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2018年7月11日、新宿バルト9(シアター9)で『サンライズフェスティバル2018光焔 おんがく!!〜アイカツ!編〜』が開催された。



出演者はTVアニメ『アイカツ!』の木村隆一監督、音楽を担当したMONACAの石濱 翔、帆足圭吾、田中秀和、音楽プロデューサーの黒田 学の5名。司会の呼び込みで5人が登壇し、まずはひとことずつ挨拶。続いて上映されるアニメ「アイカツ!」の20話・59話で流れる音楽をまとめた表【※図版参照】がスクリーンに映し出されると、会場からは大きなどよめきが起こった。





そのままの流れで、登壇者は客席の最前列に用意された席へと移動し、20話・59話を上映しながらのコメンタリーが行われた。コメント内容は以下のようなものが披露された。

<オーディオ・コメンタリーより抜粋>※以下、敬称略

■20話「ヴァンパイア・スキャンダル」



田中:(「アイドルのデータバンク」を聴いて)リズムトラックの感じとかすごく岡部さん【※MONACAの岡部啓一氏、作曲・編曲・プロデュースなどを手がける】ぽい曲。

帆足:バンク【※劇中で繰り返し使用するシーンを言う、ここでは「芸能人はカードが命」が使われているフィッティングシーンのこと】の発注がギリギリで、映像を頂いて制作するんですけど、いろんなところがギリギリでした(笑)

木村:(「血を吸うわよ?」を聴いて)ここが高田さん【※MONACAの高田龍一氏、作曲・編曲を手がける】ぽい、という特徴はあるんですか?



石濱:芸大の音、アカデミックな音がします!

木村:劇伴の発注のMONACA内での割り振りは、打ち合わせのあとに持って帰ってもらって、社内で得意な人で分担してくれている。

黒田:(「ここはスターライト学園」を聴いて)帆足さんの曲はオーケストラ編成、クラシカルな印象があります。

帆足:(この曲は)ネットで某RPGっぽいといわれていて、めっちゃわかると思いました。(笑)

木村:「アイカツ!」は子供向けだから、普通のアニメよりも若干劇伴を多くつけているんですよ。

石濱:(劇中の楽曲を聴きながら)このサウンドは「圭吾D」っぽいですね。「圭吾D」と呼んでいる(帆足さんの曲でよく使われる)シンセサイザーのピアノ音源のプリセットがあるんです。

帆足:自分で弾くときに一番良くなる感じになるようにカスタマイズしていて、シンセの音源と一緒にプリセットも渡したらめちゃくちゃ石濱さんにいじられていたんです!



田中:ぼくのときはもう「圭吾D」使えなくなっていたんですよ…。

帆足:スタインウェイのDグランド【※高級グランドピアノ】っぽい音を再現したものですね。でもあれ、もう古い音だからあんまり使わないほうがいいですよ!(笑)

帆足:(「硝子ドール」は初めての歌ものだったため)加減がわからず(笑)。カラオケで歌うときに間奏(約1分50秒)が長すぎて無言になる、といわれて、本当にすみません(笑)

田中:(「親友でライバル、ライバルで親友」を聴いて)これいい曲ですよね。岡部さんのメロディー、さすがです。

木村:「アイカツ!」初期の劇伴制作の思い出とかってありますか?

田中:当時岡部さんが骨折していて、初期の曲を聴くと「痛そうだったなあ」って思います(笑)

石濱:初期の楽曲はリミックスとかも見越して制作して納品していましたね。

帆足:どの楽曲もレイヤー【※階層】を細かく分けて、ステム【※リズムやメロディー、楽器別などバラバラのデータ】で納品していました。

木村:映像の編集のときにステムが必要になるんですよね。

木村:(サウンドトラックに収録されている)劇伴のタイトルは臼倉さん【※ランティスの音楽プロデューサー】が付けています。



帆足:その楽曲が初出のシチュエーションがタイトルになっている感じですね。

(作曲する際はどんな楽器が作りやすいですか?)

