引退する安室奈美恵さん(Getty Images)

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 9月13日に滝沢秀明さんが年内での引退を発表、16日には安室奈美恵さんがこの日限りで引退。「トップクラスの芸能人が相次いで引退」という事態が起き、各メディアはこの話題で持ち切りです。

 しかし、表舞台を去る芸能人は2人だけではありません。8月にはフリーアナウンサー・小林麻耶さんが引退、6月には女優・小泉今日子さんが女優業休養、4月には2年連続で紅白歌合戦出場の歌手、クリス・ハートさんが無期限活動休止、1月にはアイドルグループ・ももいろクローバーZの有安杏果さんが引退を発表しました。

 昨年を振り返ってみても、堀北真希さんや江角マキコさんらが引退するなど、ジャンルと年齢の異なるさまざまな芸能人が表舞台から姿を消しています。裏方転身や家族のためなど理由はさまざまではあるものの、なぜトップクラスの芸能人が表舞台を避けるようになっているのでしょうか。

芸能界には「裏方への転身」が多い

 滝沢さんはジャニーズ事務所のジャニー喜多川社長から、「プレーイングマネジャーになる」という選択肢を提示されたものの、これを丁重に断ったそうです。その潔さに称賛が集まっていますが、滝沢さんが裏方の仕事にやりがいを感じているのは間違いありません。

 そもそも芸能人とスタッフの仕事は真逆。「輝かせてもらう」側の芸能人と、「輝かせる」側のスタッフは、やりがいも適性も大きく異なります。

 実際、滝沢さんのように、「自分が出るより、プロデュースや演出の方が面白い」「出てみたけど、裏方の方が性に合っていることに気づいた」という人は少なくありません。たとえば、安室さんは「引退後に音楽プロデューサーになるのではないか」という声がありますし、小栗旬さんはこれまで何度か「いつかは裏方に回りたいと思っている」と語っていました。

 俳優なら映画監督、舞台演出家、脚本家。芸人なら構成作家、ライブプロデューサー。アーティストならイベントや他アーティストのプロデューサー。つまり、芸能界ではよくある話なのですが、滝沢さんや安室さんのように「きっぱり辞める」という潔い去り方が増えていることに驚かされます。

隠し切れない精神的な消耗

 そんな潔い去り方の源となっているのは、「やりきった」という達成感と、「もう十分」という精神的な消耗の2つ。

 滝沢さんは現在36歳にして約23年、安室さんは40歳にして約27年のキャリアを持つ、事実上のベテラン芸能人。長いキャリアの中で裏方の楽しさを知り、「自分のパフォーマンスは今がピーク」と感じた時に辞めるのも不思議ではないのです。

 一方で懸念されているのが、ストレスや疲れによる精神的な消耗。ネットやスマホの発達で、記者のみならず一般人からも24時間365日間監視され、プライベートがない状態になりました。飲食店やコンビニに出入りする姿まで撮られ、一度ミスをすれば激しいバッシングにさらされるリスクがあるなど、緊張度の高さに心を病み、病気など身体の異変を訴える人も少なくないのです。

 もう一つ見逃せないのは、「病気療養での活動休止」を発表するタイミングが以前より早くなっていること。以前は活動休止の発表はせず、療養しながら少しずつ活動するなど「休んでいる」という印象を与えないようにするのがセオリーでしたが、現在は自ら早めに明かすようになりました。

 その理由は、ネットメディアやSNSに、「落ち目だから」「職場放棄」「原因は不仲」「事務所に不満」などの憶測を書かれないようにするため。ネガティブなイメージが定着しないように、先手を打つ形で発表しているのです。

飽和状態の芸能界で戦うことに疲れた

 最後に触れておきたいのは、芸能人の多さ。現在の芸能界は、子役からティーン、若手、中堅、ベテランまで全年代の芸能人が、テレビ、映画、雑誌、ネットまで、さまざまなコンテンツに出演しています。

 露出や報酬の多少はさておき、メディアが多様化したことで芸能人としての寿命が延び、スカウトやオーディションに限らずデビュー方法が増えたことで、「上の世代を見ても、下の世代を見ても芸能人ばかり」になりました。特に10代のアイドル、20代の俳優、30代のトップスターは、飽和状態の芸能界で戦うことに疲れ、「楽になりたい」「自由が欲しい」と考えて表舞台を去る人が増えているようです。

 しかし、表舞台から去ったところで、「スターだった」という過去は消えませんし、その姿を追いかけられてしまうこともあるでしょう。芸能記者は「仕事だから」と追いかけたとしても、私たち一般人はそれに流されることなく、プライバシーを尊重したいところです。