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日本マイクロソフトは2018年9月12日、ソーシャルAIチャットボット「りんな」を活用した地方応援プロジェクト、「萌えよ♡ローカル〜りんなと地方とみんなの未来〜」の開始を発表した。

「AI(人工知能)を社会に役立てる方法としてプロジェクトを開始した。今回の取り組みはファーストステップであり、次のステップは『地方応援』から『地方支援』へ拡張する」(日本マイクロソフト 執行役員 最高技術責任者 兼 マイクロソフト ディベロップメント 代表取締役 社長 榊原彰氏)と、取り組みの意義を語る。

1991年に設立したMicrosoft Researchの研究分野は多岐にわたるが、当初から取り組んでいるのがAIである。その成果として、2016年にはRESNETビジョンテストで画像認識率96%を実現。2017年8月には、英語の文章を聞いて単語の聞き間違い率を測るSwitchboard音声認識テストにおいて、誤認識率5.1%を達成した(2016年10月時点は5.9%)。

また、今年の2018年1月には、SQuAD読解力テストで88.5%の認識率。2018年3月は、MT Research Systemによる英中のリアルタイム翻訳精度で69.9%を実現した。ほぼ人間と同等、もしくは同等以上の精度にいたった。そのMicrosoft AIについて、日本マイクロソフトの榊原氏は「我々は人の能力を補完・拡張するためにAIを活用する」と述べる。

Microsoftは自社のAIポートフォリオとして、「エージェント」「アプリケーション」「サービス」「プラットフォーム」の4分野に各製品やサービスを分類しており、肝心のりんなはCortanaと並んでエージェントに分類される。

日本マイクロソフトによると、2018年9月12日現在で、LINE、Instagram、Twitterを経由した“りんなのお友達”は、約700万人に達した。内訳は、男性が6割、女性が4割。中心の年齢層(62.6%)は18〜24歳の若者だという。

日本マイクロソフトは、「りんなはエモーショナル(感情的)AIがコンセプト。人が話していることを、あたかも理解しているようにコミュニケーションを行う『壮大な実験』プロジェクト」(榊原氏)としつつ、4つの開発方針を示した。AIの未来を形作る「AI Future」や、創造性をAIに持たせる「AI Creation」(最近ではりんなが歌ったことでも知られる)、独自キャラの付与や会話モデルを構築してビジネスに活用する「Rinna Character Platform」を展開する「AI for Business」、そして今回の地方応援プロジェクト「AI for Good」である。

具体的には、以下に紹介する3つのメニューをりんなの新機能として実装し、自治体は潜在的な移住希望者への訴求や、観光客数・滞在時間の増加を図る。りんなユーザーは楽しみながら新しい体験と知識を取得し、日本マイクロソフトはAIを活用した地方応援への挑戦、りんなの認知度向上を目指す。

日本マイクロソフトは、「大きな挑戦に開発陣もやりがいを感じている」(マイクロソフト ディベロップメント A.I.&リサーチ A.I.サイエンティスト 中吉寛氏)と語る。プロジェクト名に含む「萌えよ」について、「(単語には)草木が芽吹くという意味を込めた」(中吉氏)とも。

宮崎県が参加する「りんなの社会科見学」は、クイズ形式で宮崎県内の各市町村の案内や、特産物、伝統文化を学ぶ機能だ。クイズでポイントを獲得すると、抽選で宮崎県産キャビアセットがプレゼントされる。

今後の実装計画としては、りんなとの会話を解析して、潜在的な移住希望者に本ゲームをレコメンドする機能追加を予定しているという。宮崎県の担当者は「本コンテンツを通じて宮崎県の暮らしやすさや、移住支援施策をお伝えし、魅力を発信したい」(宮崎県 総合政策部 中山間・地域政策課 移住・定着推進担当 伊達翔馬氏)と述べた。

千葉県香取市が参加する「めぐりんな〜不思議な観光旅行〜」は、同市を舞台にしたノベルゲームとして、観光スポットの訪問や地元の偉人と会話を楽しむ。今後の実装計画は、りんなの「共感モデル」に類似したシステムを開発し、登場人物のせりふをAIで自動生成する予定だ。

同市担当者は「私事だが、孫がりんなと同じ名前で親しみを持っている。香取市には江戸時代の街並みが残っており、東南アジアの観光客も多いが、市の認知度は低い。若い観光客への訴求と(プロジェクトを通じた)地方活性化に期待したい」(一般社団法人 水郷佐原観光協会 会長 大川裕志氏)と語った。

福岡県北九州市、群馬県、佐賀県佐賀市、あまみ大島観光物産連盟が参加する「りんなの奇天烈(きてれつ)観光マップ」は、地域に埋もれた観光資源を掘り起こすユーザー参加型地図サービス。現時点では閲覧のみだが、10月以降のアップデートでユーザー投稿機能をサポートする。実装計画は「各ユーザーが持つ行動やプロフィールを元にレコメンドするエンジンを開発し、取得した行動データから投稿情報をつなぎ合わせるロングテール手法の追加」(中吉氏)を予定している。

複数の参加自治体/団体を代表した群馬県 産業経済部環境局観光物産課 課長 佐藤武夫氏は、「(群馬県の)都道府県魅力度ランキングは40台。一時期は最下位になったこともある。例えば温泉マーク発祥の地など、普段は目にしない観光スポットを通じて、群馬県の新しい魅力を発掘していただきたい」と語る。

また、佐賀県 経済部観光振興課 観光・コンベション推進室 室長 王丸直之氏も、「都市の暮らしやすさランキングで佐賀市は1位になったが、魅力が(他県の人々)伝わっていない。観光客の価値観が多様化し、自治体側の発信には限界を感じる。本プロジェクトを通じて新たな魅力を発信しつつ、(佐賀市に)訪れてもらえる流れを作りたい」と述べた。

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単なるチャットボットから始まったりんなだが、多様なコミュニケーションを実現するための簡易ゲームを実装し、AIエンジンや会話モデルの精度向上で高いコミュニティ力を身に付けてきた。昨今では楽曲を歌い、近々朗読も可能にするという。

今度は地方応援プロジェクトと、りんなは単なるコミュニティキャラクターからビジネス、地方創生と活躍の場を広げてきた。将来、仮想のAIパートナーが我々に寄り添う日もくるだろうか。

阿久津良和(Cactus)