石濱・帆足・田中:鍵盤です。

石濱:鍵盤なんですけど、歌ものやギターメインの曲を作るときはギターを弾いてみたりします。

帆足:(「芸能人はカードが命!」は)2年目の劇伴発注の際に音響監督の菊田浩巳さんから「ゴージャスに」という依頼があった【※毎年、同じ曲でバージョン違いが作成され4種類作られている】。サビに入る前のところを変化させて対応している。

(「硝子ドール」に関して)

帆足:北欧のメタルバンドの曲を例に挙げられて、ドラマチックな感じのすごくヘヴィな楽曲にしたいと言われまして。

木村:このころは水島精二さんがスーパーバイザーとして参加してくれていて、水島さんがメタル好きだからそういう注文になった。



帆足:僕もメタルは好きなのでどれくらい本気で作ったらいいのか? 本気で作ると小さい子が泣いちゃいますよ? と言ったら、本当にガチでやってという話をされた(笑)。かなり悩んだ記憶があります。

木村:この曲はすごいインパクトがありました。ユリカの人気はこの曲のおかげもあるのかな、と。ユリカは出す前は不安なところもあった。吸血鬼キャラで……。

田中:「カレンダーガール」も水島さんからのリテイクが何度かあって、曲中や冒頭のボーカルの(声を加工する)フィルターの処理など最初は入れていなかった。途中の「Yeah!」というコーラスは逆に水島さんは入れたくないと言っていたのを、僕がわがままで入れた。最近お会いしたときに「やっぱり入れてよかったね」と言ってもらえてよかった。

■第59話「ちょこっと解決☆チョコポップ探偵」



(2年目の音楽発注がギリギリのスケジュールだったという話を受けて)

木村:「アイカツ!」の発注がギリギリじゃなかったことはないよ!(笑)

(OP「KIRA☆Power」を聴いて)

石濱:これミックス(楽曲の最終調整)し直しましたよね。ゲームの筐体とアニメでは若干違うんですよね。鳴りが違う気がします。

帆足:当時のデータカードダスの筐体ってモノラル【※スピーカーが1つ】でしたよね?

石濱:(サビ前部分を聴いて)今のところ逆位相【※音の波形の基準となるものに、山と谷を逆にした波形を重ねること。異なる波形をステレオで同時に聞くことで、効果が生まれる。】を貼っているのでモノラルだと音消えちゃうんですよ(笑)

今聴くとすごくやり直したい。なので、ageHa(で開催されたDJイベント)では(この楽曲を)かけませんでした(笑)

帆足:(「井戸端会議」を聴いて)(2年目に問題になったのが)日常曲がぜんぜん足りないという話をされた。

黒田:1年目はバリエーションも含めると70曲くらい作っていますよね。

木村:そう、それでも当初よりも日常ばっかりで使い切っちゃった(笑)



木村:(MONACAのメンバーで)劇伴を割り振るときってみんなでテーブル囲んで決めたりするんですか?

帆足:みんなでテーブル囲んで決めますね。

田中:挙手制みたいな感じです。

帆足:(楽曲の)オーダーとリストを見て『ピンと来る人はいる?』と聞いても誰も何も言わない(笑)

石濱:だいたい『○○といえば〜?』みたいな大学の飲み会みたいなノリで決まる(笑)

帆足:『この曲はこのジャンルって指定があるから、このジャンルが一番得意な人といえば〜?』とみんなでその人を見て決まっていく。「芸能人はカードが命」も『バンクと言えば〜?』みたいな感じで決まって(笑)

(「オケオケオッケー♪を聴いて」)

木村:キャラクターがどんどん増えてくるとキャラの曲を発注することでオーダーが埋まっていくようになって。1キャラに2曲ぐらいは定番の曲を作ってもらっていた。

帆足:ネットで「アイカツ!」の音楽は某スマートフォンの着信音っぽいといわれた(笑)。

ピアノ、エレキ、マリンバの(シンセサイザーの)音色をよく使うので、それが某スマホっぽさにつながっているのかも。

田中:「新・チョコレート事件」はゆなさん【※STAR☆ANIS】がひとりで二役(かえで・きい)を歌い分けている。ほとんど芸。ショートバージョンのあと、フルバージョンを収録するときに「もっときいのキャラクターを出せそう」とゆなさんから提案があって録り直しています。

木村:いろんなシチュエーションの劇伴を作ってもらっていたから、3年目のころにはバラエティ豊かに曲が揃っていた。



田中:「オリジナルスター☆彡」は「カレンダーガール」の系譜として作った。アース・ウィンド・アンド・ファイアー【※ファンク・ミュージックを代表する名バンド】のオマージュ要素を入れた、特にイントロやAメロは意識している曲なので、EDの映像に「EARTH」という文字があって驚きました(笑)。

木村:作った石川さんは全く意識してないと思いますね(笑)。

<トークセッションパート>

2話分のコメンタリー終了後は、トークパートがスタート。

■MONACAのアツい「アイカツ!」愛



――イベントの前にMONACAの皆さんに、今回のイベントで上映した2話以外で印象に残った話数をお聞きしていたのですが、石濱さんが第178話「最高のプレゼント」、帆足さんが第6話「サインに夢中!」、田中さんが第50話「思い出は未来のなかに」となっております。何かエピソードがあれば教えていただければと思います。

