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第1回:ベントレー・コンチネンタルGT 400kmの旅で探るスポーティとラグジュアリー
第2回:ベントレー、手仕事の驚異 ファクトリーで目の当たりにした「特別」への探求
第3回:2台の「コンチネンタル」に試乗 大きく異なるキャラ、ベントレーの歴史を語る
第4回:ベントレー、意匠のインスピレーションどこから? デザイナー語る過去と未来
第5回:コンチネンタルGTの「レシピ」 ベントレー主要部門のリーダー語る、開発背景
   ― シャシー開発部長編
   ― W12エンジン設計部長編
   ― 電気電子機器部長編
第6回:プロトタイプに試乗 ベントレー新型コンチネンタルGT 偽装の下に見えた希望

 

新しいCEOエイドリアン・ホールマークがベントレーに戻ってきた。喜びとともに、明確なビジョンをAUTOCAR英国編集長スティーブ・クロプリーに語った。

AUTOCAR JAPAN sponsored by ベントレー・モーターズ・ジャパンtext:Steve Cropley(スティーブ・クロプリー)
photo:Luc Lacey(ルーク・レイシー)

もくじ

ー 「あの男」が戻ってきた
ー グループが彼を選び、彼がベントレーを選んだ
ー 生じたふたつの疑問 それに対する答えは
ー 「作るだけではなく、その先も見越しています」

「あの男」が戻ってきた

これほどまでに完璧なタイミングはないだろう。

「以前ベントレーにいた」活動的な英国人の会長兼CEOは、ベントレーのアイコン、コンチネンタルGTの新モデルが発売されるまさにそのタイミングでベントレーに戻ってきた。2003年のデビュー以来、ベントレーの成功を支えてきたクルマだ。

2018年のジュネーブモーターショーで、新会長と新モデルは並んで初めて姿を現した。

ウッドとレザーを使った軽やかなポストモダンデザインの豪華なベントレーの貴賓ブースで、着任してまだ2週間のホールマークに面会した。

すでにラグジュアリーカーのビジネスで豊富な経験を積んできた55歳の英国人は、ことが計画通り進めば次の10年はすでに築き上げてきたキャリアに華を添えるものになるということをよく知っていた。

自動車メーカーの社長が、着任早々インタビューに応じるのは滅多にないこと。ふつうは新しい米国大統領のように最初の100日間はしゃべらないものだ。しかしホールマークは違う。

ベントレーでの彼の以前の仕事は、ベントレーからクルマを買うような特別なひとたちのニーズをしっかり調べることだった。フォルクスワーゲン・グループのブランド復活に深く携わっていた彼は、2003年の初代コンチネンタルGTの発売にも関係していた。

2005年にグループを離れた後も(2010年にはジャガー・ランドローバーに在籍している)、ホールマークはプレミアムモデルのブランド開発に関わり続け、ラグジュアリーカー市場の成功をしっかり観察してきた。彼に言わせると、この分野でベントレーは依然として特別な存在なのだ。

グループが彼を選び、彼がベントレーを選んだ

フォルクスワーゲンのお偉方との最初の会合について彼はこういう。

「別れた家族のもとに戻るような感じでした」

「グループとは仲良くやれると感じていたのですが、どうしてもビジネスが未完成という感じがしました。わたしで大丈夫なのか不安だったので、急いで昔一緒に働いたことのあるひとたちと会いました。そして大丈夫、うまくいくと確信したんです。とても感動しましたよ」

ホールマークはお偉方との付き合い方も上手だが、必要なときには率直にものを言う。彼は新しい上層部と会い、「何がうまくいって、何が改善を要するのか。これから業務を進めていくにあたってわたしに何を期待しているのか」ということを詳細に話し合った。

グループが彼を選んだのは、フォルクスワーゲン・グループで21年間働いた経験がものを言っていると彼は信じている。英国ポルシェのヘッドを皮切りに、ベントレーで6年働き、米国やアジアで上級職についた。そのすべてで大成功を収めたのだ。

ホールマークは「ブランドへの愛」こそが彼が持ち込んだ最大の強みだと信じている。

「今までずっと商品戦略やブランドのポジショニングの仕事をしてきました」と彼は言う。「自分のことを典型的なベントレーの顧客だとは思っていませんが、わたしは彼らを理解しています。成功とはブランドを通して顧客とつながることです。わたしはそのプロセスが好きなんです」

ここでふたつの重大な疑問が生ずる。

ジャガー・ランドローバーのグループ戦略部長という敵対する視点からベントレーを間近に眺めてどう思ったのか? そして今後ベントレーをどのように変えていこうと考えているのか?

