カルロス・ラモス主審【写真:Getty Images】

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毅然判定でブーイング受けたラモス主審が母国紙に告白「私のことは心配しないで」

 テニスの全米オープン女子シングルス決勝は大坂なおみ(日清食品)がセリーナ・ウィリアムズ(米国)を下し、グランドスラム初優勝を達成したが、波紋を呼んだのは警告を受けたセリーナのカルロス・ラモス主審に対する暴言。「あなた、謝りなさいよ」などの発言がマイクに拾われ、会場中からブーイングが起きる事態となった。観客から厳しい目に晒されることになったラモス主審だが、「私のことは心配しないで」と渦中の心境を吐露している。母国ポルトガル紙が伝えている。

 晴れのグランドスラム決勝は前代未聞の大荒れの展開となった。発端は第2セットだ。第1セットを落としたセリーナはコーチのパトリック・ムラトグルー氏からハンドシグナルでコーチングを受けたとされ、警告を受けて逆上。ラモス主審のもとに歩み寄り、「私は勝つためにインチキはしない。負けた方がいい」と激昂した。

 さらに「あなた、謝りなさいよ。謝りなさいよ。私は一度もインチキをしたことがない。娘もいるのよ。あなたは謝罪の必要がある」と過激な暴言を吐き、その後もラケット破壊、「盗人」呼ばわりの暴言と3つの違反により、1ゲーム没収のペナルティを言い渡された。しかし、これがセリーナファンが埋め尽くした観衆の反発を買い、ブーイングが吹き荒れる展開となった。

 セリーナのやり玉に挙げられる形になったポルトガル人審判だが、試合を振り返って毅然とした態度を貫いている。母国紙「トリビューナ・エクスプレッソ」電子版は「カルロス・ラモス、セレナ・ウィリアムズが台風の目にした審判」と見出しを打って特集を組み、ラモス主審のコメントを伝えている。

「難しい状況ではあるが『アラカルト』な判定は存在しない」

 本人は「状況を考えれば、大丈夫だ。難しい状況ではあるが『アラカルト』な判定は存在しない」ときっぱりと断言。個別に変わる判定などなく、一貫した基準で裁いていると強調した上で「私のことは心配しないで」と話しているという。

 この記事を執筆したジャーナリストのミゲル・セアブラ氏は「私は本当に心配したし、この状況にはショックを受けた」と記した上で「彼は最も経験と信頼されている審判員の一人であり、47歳にしてグランドスラムの決勝の審判を任されたことは偶然ではない」とラモス主審が有能な審判であると言及している。

 判定を巡っては海外メディアも「この試合で間違っていたのはウィリアムズだ。ラモスの決定は性差別や人種差別と関係ない。全ては明確なグランドスラムの規律違反だ。そして、恐れや贔屓をせずに、コールを言い渡した勇気だ」と支持する声も上がっていたが、本人にとっても自信を持って下した判定だったようだ。(THE ANSWER編集部)