石濱:第178話は最終話ですから、選んだ理由はもう言わなくても分かると思うんですけど(笑)。ただ、自分が選んだ理由としては「START DASH SENSATION」がフルでかかるのが大きいですね。あの曲はDメロが流れることにいちばん意味があるかなと思っていたので……。

木村:そうですね。

黒田:2番のBメロ、「あの日があって今が〜」という歌詞から始まるところは、映像と曲がすごく合っていて、エモいなと思いました。すみません、ただの個人の感想です(笑)。



木村:あの「START DASH SENSATION」が流れるところは、シナリオにはセリフがないんです。僕が絵コンテを書くときにセリフを入れて行っているので、割と歌の内容に映像を合わせているんですよ。

――逆「フィルムスコアリング」みたいな感じですか?【※「フィルムスコアリング」は、映像に合わせて劇伴音楽を作成する制作方式。映画の劇伴ではこの方式がとられることが多い。】

木村:そうですね。「START DASH SENSATION」をフルでかけたいというのは加藤(陽一)さん【※「アイカツ!」のシリーズ構成。シリーズ構成とは、作品のシナリオ全体のディレクションを行う。】にも言われていて、マラソンをするシーンでフルにかけるというざっくりとしたアイデアまではシナリオに書いてあったんです。そのアイデアを元に、歌に合わせる形で絵コンテを描いて、セリフをつけるところは僕がやりました。……ぶっちゃけ、めちゃくちゃ時間がかかって、スケジュールを遅らせてしまったんですよね(笑)。でも、おかげでそれまでシリーズに出てきた人たちがみんな出てくる、面白いものになりました。



――まさに、あのシーンがあっての178話ですよね。帆足さんが第6話「サインに夢中!」を選ばれた理由は?

帆足:ごめんなさい、僕、曲となんの関係もなく選んでしまいました(笑)。単純にストーリーですね。すごくシリーズ初期の頃の話で、まだ駆け出しのアイドルが、ファンの人たちに書くサインを考えるときに張り切りすぎて、むちゃくちゃ難しいサインを考えてしまって、実際にお客さんの前で書くときに困るという。書くのに夢中になりすぎて、時間がかかりすぎて、書く方もどんどん顔がしなびて行くし、並んでいた列からはどんどん人がいなくなっていく……という描写を見て、「ちゃんと自分が頑張るのもいいけど、受取り手側のこともちゃんと考えなくちゃいけないよ」という、教訓を得られたんですよね。MONACAのみんなで「これは多分、アイドルだけじゃなくて、うちらの仕事もそうだよね」といいながら観ていた記憶があるんです。とても勉強になった、色々と気づかされた話数で印象に残っています。……本当に音楽と何も関係なくてごめんなさい(笑)。

田中:いやいや、たしかにサインの話は、音楽でも考え方は一緒です。「音を詰め込めばいいってもんじゃない」という話にもつながる。

――楽曲制作のときには、要素を引き算することが必要なときもありますよね。

田中:そう。相手の目を見てね、作らないと。

帆足:聞く人、歌う人のことをちゃんと考えて書かないといけませんよね。

――田中さんは50話「思い出は未来のなかに」です。

田中:はい。僕、このお話大好きで、何度見てもウルっときてしまう。これも逆「フィルムスコアリング」といいますか、加藤陽一さんがこの回の脚本は書かれたんですけど、「カレンダーガール」がライブシーンから繋げる形でフルコーラスで流れるんですね。で、ちょうどDメロ、「思い出は未来のなかに」という歌詞のところで、あおいちゃんがスターライト学園の門を見て、最初に登校したときのことを思い出して、涙をポロポロッと零して、それがキラキラ〜っとなびくんですけど、涙と「カレンダーガール」の落ちサビ前のウィンドチャイムの音が合っているんですね。このアイデアは、ずっと前から加藤さんがやりたいと言っていたんですよ。

木村:たしかに、あの表現はシナリオですでに書いてあったものでした。

田中:やりたいとおっしゃっていたことがきちんと実現されていたことにも感動しましたし、話も素晴らしいですし、いちばん思い入れ深い回です。

■駆け抜けるスケジュール



――では、あらためてここからは楽曲制作を行っていた当時の思い出を振り返ってまいります。実際に使用された楽曲の制作スケジュール表を見てみましょう。(イベントではスクリーン全体に制作スケジュール表が映されました)

