石田純一

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石田純一の「これだけ言わせて!」 第3回

 日本では、避妊のことは学校でも生徒を集めて教えているが、妊娠についての教育はほとんど行われていない。だから、30代も後半になれば妊娠しにくくなる、という客観的事実に鈍感なまま、一定の年齢まで過ごしてしまう女性が後を絶たない。妻の理子も、運動をして体を鍛えているから、いざ産もうと思えばすぐに産める、と楽観していたようだが、そう簡単ではなかった。ご存じのように「妊活」によって、結果的には幸い3人の子宝に恵まれたが、同様に根拠のない自信過剰があだとなり、子供を産むチャンスを逸してしまった女性も少なくないと聞く。

 避妊については「教えている」と書いたが、過去には教えるどころか、ある強制も行われてきた。それは1948年に制定され、96年まで存続した優生保護法によるものだ。この法律には二つの目的があった。一つは、優生学上の見地から、病気や障害をもつ子供が生まれてこないようにするという目的。もう一つは、母性の生命と健康を保証するという目的。女性を、妊娠したり出産したりする機能をふくめて保護し、健康でいてもらうという意味だ。優生保護法では、これら二つの目的のために、不妊手術や人工妊娠中絶を行う条件や、避妊具の販売や指導について定められていた。

石田純一

 要するに、障害があって、同様に障害がある子供を産む可能性がある人に勝手に手術を行い、生殖機能を奪ってもよい、と定められた法律が優生保護法だったのだ。だから、妊娠、出産する機能をふくめて保護、というのは建前で、実際には、そういう権利が奪われた女性が大勢いた。都道府県の優生保護審査会が判断し、本人の同意がないまま行われた不妊手術は、統計上に見えるだけで1万6500件もあるといわれている。対象の半数以上が未成年だった地域もあり、9歳、10歳の子供にまで行われていたケースもある。

 優生保護の考え方はナチス・ドイツも共有し、日本固有のものではない。行われていた国はヨーロッパなどにいくかある。ただ、いずれも過去の非を認めて謝罪し、補償について話し合う段階に移行している。一方、わが日本政府はあくまで、そのときは合法かつ適切な判断だった、という姿勢を崩していない。いくらなんでも酷い姿勢ではないか。僕はそう思う。

 そんな日本政府の姿勢に対し、16年に国連の女子差別撤廃委員会が、17年には日本弁護士連合会が、「被害者に謝罪すべきだ」という声明を出している。今年になって、超党派議員連盟も、強制不妊の被害者の救済を主張し、毎日新聞の調べでは、3月中旬から7月末までの5カ月弱で、全地方議会の約1割に当たる160議会で「被害者救済を」という意見書が採択されているという。

 それでも、いまのところ政府は謝罪する姿勢を見せていない。ドイツは「二度と過ちを犯してはならない」と自らを律している。日本も、広島の原爆死没者慰霊碑には、「安らかに眠って下さい 過ちは繰返しませぬから」と記されている。それなのに、過去と向き合わない日本政府の姿勢は、残念でならない。

石田純一(いしだ・じゅんいち)
1954年生まれ。東京都出身。ドラマ・バラエティを中心に幅広く活動中。妻でプロゴルファーの東尾理子さんとの間には、12年に誕生した理汰郎くんと2人の女児がいる。元プロ野球選手の東尾修さんは義父にあたる。

2018年9月15日 掲載