9月8日、青山学院大で講演する小泉進次郎氏。総裁選での石破茂・元地方創生大臣への支持表明が出るのではないかと、多数の報道関係者が駆けつけた

写真拡大

◆「人と違っていていいのだ」というスローガンに共鳴

 安倍首相と自民党総裁選で一騎打ちをする石破茂・元地方創生大臣を小泉進次郎氏が支持表明するのではないかと注目された講演会(「日本財団ソーシャルイノベーションフォーラム2018」)が9月8日、青山学院大学で行われた。

『週刊文春』9月6日号が「進次郎9・8決起計画」と銘打って支持表明の可能性を示唆したことから、会場に駆けつけた数十人もの報道関係者が一言一句に耳を傾けたが、総裁選に関連した直接的な発言は全くなかった。

 だが、間接的な「石破氏支援」と思える意味深な発言はいくつもあった。一つは、講演の本題に入る前に青山学院大学の新しいスローガンである「Be the defference」に共鳴し、そのバッジをさっそくつけていると切り出した。

「『違っていい』『違いがある』『人と違っていいのだ』と(いう意味)。日本はどちらかというと、人と違うことを恐れますが、違っていい。この思いに共鳴、こういう形で(胸にバッジをつけて)使わせていただきました」

 8割以上の自民党国会議員が安倍首相支持へと群がっていく中で、少数派でも違った政策を掲げて総裁選出馬を決めた石破氏を称え、エールを送っているようにも思える発言だ。

◆アベノミクスとは対極の「里山資本主義」による成功事例を紹介

 続いてスライドを映し出しながらの説明に入ったが、まず取り上げたのが石破氏の目玉政策である「地方創生」。その成功事例として「ないものはない」宣言をした島根県隠岐諸島の海士町を紹介した。

 松江市の沖合60kmにある交通不便な離島で、学校を核にした地域振興に取り組み「ソーシャルイノベーター最優秀賞」を受賞した岩本悠氏(学校魅力化プラットフォーム共同代表)と当時の山内道雄町長の写真を大写しにして、次のように説明した。

「『ないものはない』は逆転の発想。『都会にあるものはないが、都会にないものがある』ということです」

 海士町では地域の魅力や潜在力を活かした取り組みが成功、観光客は増加し、移住者も増えて人口増加に転じた。日本が抱える「人口減少問題」に対し、アベノミクスとは無関係な手法で”解答”を出していたともいえる。

『デフレの正体』『里山資本主義』の著者で、“安倍首相に最も嫌われるエコノミスト”として知られる藻谷浩介氏も、人口増加に転じた海士町にいち早く注目する一方、異次元緩和による円安株高誘導のアベノミクスについて「大企業や富裕層を儲けさせるだけで、国民の大多数には弊害が多い。国を滅ぼしかねない経済政策だ」と厳しく批判している。

 その藻谷氏の本を「熟読している」という石破氏も、地方創生のモデルケースである海士町を紹介した小泉進次郎氏も、中央主導型のアベノミクスから地域の潜在力を活かす「里山資本主義」への転換を目指しているようにも見える。

◆「考え直さないといけない」のは、安倍政権の原発推進政策!?

 安倍首相への批判ともとれる発言は、他にもあった。続いて進次郎氏は、東日本大震災が起きた「2011年3月11日」の文字を前方スクリーンに映し出し、「(この日を境に)世の中が大きく変わった。そして『これでいいのだろうか。考え直さないといけないことがあるのではないか』という思いがさまざまなセクターに広がったのが、この日です」と強調した。

「原発ゼロ社会実現」を訴えて全国講演行脚を続ける父親の小泉純一郎・元首相の主張とかぶる発言だ。純一郎氏は、「福島原発事故を機に勉強し直すと、原発推進論者が言っていたことがすべて嘘だということが分かった」と決まり文句のように説明している。

 それと同時に純一郎氏は「総理大臣が決断すれば、すぐに原発ゼロを実現できるのにやろうとしない」とも指摘、原発再稼動に邁進する安倍首相への疑問も呈している。

 この父親の発言を念頭に置きながら、息子の進次郎氏も、未だに3.11以前と変わらない思考の安倍首相を批判したようにも見える。

「進次郎9・8決起計画」と呼ぶにふさわしいストレートな発言はなかったものの、小泉親子を長年取材している筆者の経験からすると、「9月8日の小泉進次郎氏の講演は、実質的な『石破氏支持表明』に限りなく近い」という印象を受けるのだ。

 ただ、進次郎氏は今までも反主流派をポーズとして取りながら結局最後は何も行動してこなかった。これもまた進次郎氏の「党内野党風味のパフォーマンス」に過ぎないのか、あるいは「観測気球」なのか、はたまた最後に石破氏を支持するのか。今後の動向が注目される。

<取材・文・撮影/横田一>
ジャーナリスト。小泉純一郎元首相の「原発ゼロ」に関する発言をまとめた『黙って寝てはいられない』(小泉純一郎/談、吉原毅/編)に編集協力。その他『検証・小池都政』(緑風出版)など著書多数