表の中でみなさんがいちばん不思議に思われるのは、「スポッティング」という枠ではないでしょうか。黒田さん、解説をお願いします。



黒田:「アイカツ!」という作品の特徴として、アニメとDCD(データカードダス)、つまりゲーム筐体との連動展開があります。そのため楽曲制作時には、まずゲームに必要なショートサイズの楽曲を制作します。曲の発注後に、まずは曲のラフ、「こんな曲ですよ」というイメージを掴むための音源を提出していただいて、それをもとに歌詞をつけていただく。そうして出来上がったラフ音源と歌詞を元に、ゲームのダンスシーンでの振り付けやモーションキャプチャーをとるための、尺とテンポとこういう曲だというのが分かる素材を用意する必要があるんですね。「スポッティング」の締切というのは、そのゲームのダンスシーンのための素材をここまでに用意してください、という意味なんです。

――となると、ゲーム連動がないアニメよりもスケジュールがかなり前倒しされるわけですよね?

黒田:そうですね。アニメーションでダビング【※セリフと音楽、効果音をまとめる音響作業】をする段階よりもだいぶ前にゲームの作業は進んでいるので、発表する半年以上前に曲の制作は始まっている状態になります。

田中:ショートサイズとフルサイズの締切に時間差が結構あるんですよね。一ヶ月とか、長いときは二ヶ月とか違う。

黒田:フルサイズの楽曲はCDに収録するために作成するものなので、極論をいえばCD 収録用のマスタリングの作業に間に合えば問題ないからですね。

――今ご覧いただいた音源制作のスケジュールを、アニメの放送と合わせた表が次のものになります。



――ピンク色のところが1年目の放送軸で、水色と青が2年目になります。1年目の後半に入ったあたり、5月の時点で1年目最後の劇伴の納品が終わっています。

黒田:1年目の放送途中には、もう次の年の楽曲を発注していますね。

木村:2年目の10月に放送される曲を3月ぐらいに発注しているから……7ヶ月前くらい。さきほどお話があったとおり、ゲーム筐体に合わせてショートサイズのスケジュールが前倒しされることを考えると、アニメで使われる7ヶ月前の発注であっても、結構ギリギリなんですよね。

――劇伴の発注が何度かに分かれていますが、1年間かけて放送するアニメの劇伴は2〜3回に分けて発注することが多いです。とはいえ『2013年8月・2年目の劇伴発注(1回目)』とあり『2013年9月・2年目の劇伴 最初の納品』は20日ぐらいしか空いていません。すごいスケジュールです。

木村:歌ものはシナリオと関係なく発注できるのですが、劇伴はシナリオがないとどうしようもないですからね。そんなこともあって、どうしてもやや発注まで時間がかかってしまうんです。

黒田:音響監督の菊田浩巳さんに劇伴メニュー……「こういうイメージの曲がほしいですと」いうリストを書いていただくんですけど、シナリオがある程度溜まったところで書いていただくことが多いんです。それを待っている間に、時間が経ってしまうこともありました。



――表には2013年の9月23日に劇伴の「芸能人はカードが命!Ver.2」が納品されたとありますね。

石濱:(10月から放送開始なので)日付で言われるとドキっとします(笑)。

帆足:いやぁ、20日くらいにまだ収録していた覚えがあります(笑)。

――そして2014年5月9日に最後の納品。二年目の後半のオンエアが始まったころに、2年目の劇伴の納品が終わる。

帆足:振り返ってみるとものすごいスケジュールでしたね(笑)。

■「アイカツ!」ならではのこだわり



――「アイカツ!だからできたこと」と題して、「アイカツ!」ならではの楽曲の制作方法、こだわりを聞いていきたいと思います。たとえば、本作品の特徴のひとつに、MONACAのみなさんが「歌もの」と「劇伴」を同時に手がけていたことがありますよね。この点について、何か大変だったことなどあればお聞きしたいです。

石濱:それでいうと、歌ものと劇伴で僕はメロディーの作り方が違うので、頭の切り替えは大変でした。同時進行していると、劇伴なのにすごく歌ものっぽいメロになってしまったり、逆のケースもあったりしがちでした。

田中:僕もその難しさはありました。歌ものはメロディーとそれに伴う和声、いわゆる「作曲」と呼ばれる作業から作ることが多いです。最終的にどういうアレンジになっても、歌のメロディーがしっかりしていないといけないな、と思うので、その根幹の部分をきちんと作る。そして劇伴はむしろ、歌ものでいうところの「編曲」の部分、いわゆるマニピュレート的な、サウンド(音色)の部分から考えることが多いです。どういう音が響いているのかが劇伴のおもしろさで、メロディーよりも大事だなと思っているんですよね。

