海で見殺しにした難民と5年後に再会、そのとき両者は...深遠なテーマが高評価の『Safe Harbour』

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レジャーボートで過ごす最高の休日。そんな時、もしも沈みゆく難民船を発見したら――。豪SBSで3月に放送され、視聴者に深い問いを残したドラマ『Safe Harbour(原題)』。米Huluでの配信が8月24日(金)から始まり、批評家からは深遠なテーマを扱った力強い作品だとの評価が相次いでいる。

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■見殺しにした難民と、5年後にバッタリ
インドネシアに向けてヨットで航海中だった、オーストラリア人6人組。生涯最高の休日を謳歌していた彼らは、亡命者を満載した難民船を発見する。船内の惨状を目にするや否や、オーストラリアへの密航を手助けすると決意。しかし、夜のうちにそこにいた何者かによって曳航のためのロープが切断されてしまう。難民船を嵐が襲い、人々は海に投げ出される。

5年後、ブリスベン市街。スーツに身を包んだライアン(ユエン・レスリー)がタクシーに乗ると、運転席に見覚えのある姿が。嵐を生き延びた難民、イシュマエル(ヘイゼム・シャンマス)との再会となった。親切にも招待したディナーの席で、イシュマエル、その妻ザラ(ニコール・チャマウン)、息子アサド(ヤジード・ダハー)からは予想外の反応が。娘ヤスミン(マハ・リアド)を海で失っていた彼らは、ライアンたちを殺人者となじる。聞けば、全体で7人が命を落とす惨事となっていた。ドラマは双方の異なる立場を通じて、レジャーボートが難民たちをいつ、どうやって、そしてなぜ見捨てたのかを紐解いてゆく。

■相容れぬ二つの視点
レジャーボート側のオーストラリア人たちは、予期せぬ再会に様々な感情を抱く。事件に向き合う機会だと意を決する者もいれば、忘れようと決意したことがまた舞い戻ってきたと憂鬱に感じる者も。一方、難民側にとっては片時たりとも忘れることのできなかった事件。イシュマエルと家族は娘の死を引きずっており、双方の感情の違いが際立つ。

こうした立場の違いを指摘する米IndieWireは、複雑な感情を丁寧に描写した作品だと評価。どちらかを一方的に正義とみなすようなことをせず、安易な勧善懲悪を避けた作品だ。罪の意識に苛まれながらも、贖罪の術を知らないライアン。また、ヤスミンを亡くしたイシュマエルたちも、その死にいまだ意味を見出せず戸惑う。こうした両者の心情が巧みに表現されていると同メディアは評価し、作品の奥深さを讃えている。

シリーズの根底に流れるテーマは人間性だ、と見るのは英Guardian。各個人の価値観に基づく判断を取り上げた作品であり、決して個人の善悪を評論するスタンスではないと述べている。本質的に似ている作品として同メディアは、2003年のアメリカ映画『砂と霧の家』を紹介。家を手放すことになった孤独な女性が、新たに家のオーナーとなった移民家族と対立するストーリーだ。本作も同様に、人種・移民問題を登場させながらも中核とはせず、むしろ事件をきっかけとした個人の選択を描くスタイルとなっている。

■緊急の状況下で問われるモラル
物語は開幕からほどなくして、登場人物たちの行動が法の下に裁かれる展開に突入する。しかしGuardianは、法的な判断はドラマのメッセージとしては重要でないと解釈している。人間としてのモラルが本作の最も大切なテーマであり、そして悲痛なことに、そのモラルでさえ究極的には主観的判断でしかないのだと説く。愛、哀れみ、人間性という力強いテーマを持った作品だとの評価だ。

誤解から生まれた悲劇とその余波を描く刺激的な物語だ、とIndieWireは述べる。こちらも法の観点が劇中に登場すると述べた上で、長々とした法廷シーンは意図的に避けられているともコメント。むしろ法律で罰することのできない責任と許しの部分こそが物語の主眼になっていると見ており、人間性が作品の主題であると強調している。

『Safe Harbour』は米Huluで配信中。先述の、移民問題とヒューマニティに焦点を当てた映画『砂と霧の家』に興味のある方は、日本ではNetflixで配信中。(海外ドラマNAVI)