生じたふたつの疑問 それに対する答えは

「ベントレーは不況後のあらしの時代を耐え抜いたと思います。ベンテイガが大きな突破口でしたね」と彼は言う。「以前ベントレーにいたときもSUVを検討しました。当時は『可能性』レベルの話だったのですが、最上級のグランドツアラーメーカーであるというブランドイメージが確立したので、今、実現したというわけです。」

しかしホールマークは、ベントレーの総販売台数の回復が思わしくないことにも気づいていた。

「年間1万台から1万1000台のクルマを製造するのがわれわれのビジネスとしては理想です。何しろクルマの希少性を保てますからね」と彼は説明する。

「でも流動性資産100万ポンド(1億4400万円)以上を持つ富裕層の数は、初代のコンチネンタルGTがデビューした当時の600万人から、今では1600万人ほどに拡大しているんです」

「ベントレーは現代の流行を作り上げました」と彼は言う。「しかしまだやり切ってはいませんね。もちろん手強いライバルもいます。でも、われわれがせっかくのポジションを維持できなかったことは誰の目にも明らかでしょう」

まずやるべきことは、新たにアナウンスされたベンテイガV8、V6ハイブリッドの発売など、派生モデルの数を増やすことだが、ホールマークと彼のチームは新たなモデルの検討も行っている。

もうひとつやるべきことは、ベントレーと同じようなマインドを持ったプレミアムブランドのコミュニティを構築することだ。時計ブランドのブライトリングと組んだように。

「世界には同じような上質の経験や製品を高く評価するとても洞察力のあるしっかりしたグループがあります」と彼は言う。「もし同じようなマインドを持った分野の重複しないブランドが5、6ほど集まったコミュニティに入れれば、アピールしたい資産家の80%に手が届くのです」

ホールマークの指摘でひとつ驚いたことがある。

「作るだけではなく、その先も見越しています」

ホールマークの指摘で驚いたのは、ベントレーの潜在的顧客数の増え方は、中国より米国の方が速いということだ。大きな違いは年齢である。

「中国の顧客はみな30代か40代です」と彼は説明する。「いっぽう米国は60代や70代も増えています」。世界的には各世代に支持される強靭なブランドであるといえよう。

「買えなくはないけれど、だれでも買えるわけではない。高価だけれど払った以上の満足感がある。スポーツとラグジュアリーをひとつのブランドでカバーできる。他のメーカーではふたつ必要ですが。柔軟だけれどもポジションは明確なのです」

ホールマークが新しい仕事に全力で取り組んでいることは誰の目にも明らかだ。

「ここ数年でも電動化、工業化、全モデルのCO2削減への取り組みなど様々ですが、すべてが今やりたいことのほぼ完ぺきな予行演習になっています」

他の自動車メーカーと同じく、ベントレーにも変化の波が押し寄せているとホールマークは言う。

「会社は成長していますが、だからといって、このままにしておくつもりもありません。関税や英国のEU離脱の問題があるし、モビリティサービスの時代もやってきます。昔と比べてチャンスとリスクは何倍にもなっているんです。グッドニュースは顧客が増えていることです。ですから柔軟に対応すればチャンスは増えると思います」

「これからわたしのやることは、すべてベントレーのためです。潜在能力はとても大きい。クルマを作るだけではなく、その先も見越しています」

「価値の高い仕事を作り出してそれを永続させること。英国が技術革新の先頭を走り続けることができるようお手伝いしたい。わたしのミッションは今あるものを維持しつつ、できることならさらにもっと大きくすることです」

(第8回は9月28日に公開予定)