帆足:例えば、歌ものはピアノとか、ひとつの楽器で作れる。劇伴は完成形を想定して、使うつもりの楽器で作る。そんな感じですよね。気持ちはすごくわかる。

田中:ああ、そうですね。たしかに歌ものは、ピアノで伴奏を流して考えるし、劇伴は完成形を作っている最中から想像しています。

帆足:僕はその……大きな違いでいうと、劇伴は基本リテイクがないのですが、歌ものはリテイクがあるというのが違いかな(苦笑)。かなりリテイクのあった曲もあるので……。

木村:そうなんですか?

石濱:「ヒラリ/ヒトリ/キラリ」かな? 8回ぐらいリテイクがあったんです。

木村:そんなに!? それは知らなかった。

石濱:サビ前の「つかみとれ!」の叫びのところなんですけど、「もっと熱く!」とリテイク指示があって、いろいろ考えました。デモ音源は当然、声が入っていないバージョンなので、叫ぶところもシンセベル【※シンセサイザーによるベル系の音】なんです。これをどうやって熱くしたものか……と。深夜までやりとりしたのを覚えています。それ以外の曲でも、最終的な形にいたるまでのいろいろなバージョンの音源が家にあるんですけど、聴き比べてみると最初に書いたものと別の曲になっているものも結構ありますね。

――今日はいらっしゃいませんが、MONACAの岡部啓一さん、高田龍一さんの手がけられた楽曲もたくさん使用されています。お二人の楽曲の中で、お三方がお気に入りの曲を質問させていただいたのですが、まず石濱さんは「同じ地球(ほし)のしあわせに」です。

石濱:単純に曲としていいですよね。綺麗で。その雰囲気が、歌うキャラ(北大路さくら)にも合っているなと感じましたし、僕には絶対に書けない曲だなというのもあります。羨ましいというのと、いつかこんな曲が書いてみたい。選んだ理由はそんなところですかね。

――帆足さんは岡部さんの曲で「Wake up my music」、高田さんの曲は「右回り Wonderland」を選んでいただきました。

帆足:「Wake up my music」はもう作品の顔である若い世代のアイドルを目指している人たちと、その対になる感じの一世代上のアイドルたちの感じ、新しい感じと懐メロっぽさが合わさっていて、我が社の最大のよさが出ているなと思いました。 「Wake up my music」はアレンジのパターンも多いんですよね。

木村:これってもともと劇伴でしたっけ?

黒田:先にマスカレード【※劇中ユニット】の劇伴曲として作ったのを、あとから歌ものにしたんです。Bメロの最後とかはメロディーも少し違うんですよ。



――主題歌のアレンジを劇伴にするというのはで昔のアニメからずっとある手法ですが、逆バージョンなんですね。

帆足:そうですね。それをやるのって難しくて、多分、すごく苦労されたんじゃないかと思います。「右回りWonderland」はアカデミック感が出ているのと。あとプログレ【※プログレッシブ・ロック。キング・クリムゾンやピンク・フロイド、ドリーム・シアターなどに代表される、クラシックやジャズ、現代音楽などの要素を取り入れたロックのこと】感がいいなと思いました。自分はプログレ大好きっ子なので、「ああ、プログレだ、この曲は。最高だ……!」と思いながら聴いていましたね(笑)。

黒田:これは曲中でテンポも変わりましたっけ?

帆足:拍子とテンポがサビで全部変わりますね。

黒田:はじめ、ゲーム筐体の方の縛りで、「曲のテンポは一定じゃないといけない」というルールがあったんですけど、途中からアリになったんですよ。

帆足:そうそう。途中から変わりましたよね、仕様。

――田中さんも選ばれたのは同じ二曲です。

田中:はい。「Wake up my music」は歌詞も素晴らしいですが、メロディーがすごく強いんです。モチーフの強さが素晴らしい。それと、「右回りWonderland」は帆足さんも言うアカデミックなところが好き(笑)。アカデミック……どう伝えたらいいのかな……転調【※曲の調(キー)が変わること】とかに、高田さんにしか書けない感じがあるんです。高田さんご本人にも「あの曲めちゃ好きですなんですが、和声(コード進行)はどうやって決めているんですか?」と聞いたら「いや、あれは普通だよ?」と返されたんですよね(笑)。これで普通なんだ、やっぱりすごいなと思いました。

■「アイカツ!」後の「アイカツ!」



――「アイカツ!」は放送が終了し、シリーズが「アイカツスターズ!」に移行してからも、いろいろな展開がありました。たとえば石濱さんは今年(2018年)3月に開催された「アイカツ アニON ALL-MIX in ageHa 」に DJ として出演されましたが、いかがでしたか?

