『響 -HIBIKI-』 ©2018映画「響 -HIBIKI-」製作委員会 ©柳本光晴/小学館

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■平手友梨奈の映画初出演&初主演作『響 -HIBIKI-』。主人公・鮎喰響の生き様がシンクロ?
「自分のことを他人に好き勝手に書かれたくない」というLINEメッセージが、出版不況の文学界に突如現われた「圧倒的な才能」を持つ女子高生小説家・鮎喰響から届いたが、ひとたびステージに立ったならば、ただそこに佇んでいるだけで否が応でもその存在が際立ってしまう、言わば存在感の塊であり、もはやどうしようもないほどに人を惹きつけてしまうその求心力ゆえに、いま最も他人に好き勝手に書かれてしまう存在の1人である平手友梨奈(欅坂46)の映画初出演、初主演作『響 -HIBIKI-』(以下『響』)において、平手友梨奈は、いわゆる「新人」の「演技」にありがちな、見ていて目を逸らしてしまいたくなるようなぞわぞわとした悪寒を誘発させることなく、また「欅坂46の」平手友梨奈としての存在感を殊更に主張することもなく、一貫して鮎喰響を「生きていた」という表現が最も相応しいように映っていた。そのように映ったのは、鮎喰響が出会った人々に対して「個」として真摯に向き合ったように、平手友梨奈が鮎喰響に誠実に寄り添った結果、両者の「生き様」がスクリーンにおいて一致したからであろう。

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だから平手友梨奈は『響』の撮影前後の数か月の間、グループとしての活動を実質行なっていなかった、というよりも平手友梨奈という存在はこの世にただひとりだけであるのだから、行なうことができなかったのであり、もしかすると平手友梨奈が欅坂46に不在だった期間に放送された『平手友梨奈のGIRLS LOCKS!』(TOKYO FM)に出演していたのは、平手友梨奈によって生きられた鮎喰響が生きた平手友梨奈であったのかもしれないという夢想も捗る。

■殴る蹴るの破天荒ヒロイン・鮎喰響は、人々を「解放」する? 平手友梨奈との共通点
自身の強固な行動原理に従って真っ直ぐに生きる鮎喰響は、自らの信念と反するときには、降りかかる理不尽な事態が自身に向けられたものであるにせよ、他人に向けられたものであるにせよ、年齢、性別、地位に関わらず、多くの場合一方的に殴る蹴るといった手荒なやり方で対処する。そうした鮎喰響の振る舞いは、単なる「暴力」描写として完結することはなく、だからと言って「暴力」が帳消しになるわけではないが、鮎喰響と対峙した者たちを、彼らが囚われている何かから解放するための派手なアクションとして機能していて、彼らが解放されたことの証は鮎喰響に蹴られ殴られた者たちがやがて見せることになる「穏やかな」表情にも表われている。同時に鮎喰響も常に誰かを蹴ったり殴ったりしているわけではなく、北川景子演じる文芸誌『木蓮』の編集者・花井ふみから新人賞応募作『お伽の庭』についての感想を受けて微笑むなど「圧倒的な才能」の持ち主である鮎喰響の「普通な」側面が随所に挟まれることで、それ単独では突出してしまう「暴力」シーンとの中和がなされている。

話を戻すと、鮎喰響が対峙した人々を解放していく姿は、“アンビバレント”において平手友梨奈が動きの止まったメンバーたちに触れ回っていくことで彼女らを次々と解放していく姿と重なるが、平手友梨奈と鮎喰響は「似ている」というよりも、『響』において平手友梨奈と鮎喰響はもはや「同じ」人物であり、「同じ」であるという夢想は、『響』のエンドロールにおいて鳴り響く平手友梨奈による主題歌“角を曲がる”の情報が試写の段階では伏せられていたこともあって、その「響き」において目には見えない形で現実のものとなったかのようであった。

■「予測不可能。前代未聞。」欅坂46の全国ツアー千秋楽での平手友梨奈
『響』のチラシには「予測不可能。前代未聞。」と書かれているが、『欅坂46「夏の全国アリーナツアー2018」』の千秋楽公演での“ガラスを割れ!”において、平手友梨奈はこれまでとは異なる動きを見せた。それがあらかじめ用意されていた演出であったのか、その場の即興であったのか、鮎喰響を生きたことの結果であったのかはわからないが、イヤーモニターを振り乱し、踊り狂いながら花道を突き進む平手友梨奈の姿は、『響』のキャッチコピーに「この天才、ヤバい。」とあるように「ヤバい」何かに取り憑かれているかのようでもあり、モニター越しに見ていて戦慄した。

“ガラスを割れ!”のパフォーマンス後、ステージから2メートル転倒落下した平手友梨奈は、病院での検査の結果、軽い打撲と診断され、ダブルアンコールで頭をぺこりと下げながらステージに戻ってきたときにはこれまで目を覆っていた前髪を分けて憑き物が落ちたような表情をしていた。後に語り継がれることになるであろう「圧倒的な」何かが訪れたこの千秋楽公演は、だから手放しで絶賛することもできない「アンビバレント」なものとなった。

平手友梨奈が次にどのような平手友梨奈を生きるのか、それは誰も予測できないが、だからこそ平手友梨奈は「スリリング」で人目を惹く。
■映画『響 -HIBIKI-』とは
本日9月14日から公開される『響 -HIBIKI-』は、柳本光晴の漫画『響〜小説家になる方法〜』が原作。15歳の天才女子高生小説家・鮎喰響が、有名作家や記者、売れない小説家らに影響を与え、文学の世界に革命を起こしていく様を描く。響の才能を見出す若手編集者・花井ふみ役を北川景子、自身も小説家を志しながら響の才能との差に苦しむ文芸部の部長・祖父江凛夏役にアヤカ・ウィルソン、作家・山本春平役に小栗旬がキャスティングされている。監督は月川翔、脚本は『とと姉ちゃん』『TIGER & BUNNY』などの西田征史が手掛ける。(文:原友昭)