長年一人暮らしをしていると、「賃貸に住み続けるよりも、マンションを購入したほうがお得なのでは……」と考えることがありますよね。「これから一生独身だった場合も考ると、住み続けられる場所を確保しておいたほうが安心かも」という気持ちにもなります。一方で、マンションの購入は大きな買い物。考えれば考えるほど迷ってしまいます。絶対に損はしたくない……堅実女子(独身)の一人暮らしは、賃貸を続けるのとマンション購入、どっちがいいのでしょうか。ご自身でも26歳のときに一人暮らしのためのマンションを購入、現在は夫婦で4つの物件を保有し、賃料収入を得ているファイナンシャル・プランナーの風呂内亜矢さんに教えていただきます。

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独身女性のマンション購入は買い方を間違えなければ味方になるもの

私が最初に購入したマンションは26歳のときです。当時、岡山の実家暮らしから地元で初めての一人暮らしをしようと、建設中の賃貸アパートを契約していたんです。でも、そのマンションが3週間後に入居できるはずだったときになって建設中止になってしまって。一方的にキャンセルされてしまったんです。でも、一人暮らしをしたい気持ちは盛り上がっていますから、別の場所を探そうと思ったんですよね。そうしたら、家のポストに分譲マンション販売のちらしがはいってきて。みなさんも目にしたことがあるかもしれませんが、「あなたの家賃と比べてみませんか」というキャッチコピーのもと、頭金なし、月々のローン返済は賃貸の家賃と同額程度、という物件です。

私が借りようと思っていた賃貸アパートの家賃が6万円弱。その分譲マンションは、チラシによると月々のローン返済は同じくらいの負担額でしたし、しかも55平米と広くて、構造も軽量鉄骨のアパートよりもしっかりとした鉄筋鉄骨のマンションです。気持ちも逸っていましたし、こっちのほうが断然いい!と購入することにしました。まさに衝動買いです。周囲からは、「貯金もないのにそんな大きな買い物をしちゃって大丈夫?」「独身でマンションなんて買っちゃったら、もう結婚できなくなっちゃうね」なんて言われましたが、結果的に、買ってよかったと思っています。

確かに、その当時、貯蓄は80万円しかありませんでした。大学を卒業して勤めて3年。実家暮らしにかまけて自由に散財していたので、それしか貯められなかったんです。でも、健康で働いていれば、賃貸と同じ額くらい払えると思っていました。また、私は地元の岡山でずっと暮らす気持ちではいましたが、結婚しないつもりでマンション購入を決めたわけではありません。むしろ、「将来結婚した場合、相手が転勤が多かったりして自分のペースで働けなくなってしまっても、購入したマンションを賃貸にすれば、家賃収入として不労所得が得られるというメリットがあるんじゃないか」と考えました。

マンションを購入したからって、一生そこに住むとは限らない!

頭金ゼロのマンションでも物件以外の諸経費がかかる

とはいえ、今のようにマネーの知識があったわけではないので、戦略的に買ったわけではありません。なので、しょっぱなから壁にぶち当たりました。マンションを購入する際には、頭金ゼロの場合でも、住宅ローンの手数料や登記費用、火災保険などの「購入諸費用」がかかることを知らなかったんです。諸経費の目安は、新築マンションの場合、物件価格の3〜5%、中古マンションや戸建ての場合は物件価格の6〜13%とされています。私の場合は、70万円でした。

上にも書きましたが、そのときの私の貯蓄額は80万円。諸経費と初月のローンを払ったら、貯蓄がゼロになってしまいます。また、月々のローン返済のほかに、マンションの管理費や修繕積立金を支払わなければいけません。実質、月々に家賃として支払う金額は、ローン返済費用+管理費+修繕積立金が基本となるんです。頭金ゼロのマンション購入を狙っている人は、ローンの返済額だけでなく、管理費、修繕積立金、さらに固定資産税コミの価格を鑑みて、自分が買えるか買えないかの判断をする必要があるでしょう。私の場合、月々の支払いはなんとかなるだろうと思えたのですが、諸経費を支払って新生活を貯金ゼロで始めるのは正直厳しいな、と思いました。入居は1年後だったので、それまでに貯蓄をしようと思い立ち、1年で160万円貯めました。

マンションを購入したいけど貯蓄がないから無理、と思っているのなら、諦めないで欲しいと思います。3年で80万円しか貯められなかった私でも、目的があれば6倍速で貯められるのです。貯蓄が苦手という人の多くは、漠然と「お金を貯めたほうがいいんだろうな……」と思っている人です。何のためにいつまでにいくらお金が必要なのか、という考え方ができれば、目的意識がもて、意欲的に貯蓄できると思いますよ。

「その気になれば1年で6倍速で貯金することもできますよ」

独身アラサー、アラフォーは「人生の足枷にならない物件」を選ぶべし

頭金ゼロのマンションで、購入後の月々の支払いが現在の家賃と同額(あるいはそれ以下)なら、住み続ける期間で考えれば、金額的には損も得もありませんね。賃貸で済み続けるよりも最終的に自分のものになるマンションを買ったほうがいいと考えるなら、マンション購入をしてもいいと思います。しかし、「自分で住むしかできない」物件は考えものです。私自身も、初めてマンションを買ったとき、衝動買いとはいえ、「万が一、自分が住めなくなった場合、借りてくれる人がいるか」ということは考えました。結婚するかもしれない、転勤・転職するかもしれない。そこに住み続けられるという保証はどこにもありません。終の棲家としてマンション購入を考えると失敗しやすくなります。自分の人生がいかに変わっても足かせにならない物件を選ぶこと。それが、独身女性のマンション購入のいちばんのポイントになるでしょう。

ファイナンシャル・プランナー
風呂内亜矢
1978年生まれ。岡山出身。  2013年、ファイナンシャルプランナーとして独立。現在はテレビ、ラジオ、雑誌、新聞などで「お金に関する情報」を精力的に発信している。 著書に『その節約はキケンです-お金が貯まる人はなぜ家計簿をつけないのか-』(祥伝社)、『デキる女は「抜け目」ない』(あさ出版)、『ほったらかしでも

 なぜか貯まる!』(主婦の友社)など。
 
 

『最強で超ラクなマネー術 ほったらかしでもなぜか貯まる!』

撮影/田中麻衣(本誌) 取材・文/簗場久美子