石濱:いやー、DJをやったことがない人をageHaのメインステージにあげちゃダメなんですよ(笑)。めちゃくちゃ練習しましましたけど、そのぶん、手元だけ見ていて全然 DJ らしい動きができなくて。

――会場をアゲる、みたいな?

石濱:そう。あれは全然できない。

――今後もDJをやっていきたい気持ちはあるんですか?

石濱:多少……ですかね(笑)。

――ゲームでも、サービスが終了してしまいましたが、『アイカツ!フォトonステージ!!』通称「フォトカツ!」が大々的に展開されて、こちらでは木村監督が作詞家デビューをされていました。この発注はどういう経緯で行われたのでしょう?



黒田:「フォトカツ!」内のイベントで、いちごとあおいにドレスを着せる話があったんですね。6月だし、ジューンブライドで、もちろん直接結婚するわけではないですけど(笑)、そのニュアンスを上手く歌詞に書いていただける方に作詞をお願いすることになった。で、本職の作詞家さんに当然お願いしようと思っていたんですけど、これはちょっと荷が重いなと。そこで、忙しい時期ではあったんですが木村監督に何とか時間を作っていただきました。もともと音楽に精通されている方なので、言葉の選び方とかもこだわっていらっしゃって……。

木村:緊張しましたよ。

黒田:でも、上がってきた歌詞が、なかなか作詞家さんじゃない方が書くと音符の置き方や譜割りが不安定だったりするんですけど、木村さんは本当にばっちり書いていただいて、感動しました。

木村:譜割りは言葉が気持ちよく聞こえるように、一応こだわって、がんばってみたんです。

黒田:歌いわけも歌詞と一緒に考えていただいたので、作品としてとても良く仕上げていただきました。

――その「青い苺」のあとにも、「マジックスマイル」「月夜のラグタイム」と二曲の作詞をされています。

黒田:偶然なんですが毎年6月のイベントの曲なんですよね。最後の「月夜のラグタイム」はユリカとかえでの曲でした。

木村:これはもう、かえでなら俺がやるしかないなって(笑)。

(客席拍手)

木村:誰か人に書いてもらうつもりで、アイデアのメモを先にバーっと書いて渡しているんですけど、そうしたら黒田さんからメールが返ってきて、「あんたが書け」と(笑)。

――「フォトカツ!」のサービスは終わってしまいましたが、CD も沢山出ております。オリジナル楽曲も多数あり、CDのジャケットの描き下ろしも豪華になっていきましたね。ユーザーの皆様の応援の賜物でございます。本当にありがとうございました。

(客席拍手)

石濱:「フォトカツ!」は割とやりたい放題やらせていただきましたからね。

木村:本編より縛りが少なかったですよね。

■質問コーナーはマニアックに……



――では、ここからは会場からいただいた質問にお答えするコーナーに入ります。(黒田さんが事前に集まった質問の中から選び司会者に渡す方式)

まず「持ち歌ではない曲を、あのキャラに歌ってもらいたい、という組み合わせはありますか? 例えば「Tristar(トライスター)に『ダイヤモンドハッピー』を歌わせたい」とか。

木村:おお、これは難しいですね。歌い手が変わると曲の印象は変わりますけど、たぶん、どの組み合わせでも「これはこれでありだな」みたいな感じになると思いますけどね。「アイカツ!」はもともといろいろバージョンを試している作品でもありますし。あかりがユリカ様の歌を歌ったことがあって……いかん、ちょっとタイトルがパッと出てこない……。

客席:「永遠の灯」!

木村:それ! さすが、みなさんのほうがよく知っている(笑)。あのときは衣装とかも含めて面白かったですし、そういうのは割といくらでもできるなという感じですかね。

――続いての質問はMONACAのみなさんにですね。「ユニット曲とソロ曲など、楽曲によって作るときに気をつけている違いはありますか?」。そもそもの話として、「アイカツ!」は今、木村監督がおっしゃったように、いろいろとバージョン違いを試しますけど、発注のときには歌うユニット、歌い手の組み合わせは決まっているのでしょうか?

木村:わりと決まっていますね。曲や使用されるステージによって、ゲームの時点で誰に歌わせるとかいうことは意外と決まっていました。

――ではその点だと、ユリカのソロ曲の「硝子ドール」のように、キャラクターを象徴させる曲を作るときに気をつけていたことはありますか?

