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「モーニング娘。」の元メンバーで、タレントの吉澤ひとみさんが9月6日、酒に酔った状態で自転車の女性をひき逃げしたとして、過失運転致傷、酒気帯び運転、ひき逃げなどの疑いで警視庁に逮捕された。FNNなどが報じている。

報道によると、吉澤さんは9月6日朝、東京都中野区の路上で、酒に酔った状態で乗用車を運転。自転車に乗った女性に衝突して、そのまま逃走した疑いが持たれている。女性は転倒して、近くを歩いていた男性にぶつかった。2人は軽傷を負っているという。

吉澤さんは、「モー娘。」の在籍後半、リーダーとして後輩たちに慕われていた。ネット上でもショックを受けたファンたちの声が上がっている。アイドル評論家のロベルト麻生氏は「健康的でクリーンな印象が強かっただけに衝撃は大きい」と話している。

吉澤さんは、事故から約15分後に『自転車をひいた』と110番通報したうえで、現場に戻っていたようだ。現在の報道を前提として、吉澤さんは今後どうなるのだろうか。河西邦剛弁護士に聞いた。

●逮捕だけでなく「勾留」になる可能性も

「飲酒した状態で自動車を運転して、人身事故を起こしたのにもかかわらず、その場から逃走したという場合、人身事故について(1)過失運転致傷罪(7年以下の懲役)、飲酒について(2)道路交通法上の酒気帯び運転(3年以下の懲役)、逃走について(3)道路交通法上の救護義務違反(10年以下の懲役)と(4)道路交通法上の報告義務違反(3カ月以下の懲役)に該当することになります(罰金刑については省略)。

なお、一度現場から離れた後に『110番通報』しているという場合でも、情状には影響しますが、救護義務違反が否定されることにはなりません。

これらの罪に該当してくると、72時間の逮捕だけでなく、その後20日間の勾留(身体拘束)につづくことも十分考えられます。勾留されず、釈放されるためには、逃亡が疑われないことが必要なのですが、一部報道にあるように、一度事故現場から逃走しているとすれば、この事実が勾留の判断に影響する可能性はありうるでしょう。

なお、タレントなど著名人の場合、逃亡のおそれが少ないとして、勾留されない方向に若干傾く傾向にあるといえます」

●通常は「起訴」されて正式裁判となる

吉澤さんは2017年9月も、都内で乗用車を運転中、ワゴン車と追突事故を起こしたと報道されていた。こちらの事故については、最終的に罰金処分になったのか、不起訴処分になったのか、わかっていない。

「たとえば、1年前の事件の供述証書において『もう二度と運転はしません』『これから運転する際には細心の注意を払います』という反省が述べられていた場合、今回これに違反したということで情状に影響することはありえます。特に、約1年間という比較的短期間に再度事故を起こしていることは、重く評価される可能性があります」

どのようなことが量刑に影響するのだろうか。

「量刑に影響するのは、(a)傷害の程度、(b)被害弁済や謝罪等がなされ示談ができているか、(c)常習性の有無となります。飲酒ひき逃げとなると、通常は起訴され、正式裁判となります。前科なく傷害の程度が重篤でない場合には、懲役1年〜1年6カ月、執行猶予3〜4年くらいの執行猶予付き判決が考えられます。

なお、近年法改正があり、飲酒により『正常な運転に支障が生じるおそれがある状態』であることを認識しながら運転した場合にも、危険運転致傷罪が適用されます。その場合には、12年以下の懲役と定められています。

現在の報道では、過失運転致傷罪で逮捕されているようですが、危険運転致傷罪で起訴された場合にはより重い量刑となりことが考えられます」

(弁護士ドットコムニュース)

【取材協力弁護士】
河西 邦剛(かさい・くにたか)弁護士
「レイ法律事務所」、芸能・エンターテイメント分野の統括パートナー。多数の芸能トラブル案件を扱うとともに著作権、商標権等の知的財産分野に詳しい。日本エンターテイナーライツ協会(ERA)共同代表理事。アイドルファンで、今まで参加したコンサートは300公演以上。
事務所名:レイ法律事務所
事務所URL:http://rei-law.com/