対する、鎌田の予告ゴールだった。同紙の記者は「僕はJ1のデビューマッチでゴールを決めた。ここでも、そうなるといいと思う」という鎌田の言葉を聞いていた。記録を確かめると2015年5月10日の松本山雅戦で、鎌田は90分に劇的な同点弾を決めて、サガン鳥栖を1-1の引き分けに導いている。
 
 そのまま試合は2-1で終わり『ヘット・べラング・ファン・リンブルフ』紙は「カマダはこの夜の英雄になった」と称え、CBで堅い守備を見せた冨安健洋らとともにチーム最高点の「7」を与えた。

 
 わずか30分間の出場で強烈なインパクトを与えた鎌田を試合後、ベルギーメディアが取り囲む。
 
「左サイドハーフはドイツでもやっていたけれど、僕はあんまりスピードがないので難しかった。ベルギーは、前半からDFラインとFWの間が空いていてスペースがあった。ペナルティーエリアの中の1対1には絶対的な自信がある。今日は、その前に1対1の場面でボールを失なうシーンがあったので、2度目(の1対1)だった」 
 
 個の力でヘントのDF網を切り裂いたスーパーゴールに、ベルギー人記者たちも色めき立って「このゴールは、カマダ選手自身にとっても、ここ数年でもっとも美しいゴールだったのでは?」と尋ねた。しかし、鎌田はほとんど表情を変えず、「練習では、ああいうゴールをよく決めていた」と答えてから、こう続けた。
 
「ただ、最初のゲームでこうやって結果を残すのは僕自身にとっても大事なこと。ブンデスリーガではそこが最初にうまくいかなくて、自分の位置がなくなった。それで、今日は大事な試合だと思っていた」
 
 フランクフルトに移籍した昨季、鎌田のブンデスリーガ出場は3試合に留まり、昨年の11月25日以降、ベンチ入りすら果たせなかった。だからだろう、鎌田には新天地でのデビューマッチに期するものがあった。
 
 ベルギー人記者たちが、さらに「ペナルティーエリアの中では、いつも落ち着いているのか?」と畳み掛ける。
 
「そうですね。ゴール前で1対1になれると絶対に抜けるというか。ゴール前には自信がある。そこでボールに触れる回数さえ増やせれば、年間を通してしっかり点を取れるかなと思います」
 
 ヘント戦では攻撃的MFベズスが退場となってしまった。ベルギー人記者たちは「ポジションが空くから次節(アントワープ戦)は先発するんじゃないか?」と鎌田に訊いた。
 
「(誰を起用するかは)監督が決めること。試合に出られるなら、(ポジションは)どこというのはない。うちの中盤はスイッチしたり、戦術が変わっているというか……。前、練習試合をしたとき、それで頭が混乱したイメージがある。どこで出るかは分かりませんがしっかり結果を残さないといけない」
 
 実に地に足の着いた返答だ。ベルギー人記者たちの鎌田への期待は、高まるばかりである。
 
取材・文●中田徹