帆足:とにかくジャンルをはっきりさせて、その路線で攻めていく感じにすることですね。「硝子ドール」ならメタル、とか。

田中:ちょっと質問から回答がズレてしまいますけど、ソロ曲ならソロ曲、複数人で歌う曲なら複数人で歌う曲という風に、最初にわかっていた方がやっぱり曲って作りやすいんです。AメロやBメロはこういう感じの人数感で歌い分けて、ここのメロディーはひとりで歌って、ここのメロディーでちょっと歌う人が変わって、次は三人で歌って……みたいに、作っているときにイメージできるんですよね。で、よくあるのが、複数人で歌っている曲のソロバージョンってあるじゃないですか?

どんな形で歌われても成り立つように頑張って作るんですけれども、複数人で歌う歌い分けを想定している分、そっちを自分たちの目指しているものの完成形にしたいと思ってしまう。そんな難しさを感じることがソロ曲では多いですね。



帆足:わかりますね。だんだんと歌う人が増えて、歌声が豪華になっていくことを前提にアレンジしているところで、声が増えない、みたいな難しさがあります。

田中:クロス、メロディーを掛け合いで歌うように作っても、ソロバージョンだと物理的に掛け合いは出来ない。同じ声でクロスさせても、できあがる世界が違うんですよね。そういうことは考えます。

――「新・チョコレート事件」みたいに、ひとりで歌っていても別キャラとして重なっていれば大丈夫ですか?

田中:あ、そうです、そうです。あれはおひとり【※STAR☆ANISのゆながひとり二役で、二声を歌い分けている】なんですけど、すごいですよね。ちゃんと別の人間に聴こえる。

――次の質問です。「OP曲とED曲では作るときに意識の違いはありましたか?」。

石濱:違いは……ないと思います。尺もおなじ89秒ですし。発注の違いくらい。

――でもOPは元気に、EDだからちょっとしっとりめ……とかもない。

石濱:そう。「アイカツ!」はそういうのあまりなかったですね。

黒田:OP一曲目の「Signalize!」から、まず全然違いましたからね。

――OPがクール曲【※「アイカツ!」のゲーム内ではファッションブランドや楽曲が「キュート」「クール」「セクシー」「ポップ」の4つの属性に分類される】ですからね。

木村:「Signalize!」がクール曲だったのはゲームの都合や他の曲との組み合わせの都合で決まったんですけど、結果的には面白かったなと思います。ぼくは割りとEDだからしっとり、というのが好きじゃないので関係なく発注していましたね。

――次の質問です。「田中さんといえばオーギュメント、オーギュメントといえば田中さんですが、作曲時には意識して使っているのでしょうか?」。これはまず、オーギュメントとは何かの説明からお願いするのがいいですね。

田中:オーギュメント……「aug(オーギュメント)コード」のことですね。そういうコード(和音)があって……たとえば、ド・ミ・ソの音で構成されるのが「C」のコードなんですけど、このソをソ♯にすると、Cのオーギュメントのコード、「Caug」になる。質問してくださった方がおっしゃったのは、僕がそうした「◯aug」のコードを曲の中でめっちゃ使うやん……という話なんです(笑)。うーん、これはどうだろうな……意識しているわけではないですが、純粋に響きが好きで、割と自分が「いいな」「美しいな」と素直に感じる音楽を作ろうとなったとき、どうしても入ってきてしまうというのが本音です。ですから、別にむやみやたらに曲の中に入れればいいと思っているわけでもないですよ。ただ、たしかに他の作曲家の方より使用率は高いかもしれないですね。

石濱:田中さんのaugコードは、ドミナント的な使い方(コード進行の中間部分で用いる)ではなくてトニック的な使い方(コード進行の始まりや終わりに用いる)を結構する……よね? そこがめずらしく聴こえるのかな?

帆足:副V【※サブファイブ、転調する際に転調後のキーのドミナントとして使う「副5度和音」のこと】にaugコードを使う進行は、よくある気がするよね。

田中:そうですよね。

黒田 ……大分専門的になってきましたね(笑)。「トニック的な使い方」というのは、ようするにコード進行の着地(終わり)でaugコードを使うということ?

田中:ああ、そうです。ドミナントとして「♭13th」のコードを使うような使い方ではない……いや、そういうのも大好きなんですけどね(笑)。前にMONACAの先輩の神前(暁)さんに「augというのは単体で力があるコードじゃなくて、経過の音だから」と言われたんですけど、僕はそうは思っていなくて、augコードはあのコードですごく色彩が豊かというか、augだけを鳴らしていても世界があると思っているんです。だからドミナントじゃないときも、使いたくなるんですよね。

――ありがとうございます。では最後の質問です。「石濱さんが DJ 活動をされたということですが、田中さんや帆足さんもやってみる予定はありますか?」。

田中:やらせてください!(即答)

帆足:え!? あるってこと?



――おお!

田中:全然あるんですけど、ただ、石濱さんの話を聞く限り、難しいだろうな〜と。なかなか一日二日でどうこうなるものではなさそうなので、僕は曲を作っている方が気持ち的にはあっているのかなと思いつつ、でも憧れというか、DJブースに立ってみたいという思いは強くあります。

帆足:自分は無理ですねえ……。

田中:そんなことないですよ!

帆足:どういう自信なの、それ!?

――あ、追加の質問です。これめちゃくちゃ大事です。「MONACAフェスの二回目はありますか?」。

(客席拍手)

田中:やりたくないわけじゃない……というか、むしろやりたい気持ちはあるんですけど、やるとはなかなか言えない。

帆足:MONACA所属の人間としてではなく、単純に個人としては「何とかなるといいよね」といつも思っているんですけどね。それが実現するまでにはどれくらいの人が動かなければいけないのか、みたいなところを考えてしまうと……。

――前回に比べて、さらに楽曲を提供されているアーティストの方も増えていますもんね。でも、行きたいですよね?

(客席拍手)

――いつかあると信じて質問コーナー終わらせいただきます。

――あっという間ですが、そろそろ終わりの時間になってしまいました。最後にひとことずつ皆様からメッセージをいただいて終わりにしたいと思います。

木村:今日は本当にありがとうございました。こうやってMONACAのお忙しい三人が集まることはなかなかなく、お話を聞ける機会もなかなかないので、僕も聞いていて楽しかったです。これからも「アイカツ!」シリーズは続いていきますので、ぜひ応援の方、よろしくお願いいたします。

黒田:今日は本当にありがとうございました。今回、サンライズ音楽出版として初めてこういったイベントを開催させていただきました。アニメーションの音楽に特化したイベントを今後もやっていきたいと思っていますので、今後ともよろしくお願いします。壇上のみなさんも、今日は本当にありがとうございました。この方々のおかげで、「アイカツ!」がスタートし、大きくなっていったと思います。

木村:ホントですね。

黒田:あらためてファンになりました。いつかMONACA フェスでもお会いしたいです!

(一同笑)

石濱:「アイカツ!」によって生まれた出会いは……これ、今日のイベントで言うのは二回目になってしまうのでちょっと笑ってしまうんですけど、出会いは「SHINING LINE*」だなと。そういうことで、締めさせてください(笑)。

帆足:最初のシリーズからもう5年ということですが、5年間ずっと応援していただいた方々がたくさんいるということですよね。始めたときには、「2年目があるかどうかわからないから、続けられたらいいよね」と話しながら、手さぐりのまま進めていた覚えがあります。それを思うと、まさか放映開始から5年後も愛されるシリーズになるとは……というおどろきの気持ちです。本当にありがたい。応援してくださったみなさんに、お礼を言いたい気持ちでいっぱいです。

田中:帆足さんがおっしゃったとおり、5年という長い期間、「アイカツ!」という作品、「アイカツ!」の音楽を愛してくださったみなさんがいたからこういうイベントが成り立つのだと思います。みなさん、来てくださって、本当にありがとうございました。「アイカツ!」愛を、一緒に作品を見つつ、音楽とともに語って、ちょっと専門的な話もして(笑)……なかなかこんな話ができる機会、イベントはないですよね。またこういう機会があったらうれしいなと思います。

――「また」!? やっても、いいんですか!?

黒田:いいんですか!?

田中:はい(笑)。すごく楽しかったです、ありがとうございました!



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02★「アイカツ!シリーズ」オーケストラコンサート「オケカツ!」開催決定!

2018年9月13日(木)19:00〜9月24日(月・祝)23:59まで

先行受付中(抽選)







日時:2019年2月10日(日)

・13:00開場/14:00開演(昼公演)

・17:00開場/18:00開演(夜公演)

※公演の模様のインターネット生配信,ライブビューイングなどはいっさい予定しておりません。

会場:昭和女子大学 人見記念講堂

演奏:東京交響楽団

指揮:水戸博之

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03★「アイカツ!」STAR☆ANISとAIKATSU☆STARS!が歌う主題歌・挿入歌(初出CD収録バージョン)全78曲&劇伴 全183曲

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(C)BNP/BANDAI, DE

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・ランティス「アイカツ!」ページ